1.アムネスティ日本は5月27日、再審制度見直しの刑事訴訟法改正案について、法務大臣宛てに公開書簡を出した。
2.同団体は、捜査機関が保有する証拠の全面開示と、再審開始決定に対する検察官抗告の全面禁止を求めている。
3.袴田事件を踏まえ、えん罪被害者救済と死刑えん罪の防止を人権上の課題として位置付けた。

アムネスティ・インターナショナル日本は5月27日、平口洋法務大臣宛てに、再審制度見直しのための刑事訴訟法改正案について公開書簡を出した。政府は5月15日、同改正案を閣議決定し、今国会での成立を目指している。アムネスティ日本は、改正案について、えん罪被害者の救済という再審制度の本来の目的に照らして不十分だとし、国際人権基準に合致した「真の再審法改正」を求めた。
同団体が要請した柱は二つある。第一は、警察や検察庁など捜査機関が保有する証拠の全面開示を、自由権規約第14条3項に沿って法制化すること。第二は、裁判所が再審開始を決定した場合に、検察官による抗告を全面的に禁止することである。再審請求では、有罪判決を支えた証拠だけでなく、無罪方向に働く証拠へのアクセスが被告人側に保障されるかが、手続の公平性を左右する。
再審法改正をめぐっては、再審開始決定に対する検察官の不服申立てをどこまで認めるかが大きな論点となっている。自民党の説明によれば、政府・与党内の議論では、現行法で検察官の不服申立てを認める規定を削除しつつ、「再審開始決定が取り消されるべき十分な根拠がある場合」に限って高裁・最高裁への不服申立てを可能とする例外規定を設ける方向が示されている。これに対し、アムネスティ日本は、例外を残すのではなく、全面禁止を求める立場を取った。
公開書簡は、袴田巖さんの事件にも触れている。袴田さんは1980年に死刑が確定した後、無実を訴え続け、2024年10月に再審で無罪が確定した。逮捕から無罪確定まで58年、そのうち44年間は死刑確定者として置かれた。アムネスティ日本は、死刑えん罪が、個人の自由だけでなく生命そのものを国家刑罰によって奪い得る点で、刑事司法の中でも深刻な人権侵害を生むと訴えている。
人権上の論点は、再審を「例外的な救済手段」として狭く扱うのか、それとも有罪判決後に誤判を正すための実効的な手続として整えるのかにある。証拠開示が限定され、再審開始決定後も検察官抗告で手続が長期化すれば、えん罪を訴える人は、自由を奪われたまま長期間を過ごすことになる。死刑事件では、その時間は執行への恐怖と切り離せない。
今回の公開書簡は、刑事司法制度の専門論に見える再審法改正を、国際人権基準とえん罪被害者救済の問題として位置付け直した点に特徴がある。法務省と国会は、5月15日に閣議決定された改正案の審議を通じ、証拠開示の範囲、検察官抗告の例外規定、再審請求審の迅速化が、袴田事件のような長期のえん罪被害を再び生まない制度設計になっているかを問われる。
アムネスティ・インターナショナル日本「日本:えん罪被害者を救済する、国際人権基準に合致した真の再審法改正を求める」
URL: https://www.amnesty.or.jp/news/2026/0527_10988.html
参考:自由民主党「【再審制度、戦後初の見直しへ】刑事訴訟法改正案を党内了承」
URL: https://www.jimin.jp/news/information/213227.html

