1.生徒に関する誤ったいじめ情報が、LINEで少なくとも14人に送信された。
2.被害生徒は登校が困難となり、調査委員会は誤情報の拡散と心身被害の直接的な因果関係を認定した。
3.学校は未然防止教育と組織的な生徒指導の不十分さを認め、アンケートや面談、教職員研修を強化する。

上尾市教育委員会は2026年7月13日、市立中学校で2025年度に発生したいじめ重大事態の調査報告書を公表した。学校は2025年5月15日にいじめを認知し、同年9月12日、被害生徒が相当期間の欠席を余儀なくされ、心身に重大な被害が生じた疑いがあるとして、いじめ防止対策推進法第28条の「1号事案かつ2号事案」と判断した。校内の調査委員会は同年9月17日から2026年4月30日まで調査を行った。
発端は2025年5月、別の生徒が小学校時代に自分をいじめた人物を被害生徒と取り違えたことだった。相談を受けた生徒は、「被害生徒がある人をいじめていた」とする誤った内容をLINEで少なくとも14人に送信し、受信した生徒から別の生徒にも情報が伝わった。学校は5月13日に噂を把握し、15日に関係生徒への聴き取りから人違いと確認。翌16日には送受信に関わった生徒へ聴き取りを行い、保護者への連絡とメッセージの削除を指導した。
調査委員会は、誤情報が学校全体や保護者、周辺地域へ広がった可能性を否定できず、被害生徒が強い不安とストレスから登校できなくなり、医療機関を受診して診断を受け、転校を考えるなど重大な被害を受けたと認定した。誤情報の拡散と心身被害との間には「直接的な因果関係」があると結論づけた。被害生徒の保護者は所見書で、学校生活が一変し、精神科受診や学校でのカウンセリングを経たことに触れ、情報を流した生徒への説明責任が所見書作成時点でも果たされていないと訴えた。
学校は、関係生徒への指導、SNS利用に関する全学年集会、被害生徒と関係生徒の接触を避ける見守り、学習支援、スクールカウンセラーなどとの連携を実施した。ただし、報告書は、被害生徒が安心して学校生活を送れる居場所を確保できなかったと認め、事案の背景に「いじめ未然防止教育の徹底不足」と「組織的な生徒指導の機能不全」があったと総括した。誤情報のネット拡散は、名誉や人格を傷つけるだけでなく、教育を受ける機会を事実上奪い得る。いじめ防止対策推進法がインターネット上の行為もいじめに含めるのは、情報の高度な流通性によって被害が短時間で拡大するためである。
再発防止策には、毎月の学校生活アンケート、定期・随時の二者面談、保護者説明会での基本方針周知、スマートフォン利用の啓発、学期ごとの校内研修が盛り込まれた。被害生徒への支援では、養護教諭、教育相談担当、スクールカウンセラー、相談員らが連携し、加害生徒にも必要に応じてカウンセリングを行う。同校は2026年度から埼玉県教育委員会の「いじめ未然防止教育プログラム」を導入し、未然防止に重点を置いた授業を実施するとしている。
上尾市教育委員会「上尾市立中学校で発生したいじめ重大事態に関する調査報告書の公表について」、調査報告書、被害生徒保護者所見書、文部科学省「いじめ防止対策推進法」
URL:https://www.city.ageo.lg.jp/site/iinkai/426029.html
URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1406848.htm

