欧州議会で「送り返せ」連呼 アムネスティが人種差別を批判

この記事のポイント

1.EU送還規則の採決後、欧州議会の複数議員が「送り返せ」と連呼し、議場内から批判の声が上がった。
2.アムネスティは、発言が移民や難民を排除する人種差別的な偏見を反映していると批判した。
3.送還規則は最長24月の収容やEU域外の「送還拠点」を認める内容で、市民団体が人権侵害の危険を指摘している。

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欧州議会が2026年6月17日にEUの新たな送還規則を可決した後、複数の議員が議場で「送り返せ」と繰り返し、別の議員が「恥を知れ」と応じた。アムネスティ・インターナショナルは7月6日、この発言を、欧州の政治や社会で長く容認されてきた人種差別と外国人排斥が公的機関で表面化したものだと批判した。日本支部のアムネスティ・インターナショナル日本は9日、声明の日本語版を公開した。

送還規則は、EU域内に滞在する権利がないと判断された第三国出身者に、当局への協力と域外への退去を義務付ける。欧州議会は賛成418、反対218、棄権30で欧州理事会との合意案を承認した。個別審査を前提に最長24月の収容を認め、事情の変化などがあれば合計6月の延長も可能とする。EU加盟国と第三国の合意に基づき、帰国までの間に対象者を域外の「送還拠点」へ移す制度も盛り込まれた。

欧州議会は、新制度が手続を迅速化するとともに、難民を迫害のおそれがある国へ戻してはならないノン・ルフールマン原則、集団的追放の禁止、基本的人権を尊重すると説明する。域外の送還拠点についても、人権と国際法を守る第三国との合意に限り、保護者のいない未成年者は対象外とした。規則案は欧州議会の可決後、EU理事会による正式採択とEU官報への掲載を経て発効する手続となっている。

これに対し、アムネスティなど250を超える市民社会団体は、長期収容、第三国への移送、監視の強化、異議申立ての保障低下が、恣意的な拘禁や送還先での迫害、法的地位が定まらない状態を拡大させると訴えてきた。とりわけ外見や民族的背景によって移民とみなされる人が職務質問や摘発の対象となりやすくなれば、規則上は国籍や滞在資格を基準とする制度であっても、人種的プロファイリングを通じて差別的な結果を生む危険がある。

アムネスティの欧州地域副局長ディヌシカ・ディサナヤケ氏は、ロベルタ・メッツォラ欧州議会議長が連呼を非難したことを評価しつつ、非難だけでは不十分だと指摘した。本件では、送還政策の賛否と、議会で特定の人々を集団として排除する掛け声を発することの可否を分けて検討する必要がある。メッツォラ議長と欧州議会には、議員の発言に対する規律上の処理に加え、送還規則が移民、難民、庇護申請者に及ぼす差別的影響を立法過程と施行後の双方で検証する責任が残る。

出典

アムネスティ・インターナショナル日本「EU:欧州議会に響く『送り返せ』 今こそ人種差別と向き合う時」
URL:https://www.amnesty.or.jp/news/2026/0709_11038.html

参考 European Parliament「New EU system for return of illegally staying third country nationals」
URL:https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20260611IPR45214/new-eu-system-for-return-of-illegally-staying-third-country-nationals

参考 Council of the European Union「Council and Parliament reach deal on returns of illegally staying third-country nationals」
URL:https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2026/06/01/council-and-parliament-reach-deal-on-returns-of-illegally-staying-third-country-nationals/

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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