ハンセン病問題の偏見・差別解消へ熊本でシンポジウム開催

法務省などは、令和7年度「みんなで学ぶ、未来を変える ハンセン病問題人権シンポジウム」を熊本県で開催した。ハンセン病をめぐっては、かつて国が進めた強制隔離政策により、患者・元患者だけでなく、その家族に対する偏見や差別も長く続いてきた。シンポジウムは、こうした問題を過去の出来事としてではなく、現在の社会に残る人権課題として捉え直し、正しい知識と理解を広げることを目的としている。

内容は、ハンセン病問題の解説と当事者・関係者による証言、さらに中学生が参加するロールプレイワークショップで構成された。登壇者には、菊池恵楓園入所者自治会の太田明さん、ハンセン病違憲国家賠償請求訴訟全国原告団協議会の竪山勲さん、ハンセン病家族訴訟原告団の黄光男さんらが名を連ねた。ロールプレイでは、架空の感染症が発生した場合を想定し、学校生活などで起こり得る偏見や差別について、生徒が具体的な場面に即して考えた。

ハンセン病問題は、医療の問題であると同時に、国の政策、地域社会のまなざし、家族関係、教育機会、就労、結婚などが複雑に絡み合う人権問題である。1996年の「らい予防法」廃止、2001年の熊本地裁判決、2019年の家族訴訟判決を経ても、回復者や家族が病歴や家族関係を明かすことに不安を抱く状況は残っている。制度上の救済が進んでも、社会の側にある差別意識や誤解が解消されなければ、地域生活の安心にはつながらない。

今回のシンポジウムで中学生が参加した意義は大きい。ハンセン病問題は、歴史を学ぶ教材であると同時に、感染症、障害、病歴、家族への偏見がどのように広がるのかを考える入口でもある。新型コロナウイルス感染症の流行時にも、感染者や医療従事者、その家族に対する中傷や排除が問題となった。未知の病気への不安が、事実に基づかない差別へ転化する構造を学ぶことは、学校教育や地域研修において重要な意味を持つ。

人権の観点から問われるのは、単に「差別してはいけない」と呼びかけることではなく、なぜ差別が生まれ、誰が傷つき、どのような支援や救済が必要なのかを具体的に考えることである。行政、教育機関、医療・福祉関係者、地域住民が、当事者の声を起点に学びを継続することが、偏見の再生産を防ぐ基盤となる。アーカイブ配信などを通じて、学校や職場、自治体研修で活用されることが期待される。

出典

法務省 人権擁護局
URL:https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00204.html

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