1.財政制度等審議会財政制度分科会は4月28日、障害福祉分野の総費用の伸びを議論した。
2.資料では、障害福祉サービス等の総費用額が直近10年間で約2倍、障害児支援費が10年で約4倍に増えたと示された。
3.財政規律だけでなく、必要な支援、サービスの質、利用者の権利をどう両立するかが論点となる。

財政制度等審議会財政制度分科会は4月28日、「持続可能な社会保障制度の構築」を議題に、医療、介護、障害福祉などの社会保障費を議論した。財務省が5月11日に公表した議事要旨では、障害福祉分野について「総費用の伸び率が年間10%を超えている現状を重く受け止め、医療・介護等ともあわせて総合的に見直しを図る必要」があるとの意見が示された。
提出資料によると、障害福祉サービス等の総費用額は、利用者数と1人当たり利用額の増加により、直近10年間で約2倍に増えた。2024年度の総費用は4.2兆円で、内訳は国庫負担2.1兆円、地方負担2.1兆円、利用者負担0.03兆円とされる。障害福祉サービス等報酬の内訳では、生活介護、グループホーム、就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援の割合が大きい。
財務省資料が特に問題視したのが、障害児支援の費用増である。児童発達支援や放課後等デイサービスなどの通所系サービスでは、総費用が2015年度の2,281億円から2024年度の9,261億円へ、10年で約4倍に増えた。事業所数も増え、営利法人が設置する事業所の割合が高まっている。2024年度の収支差率は、児童発達支援で7.8%、放課後等デイサービスで9.1%とされ、中小企業の3.8%を上回る水準として示された。
資料は、サービスの質を確保するための論点として、自治体の権限強化、指定基準の見直し、総量規制、就労継続支援B型の報酬体系、不正請求への対応、不適切な事業参入の抑制を挙げた。グループホームについては、代表者や管理者の資格・実務経験要件が緩いこと、サービス管理責任者の常勤要件がないことなどを示し、令和9年度障害福祉サービス等報酬改定で指定基準として定めるべきだとしている。
就労支援では、就労継続支援B型の利用者の多くに障害支援区分がなく、就労アセスメントも実施されていない状況を指摘した。資料は、公費による就労支援の生産活動として適さないものや、就労支援の実態がないものが含まれている可能性にも触れ、令和9年度改定に向けて、利用者の平均利用時間を勘案するなど、サービスの質をより細かく評価する報酬体系への見直しを検討すべきだとした。
人権上の論点は、費用抑制の議論を、単なる給付削減の議論にしてはならない点にある。障害福祉サービスは、障害のある人が地域で暮らし、働き、学び、社会参加するための基盤である。質の低い事業者や不正請求を排除することは、財政規律だけでなく、利用者の安全と尊厳を守る対応でもある。他方で、総量規制や指定基準の厳格化が、地域に必要なグループホーム、通所支援、就労支援へのアクセスを狭めれば、当事者と家族の生活に直接影響する。
財政制度分科会の今回の指摘は、令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた制度見直しの前段となる。厚生労働省、自治体、障害福祉サービス事業者は、財務省資料が示した4.2兆円、障害児支援0.9兆円、虐待件数1,267件、不正請求による大阪市の約111億円返還請求といった数字を、費用抑制だけでなく、支援の質と利用者保護を検証する材料として扱う必要がある。
財務省「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」
URL:https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20260428/01.pdf
出典 財務省「財政制度分科会(令和8年4月28日開催)議事要旨」
URL:https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/outline/20260511114433.html

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