1.令和8年版男女共同参画白書は、女性の職業キャリアと男性の暮らしに関する「学び直し」を特集した。
2.職業キャリアについて学ぶ意欲がある人のうち、過去1年以内に学んでいない割合は女性で約7割、男性で約6割だった。
3.女性には費用と家事・育児・介護、男性には仕事の忙しさと社内評価が、学び直しを妨げる傾向が表れた。

内閣府は2026年7月10日、「令和8年版男女共同参画白書」を閣議決定し、公表した。男女共同参画社会基本法に基づく年次報告で、特集は「仕事や職業キャリアに関する女性の学び直し・暮らしを充実させる男性の学び直し」。政府統計と内閣府の意識調査を使い、学ぶ意欲の有無だけでなく、実際の行動を妨げる経済、時間、情報、職場評価の条件を男女別に分析した。
白書が前提として示したのは、女性の就業拡大と、なお残る処遇格差の併存である。2025年の15~64歳女性の就業率は75.3%に達し、雇用者の共働き世帯は1,254万世帯で、専業主婦世帯358万世帯の3.5倍となった。他方、一般労働者の所定内給与額は女性28万5,900円、男性37万3,400円で、男性を100とした男女間賃金格差は76.6にとどまる。学び直しを個人の能力開発だけでなく、女性の所得向上と経済的自立に結び付けて扱った点が今回の特徴である。
仕事や職業キャリアについて「学ぶ意欲があり、過去1年以内に学んだ」と答えた割合は女性9.6%、男性15.0%だった。「意欲はあるが学んでいない」は女性24.1%、男性24.7%で、意欲を持つ人に限れば未実施は女性の約7割、男性の約6割を占める。差が示すのは、女性の学習意欲が低いという構図ではない。意欲を実行に移せる条件に格差があるという問題である。
障壁にも違いがある。女性では「金銭的余裕がない」が32.7%で最多となり、「学んでも収入アップにつながらない」19.3%、「何を学んでいいか分からない」19.1%が続いた。男性は「金銭的余裕がない」25.4%、「仕事が忙しくて時間がない」20.5%、「学んでも収入アップにつながらない」18.1%だった。「家事・育児・介護等が忙しくて時間がない」は女性が男性を7.4ポイント上回り、「仕事が忙しくて時間がない」は男性が3.3ポイント高い。家庭内の無償労働と職場の長時間拘束という異なる制約が、学習機会へのアクセスを狭めている。人権上の論点は、講座が形式上開かれているかではなく、性別にかかわらず実際に利用できる条件が確保されているかにある。
現状編では、民間企業の女性比率が係長級25.2%、課長級16.1%、部長級9.3%と、役職が上がるほど低下する実態も示された。講座を用意するだけでは、学び直しの成果が昇進や所得に結び付くとは限らない。企業には学習時間の確保と評価制度への接続、地方公共団体には費用負担を抑えた講座と学ぶ内容を選ぶための相談支援が必要になる。白書が掲げた地域女性活躍推進交付金と男女共同参画センターの機能を、経済、時間、情報、職場評価という四つの障壁に対応させられるかが、令和8年度施策の実効性を左右する。
内閣府男女共同参画局「令和8年版男女共同参画白書」
URL:https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r08/zentai/pdfban.html

