【連載 教員性暴力防止指針の改訂】第2回 盗撮・SNS対策を明記、学校現場の安全管理を強化

教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針

文部科学省が改訂した「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針」では、教員等による盗撮、画像データの管理、児童生徒とのSNS等による私的なやりとりへの対応が、従来より具体的に示された。改訂の背景には、児童生徒等を盗撮し、画像などをSNS上の教師間グループで共有する事案や、一部の任命権者等で法に定められた義務が十分に履行されていなかった事案が確認されたことがある。今回の指針改訂は、性暴力防止を教員個人の倫理や研修だけに委ねず、学校の環境、端末、データ、連絡方法を含む組織的な安全管理の問題として捉え直した点に特徴がある。

通知では、盗撮防止の観点から、教室、トイレ、更衣室等の定期的な点検を行うことや、教室等を常に整理整頓し、カメラを設置できないような環境にしていくことが示された。また、私的な端末で児童生徒等を業務外の目的で撮影しないこと、学校所有等の端末で撮影する場合でも、児童生徒等の画像を管理職の許可なく学校外に持ち出さないことなど、端末利用やデータ管理のルール明確化が必要だとしている。防犯カメラ等についても、学校設置者が各学校の実情に応じ、様々な防犯対策の一つとして設置や活用を判断するものと位置づけられた。

SNS等による私的なやりとりについても、指針は明確に踏み込んでいる。基本指針では、児童生徒性暴力等による懲戒処分等が行われた事案の中に、教育職員等と児童生徒等との間でSNSや電子メール等を用いた私的なやりとりが行われていた事案があるとした上で、こうした私的なやりとりは適切ではないと整理している。そのため、教育委員会など服務管理を行う機関には、業務遂行に関する規則や指針等で、SNS等を用いて児童生徒等と私的なやりとりを行ってはならないことを明確化することが求められる。業務上必要な連絡を行う場合でも、児童生徒や保護者との適切な連絡方法、学校管理職との情報共有の扱いを明確にする必要がある。

この改訂は、学校現場にとって実務上の意味が大きい。児童生徒性暴力等は、密室化した指導、部活動、個別相談、校内の死角、私的な連絡手段など、日常的な教育活動の延長線上で起こり得る。したがって、学校には「教員を信頼する」という前提だけではなく、信頼を悪用できない環境を整える責任がある。電話やSNS等による相談体制、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用、警察や性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターとの連携も、早期発見と被害者支援に不可欠となる。文部科学省も、地方公共団体に対し、電話やSNS等による通報・相談体制の整備や、教育委員会以外の相談窓口を含めた積極的な周知を求めている。

人権上の論点は、子どもの安全確保とプライバシー保護の両立にある。防犯カメラや点検は、盗撮や密室化を防ぐ手段となり得る一方、運用を誤れば、児童生徒の日常を過度に監視する仕組みにもなりかねない。重要なのは、設置目的、撮影範囲、閲覧権限、保存期間、記録の廃棄方法を明確にし、子どもを管理するためではなく、子どもが安心して学校生活を送るための仕組みとして運用することである。教育委員会や学校法人は、マニュアル整備にとどめず、校内の死角、端末管理、画像データの取扱い、部活動や個別指導時の連絡手段まで、現場で実際に確認できる形に落とし込む必要がある。

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