【人権的視点から考える】自民、外国人政策を厳格化 権利保障との両立課題

自由民主党外国人政策本部(本部長:新藤義孝氏・衆)はこのほど、外国人政策の見直しをめぐり、電子渡航認証制度「JESTA」の導入、在留資格審査や帰化審査の厳格化、医療費不払い対策、不動産登記などでの国籍把握を進める方針を整理した。党所属国会議員向けに作成したチラシ「国民の安全と安心を守る外国人政策」では、訪日外国人や在留外国人の増加を前提に、「無制限な受け入れはしない」と明記し、出入国管理、在留管理、社会保障、土地・住宅分野にまたがる制度の適正化を打ち出している。

チラシは、訪日外国人が4,000万人、国内に住む外国人が400万人を超えたことを前提に、「無制限な受け入れはしない」「より適正なルールにする」と掲げている。統計上も、2025年の年間訪日外客数は4,268万3,600人、2025年末の在留外国人数は412万5,395人で、いずれも過去最高水準にある。外国人政策は、出入国管理だけでなく、労働、住宅、医療、教育、地域行政を横断する国内政策になっている。

制度面で最も強いメッセージは、在留資格や制度利用の「適正化」である。チラシは、在留資格「経営・管理」の審査基準を資本金500万円から3,000万円に引き上げた結果、申請数が月約1,700件から約70件へ減ったと説明する。出入国在留管理庁も、同資格について1人以上の常勤職員雇用、3,000万円以上の資本金等、日本語能力、経歴要件などを新たな基準として示している。虚偽の会社設立やブローカー的利用を防ぐ効果は見込めるが、小規模起業者や地域で事業を始める外国人に過度な参入障壁を生まないかは、個別審査の透明性と経過措置で検証する必要がある。

人権上の核心は、「外国人一般」と「制度を悪用する個別事案」を切り分けられるかにある。JESTA、不法滞在対策、医療費不払い情報の共有、民泊や公営住宅の確認強化はいずれも行政目的を持つ。しかし、国籍や在留資格を理由にした一律の疑念が先行すれば、適法に暮らす外国人、永住者、外国にルーツを持つ子どもまで、地域での排除感を受けやすくなる。医療費不払い対策でも、悪質な未払いと、言語、急病、支払手続の不理解による未払いを同じ扱いにしない制度設計が要る。

帰化審査の厳格化も、象徴的な論点である。法務省は2026年4月1日から、帰化審査で「日本社会に融和していること」について原則10年以上の在留を必要とし、税金や社会保険料の納付状況を確認する期間も延ばすと説明している。国籍取得は国家の裁量が大きい領域だが、審査基準が抽象化すると、申請者側には何を満たせばよいのかが見えにくくなる。「融和」という語を使う場合、思想、文化、民族的背景の同化要求ではなく、法令遵守、生活基盤、社会参加など確認可能な事項に限定して運用することが、人権上の歯止めになる。

国際人権法の基準から見ると、外国人に対する制度上の区別がすべて差別になるわけではない。出入国管理、在留資格、土地利用、安全保障に関する規制は、目的と手段が合理的で、個別事情を考慮し、過度に広くならないことが条件になる。自由権規約は法律の前の平等と差別のない保護を定め、人種差別撤廃条約も人権及び基本的自由の平等確保を目的としている。国籍情報を取得・共有する政策では、目的外利用、過剰な公開、地域での偏見助長を防ぐ規律が欠かせない。

チラシの中で、人権政策として最も建設的なのは、日本語、文化、制度、生活ルールを学ぶ包括的な学習プログラムの創設である。ただし、外国人だけに「学ぶ」責任を置くと、地域の摩擦を本人側の努力不足に還元しやすい。地方公共団体、学校、医療機関、雇用主、住宅管理者が、多言語相談、労働相談、子どもの教育支援、差別防止の研修を併せて進めることで、秩序と権利保障を同時に扱える。新藤本部長は第2次提言を5月後半から6月頭にかけて取りまとめる考えを示しており、次の焦点は「厳格化」の列挙ではなく、適法に暮らす外国人を地域の構成員としてどう支えるかの制度設計に移る。

出典

自由民主党「新しい『外国人政策』を分かりやすく」
https://www.jimin.jp/news/information/213123.html

自由民主党チラシPDF「国民の安全と安心を守る外国人政策」
https://storage.jimin.jp/pdf/news/information/213123_1.pdf

法務省「帰化許可申請に係る審査項目・考慮事情について」
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00706.html

出入国在留管理庁 在留資格「経営・管理」の上陸許可基準等の改正関係
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00162.html

JNTO 訪日外客統計
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/

出入国在留管理庁 在留外国人数統計
https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.html

外務省「市民的及び政治的権利に関する国際規約」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html

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