1.法務省は2014年9月以降、無戸籍者を累計5,133人把握し、2025年3月10日までに4,433人が戸籍に記載された。
2.2024年4月施行の改正民法は嫡出推定を見直し、母と子にも嫡出否認権を認めたが、無戸籍の発生原因はこれだけではない。
3.戸籍がなくても就学や児童手当などを利用できる場合がある一方、出生登録と法的身分の確立は別に解決する必要がある。

法務省が2025年3月10日時点で公表した集計では、2014年9月から把握した無戸籍者は累計5,133人に上り、このうち4,433人が戸籍に記載された。単純差では700人がなお未記載となる。2024年4月1日には、無戸籍問題の主要な原因の一つとされてきた民法の嫡出推定制度が改正されたが、その後も新たな無戸籍者は把握されている。法務大臣は2025年2月28日の会見で、2024年4月10日から2025年2月9日までに265人の無戸籍状態が解消した一方、新たに220人を把握し、同年2月10日時点で707人だったと説明した。制度改正だけで問題が消滅したわけではない。
改正前の民法では、離婚後300日以内に生まれた子は原則として元夫の子と推定された。このため、血縁上の父が別にいる場合などに、元夫を父として戸籍に記載されることを避けるため出生届が出されず、無戸籍となる事例が生じていた。2024年改正では、離婚後300日以内でも母が再婚した後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定する仕組みに変更したほか、従来は夫だけに認められていた嫡出否認の訴えを子と母にも認め、出訴期間も原則1年から3年へ延長した。施行前に生まれた子と母に認めた特例的な出訴期間は、2025年3月31日で終了している。
無戸籍であることと、すべての行政サービスを利用できないことは同じではない。法務省は、戸籍に記載される前でも一定の要件を満たせば住民票を作成できる場合があり、住民票や戸籍がなくても、居住実態が確認できれば小中学校への就学、児童手当、児童扶養手当、保育所等の利用、母子保健サービスなどの対象となり得ると説明している。行政機関が戸籍の不存在だけを理由に必要な支援から排除しない仕組みは既にある。ただし、これは無戸籍状態そのものを解消する制度ではなく、行政サービスへのアクセスを確保する措置である。
問題の原因も嫡出推定だけには限定できない。出生届が長期間提出されなかった事例、父母や出生の経緯を確認する資料が乏しい事例、元夫との接触を避けたい事情がある事例などでは、戸籍への記載に別の手続を要する。法務省が公表する解決事例には、60年以上無戸籍だった人が出生証明書を基に裁判を経ず戸籍へ記載された例や、70年以上無戸籍だった人が家庭裁判所の就籍許可を経て戸籍を作った例もある。法改正後も、法務局、市区町村、家庭裁判所、法テラスをつなぐ個別支援は残る。
子どもの権利条約第7条は、子どもが出生後直ちに登録され、氏名と国籍を取得する権利を持つと定め、第8条は国籍、氏名、家族関係などの身元関係事項を保持する権利を保障する。法務省は2026年度の取組で、2024年改正の効果を検証するため全国の法務局へのアンケート調査を実施し、無戸籍者ゼロに向けた関係省庁の連携を続けている。次に検証すべきなのは、過去の無戸籍者を何人解消したかだけでなく、改正後に新たな無戸籍状態がどのような理由で発生し、出生から把握・支援までにどの程度の時間を要しているかである。
法務省「令和6年度 人権教育及び人権啓発施策」
URL: 法務省資料
出典 法務省「法務大臣閣議後記者会見の概要(令和7年2月28日)」
URL: 法務大臣記者会見
出典 法務省「民法等の一部を改正する法律について」
URL: 民法等の一部を改正する法律について
出典 法務省「無戸籍でお困りの方へ よくあるご質問」
URL: 無戸籍でお困りの方へ
出典 法務省「無戸籍でお困りの方へ 解決事例紹介」
URL: 無戸籍の解決事例
出典 外務省「児童の権利に関する条約」
URL: 児童の権利に関する条約全文
子どもの権利とは
URL: 人権ニュース「子どもの権利とは」
