ハンセン病関西退所者原告団いちょうの会はこのほど、大阪府知事の吉村洋文氏あてに、ハンセン病回復者と家族への支援充実を求める要望書を提出した。大阪府は5月19日14時から15時30分まで、府庁本館5階正庁の間で同会との団体応接を実施する。一般の傍聴はできない。
要望書は、ハンセン病問題の解決の促進に関する法律第5条に基づく地方公共団体の責務を踏まえ、大阪府が現在実施している施策と2026年度予算を明らかにするよう求めている。あわせて、大阪府健康医療部、府民文化部人権局、教育庁が連携し、ハンセン病回復者と家族、国賠訴訟弁護団、有識者、ハンセン病回復者支援センターを含む「ハンセン病対策協議会(仮称)」を設置するよう要望した。
要望の柱は、福祉、医療、介護、住まい、教育啓発、歴史資料の保存に及ぶ。高齢・障がい・人権・保健・医療などの部局担当者に対する研修、市町村職員への研修実施の働きかけ、ハンセン病回復者支援センターの相談支援体制の充実、家族補償金や優生保護法補償金制度の周知、必要書類取得の費用免除などを求めている。国が実施した2024年3月、2025年3月の「ハンセン病問題に係る住民意識調査」について、大阪府としての評価と新たな施策も問う内容となっている。
社会復帰・社会内生活支援では、療養所入所者の平均年齢が88歳を超え、重度の障害や介護度の増加があるとして、里帰り支援や親族とのつながり支援の拡充を求めた。2025年11月に101歳で退所した人が群馬県の療養所訪問を望んでいる事例も示し、看護師同行を含む移動支援の必要性を訴えている。強制隔離によって故郷との縁を断たれた退所者が故郷に帰ることも、「里帰り」事業として認めるよう求めた点は、要望書の中心的な論点の一つである。
名誉回復をめぐっては、知事がハンセン病療養所を訪問して入所者と面談し、納骨堂で謝罪と哀悼の意を示すこと、外島保養院跡地での追悼式典や「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」の式典に出席することを求めた。外島保養院跡地の慰霊碑設置場所には、二府十県で運営していた施設の経緯を踏まえ、大阪府が主管となって説明、謝罪、追悼の意を示すプレートを設置するよう要望している。
教育啓発では、大阪府の啓発冊子『ハンセン病問題を理解するために』の改訂、学校教育と社会教育におけるハンセン病問題学習の計画提示、中学校に配布されている「ハンセン病の向こう側」の活用状況調査を求めた。2025年6月に23年ぶりに改定された「人権教育・啓発に関する基本計画(第二次)」で「ハンセン病患者・元患者及びその家族」が独立項目として整理されたことにも触れ、府教育庁の対応を問うている。
地域生活支援では、大阪急性期・総合医療センターにおけるハンセン病回復者専門外来の継続、府内医療機関や大阪府医師会、大阪府病院協会、大阪府保険医協会への研修実施、健康保険給付後の自己負担分助成を求めている。介護分野では、末梢神経麻痺による生活上の困難、外傷や火傷予防、足底穿孔症治療、訪問看護やフットケアの導入が要介護認定や主治医意見書に反映されるよう、府として国に要望することも掲げた。
住まいについては、ハンセン病家族への公営住宅優先入居を回復者と同様に実施すること、賃貸住宅に住む回復者と家族への住宅費助成を求めている。ハンセン病問題は、過去の隔離政策の検証にとどまらず、療養所入所者、退所者、家族が高齢化する中で、医療、介護、住まい、家族関係、地域生活をどのように支えるかという現在の行政課題でもある。大阪府の団体応接では、いちょうの会が示した要望書をもとに、府の施策と2026年度予算、庁内部局間の連携体制が問われる。
