横浜市、認知症と人権を合同講演 本人の意思と家族支援を分けて考える

この記事のポイント

1.横浜市西区と保土ケ谷区が11月19日、認知症の本人と家族の人権を扱う合同講演会を開催する
2.認知症基本法は、本人を支援の対象だけでなく、自ら意思を表明する権利主体として定めている
3.2022年の認知症推計は443万2,000人で、本人の意思決定支援と家族への支援を同じ課題として扱わないことが制度理解につながる

横浜みなとみらいのイラスト

横浜市西区と保土ケ谷区は11月19日、西公会堂で合同人権啓発講演会を開催する。テーマは「認知症の人とその家族の人権」。映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」などを手掛けた信友直子監督が「父と、認知症の母と歩む日々~分からなくなっても、変わらないこと~」と題して講演する。定員は先着500人で、手話通訳を実施し、事前申込みによる託児にも対応する。

このテーマは、介護する家族の苦労を理解することだけでは完結しない。「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」は、認知症の人を基本的人権を享有する個人として扱い、自らの意思によって日常生活や社会生活を営めるようにすることを基本理念に掲げる。本人に直接関係する施策の決定過程で意見を表明する機会や、社会活動へ参加する機会を確保する考え方も盛り込まれた。同時に、認知症の人の家族などへの支援も基本理念に含まれている。

人数の規模からも、認知症を家庭内部だけの問題として扱うことは難しい。厚生労働省研究班による推計では、2022年の65歳以上の認知症の人は443万2,000人、軽度認知障害(MCI)は558万5,000人。2025年については認知症471万6,000人、MCI564万3,000人と推計されている。いずれも実際に診断された全人数ではなく推計値だが、医療や介護だけでなく、買い物、契約、財産管理、交通、地域活動など幅広い生活場面と関係する規模である。

本人の意思と家族支援は、時に同じ場面で緊張関係を持つ。安全を心配する家族が外出を制限したい場合でも、本人が何を望んでいるかという問題は残る。反対に、「本人の意思を尊重する」という言葉だけで、介護を担う家族の負担を放置してよいわけでもない。認知症基本法が本人の意見表明と家族支援の双方を掲げているのは、どちらか一方のみで制度を組み立てられないためである。

信友氏の作品や講演は、家族の生活を具体的に描くところに特徴がある。西区と保土ケ谷区が今回、講演名を単なる「認知症講演会」ではなく「認知症の人とその家族の人権」としたことで、家族介護の経験だけでなく、本人自身を意思を持つ生活者としてどう扱うかまで射程に入る。11月19日の合同講演は、認知症基本法が掲げる本人尊重と家族支援を日常生活の事例から考える場となる。

出典

横浜市「西区・保土ケ谷区合同人権啓発講演会」
URL:https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/nishi/2026/0825_nishi_jinken.html

厚生労働省「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」
URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab9328&dataType=0&pageNo=1

厚生労働省「認知症及び軽度認知障害の推計」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001266387.pdf

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