1.鹿児島市は8月8日、「こうのとりのゆりかご」に預けられた宮津航一さんの人権啓発講演会を開く。
2.宮津さんは3歳で預けられ、里親家庭で育った自身の生い立ちを2022年に公表した。
3.子どもの生命を守る仕組みと、出自を知る権利、里親委託後の支援を考える講演となる。
.png)
鹿児島市教育委員会は2026年8月8日、サンエールかごしま講堂で人権啓発講演会「ココロあったかトークライブ」を開く。「いのちの語りびと」として活動する宮津航一さんが、「こうのとりのゆりかごから始まる第2の人生」と題して、自らの生い立ちや里親家庭で育った経験を語る。午後2時から3時30分までで、定員は先着300人。参加は無料だが、申込フォームまたはFAXによる事前申込みが必要となる。
宮津さんは2003年生まれ。鹿児島市の案内によると、2007年に熊本市の慈恵病院が開設した「こうのとりのゆりかご」に3歳で預けられ、同年に里親のもとへ委託された。2022年の高校卒業を機に、自身が「ゆりかご」に預けられた生い立ちを公表した。現在は当事者として全国各地で講演し、自らの経験を「いのちの語りびと」として伝えている。
「こうのとりのゆりかご」は、自ら育てることができない子どもを親が匿名で病院へ預ける仕組みとして、慈恵病院が2007年に運用を始めた。熊本市の2025年度検証では、1年間に7件の預け入れがあり、刑法上の明らかな違法性は認められないとされた。ただし、同報告は、子どもの権利や預け入れまでの安全性を含め、個別の運用状況を継続して検討する必要があるとも記している。
この仕組みをめぐっては、遺棄や出産直後の死亡を防ぎ、子どもの生命と健康を守る役割と、親に関する情報が残らない場合に生じる「出自を知る権利」の問題を分けて考える必要がある。児童の権利に関する条約は、第6条で生命、生存、発達への権利を定め、第7条で、子どもができる限り父母を知り、父母によって養育される権利を掲げている。宮津さんの語りは、制度を外部から論じるだけでは捉えにくい、預けられた後の成長、家族との関係、本人への情報開示のあり方を考える材料になる。
ただし、宮津さんの生い立ちは一人の当事者の経験であり、すべての預け入れ児童や里親家庭の状況を代表するものではない。個別の語りを尊重しつつ、本人への情報告知、出自に関する記録の保存、里親委託後の支援という制度上の課題へ結び付けて受け止めることが、人権啓発講演としての要点になる。慈恵病院の検討会も、将来、子どもが情報を知りたいと考えた時に備え、出自に関する記録を散逸させず保存する仕組みを課題として挙げている。
会場には手話通訳、要約筆記、車椅子席、親子席を設ける。生後6か月から小学2年生までを対象とする託児も用意し、配慮が必要な場合は事前の連絡を受け付ける。鹿児島市教育委員会生涯学習課は、子どもが生まれや育ちに左右されず、成長と将来の機会を得られる地域を掲げ、8月8日の講演を市民向けの学習機会として実施する。
鹿児島市「令和8年度 ココロあったかトークライブ(人権啓発講演会)の開催」
URL:https://www.city.kagoshima.lg.jp/kyoiku/kyoiku/syogaigaku/event/2026talklive.html
参考 熊本市「令和7年度『こうのとりのゆりかご』預け入れ状況について」
URL:https://www.city.kumamoto.jp/kiji00371026/index.html
参考 外務省「児童の権利に関する条約」全文
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html

