1.静岡県は、全国の自治体に先駆けて「認知症バリアフリー宣言」を実施した。
2.宣言は、人材育成、地域連携、社内制度、環境整備の4区分で、県庁全体の取組を示す。
3.認知症施策は、介護だけでなく、本人の意思、社会参加、働き続ける環境を支える人権課題でもある。

静岡県は、全国の自治体に先駆けて「認知症バリアフリー宣言」を実施した。県によると、認知症バリアフリー宣言は、企業・団体等が認知症バリアフリーの推進に向けた自らの取組を宣言し、行動につなげることで、社会全体で共生する心を結び合わせていく活動とされる。県は2025年7月28日に宣言し、2025年7月現在、全国では静岡県庁を除き44社648拠点が宣言している。
県が宣言の背景に置くのは、認知症が特定の人だけの問題ではなくなるという人口構造の変化である。静岡県は、2040年には高齢者のうち3割を超える人が認知症または軽度認知障害になると見込まれると説明する。厚生労働省の将来推計でも、2040年の認知症高齢者数は584.2万人、軽度認知障害の高齢者数は612.8万人とされている。
県の宣言内容は、4つの区分で整理されている。人材育成では、認知症の当事者の立場に立った取組が行われるよう、従業員などに正しい理解を促し、認知症サポーター養成講座等を実施する。地域連携では、行政機関、専門機関、企業、当事者との連携や、見守り・SOS体制の広域連携、相談窓口設置を掲げる。
社内制度では、介護離職の防止や、認知症の当事者が働き続けるための環境づくりとして、介護休暇、在宅勤務、時短勤務等を挙げている。環境整備では、施設やホームページを認知症の人や家族が利用しやすくし、窓口での対応マニュアルを作成する。行政庁としての県庁が宣言することで、住民対応、職員の働き方、地域との連携を同じ枠組みで扱う点に特徴がある。
認知症施策をめぐっては、2024年1月に共生社会の実現を推進するための認知症基本法が施行された。同法は、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的・計画的に進めることを目的としている。厚生労働省の概要資料では、全ての認知症の人が基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活と社会生活を営むことができることを基本理念に掲げている。
人権上の論点は、認知症を「介護される人」の問題に閉じ込めない点にある。買い物、行政手続、交通機関、金融、職場、地域活動の場で、認知症の人や家族が利用しにくい環境が残れば、生活の選択肢は狭まる。静岡県の認知症バリアフリー宣言は、福祉サービスの拡充だけでなく、県庁の事業展開、民間企業・団体の取組、窓口対応、働き続けるための制度を通じて、認知症になっても地域で暮らし続ける条件を整える取組である。
静岡県「認知症バリアフリー宣言」
URL: https://www.pref.shizuoka.jp/kenkofukushi/koreifukushi/ninchisho/1040562/1078072.html
参考:e-Gov法令検索「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」
URL: https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC1000000065
参考:厚生労働省「認知症及び軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf
参考:厚生労働省「共生社会の実現を推進するための認知症基本法 概要」
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/001212852.pdf
