1.2004年10月23日の新潟県中越地震から22年。死者68人のうち52人が災害関連死で、車中泊や避難生活に伴う健康被害が、その後の日本の防災対策に課題を残した。
2.2025年7月施行の改正災害救助法では、救助の種類に「福祉サービスの提供」を追加。避難所だけでなく、在宅避難者や車中泊避難者も含めた支援体制の充実が進む。
3.2026年11月2日には防災庁が発足予定。能登半島地震の災害関連死事例の分析も踏まえ、被災者の生命と健康、尊厳を守る避難生活支援を検証する。

22年前の10月23日、最大震度7の地震が発生
2004年10月23日午後5時56分、新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生した。川口町(現長岡市)で最大震度7、小千谷市や山古志村、小国町(いずれも現長岡市)で震度6強を記録。新潟県によると、死者68人のうち52人が災害関連死だった。強い揺れによる建物の倒壊や土砂災害に加え、避難後の生活環境の悪化によって多くの命が失われた。避難者はピーク時に10万人を超え、約3,175棟の住宅が全壊した。地震の発生から22年となる2026年10月23日、長岡市や小千谷市では犠牲者を追悼し、災害の記憶を伝える行事が行われた。
長岡市は、アオーレ長岡で午後3時30分から6時30分まで献花台を設置し、キャンドルを点灯。山古志体育館では午後5時から追悼行事「10.23山古志の集い」を開催した。小千谷市ではスポーツコミュニティプレイス「ソコラテ」の屋外広場で追悼のつどいを開き、地震発生時刻の午後5時56分に黙とうを行った。これらの行事は、犠牲者への追悼とともに、被災経験を次世代へ継承する機会となっている。
2026年の日本では、災害発生時に建物の倒壊や土砂災害から命を守る対策だけでなく、避難後に健康状態を悪化させないための制度整備が進められている。2025年7月には災害対策基本法と災害救助法の改正が全面施行され、被災者への福祉サービス提供が法律上明確になった。2026年1月には内閣府が能登半島地震の災害関連死事例集を公表し、同年7月には防災庁設置法が公布された。中越地震を振り返ることは、22年間で災害への対応がどこまで変化し、なお何が課題として残されているのかを確認することにもつながる。
死者の大半が災害関連死という特徴
中越地震で特に深刻だったのは、避難生活に伴う健康被害だった。
新潟県の災害記録によると、死者68人のうち52人は災害関連死に該当する。災害関連死とは、建物の倒壊や土砂に巻き込まれるなどの直接的な原因ではなく、災害による負傷の悪化や避難生活による身体的な負担などを通じて亡くなり、災害との因果関係が認められた死亡を指す。
中越地震では、余震が続いたことへの不安や避難所の混雑、プライバシーの確保が難しい生活環境などを理由に、自動車の中で避難生活を送る住民が多く発生した。車内で長時間同じ姿勢を続けることによる血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群が問題となったほか、高齢者では心疾患や肺炎などによる死亡も確認されている。
エコノミークラス症候群は、長時間足を動かさないことなどによって静脈に血栓が生じ、その血栓が肺の血管を詰まらせる肺血栓塞栓症などにつながる危険を指す。長時間の座位や水分不足などが関係し、航空機だけでなく自動車内での生活でも発症するおそれがある。
ただし、中越地震の災害関連死52人全員が車中泊や血栓症によって亡くなったわけではない。新潟県は、地震によるショック、避難生活でのストレス、心疾患、肺炎など、複数の事情を挙げている。災害関連死の原因を特定の避難形態だけに結びつけないことが、被害の実態を理解するうえで欠かせない。
災害発生直後に生命の危険から逃れたとしても、その後の避難生活で必要な水、食事、睡眠、医療、介護などを確保できなければ、健康状態が悪化する可能性がある。中越地震は、災害による死亡を考える際に、地震の瞬間だけでなく、避難後の生活環境を含めて検討する必要性を示した事例となった。
山古志村の全村避難、地域のつながりを維持した復興
中越地震では、山間地域の集落が孤立したことも深刻な問題となった。内閣府の記録によると、地震による土砂崩れや道路の損壊によって、小千谷市や山古志村など7市町村の61集落が孤立し、1,938世帯が外部への交通手段を失った。
山古志村では5地区14集落すべてが孤立し、2,000人を超える村民が全村避難を余儀なくされた。10月25日には自衛隊などのヘリコプターによる住民の移送が進められ、長岡市内の避難所での生活が始まった。帰村が実現するまでには約3年を要している。
全村避難の際、山古志村が重視したのは、避難先でも地域のつながりを維持することだった。
長岡市内の避難所では、当初、村職員が避難者への聞き取りを行って名簿を作成。その後、避難所の構成を集落単位に再編した。応急仮設住宅も集落ごとに入居する方式が採用され、小中学校についても、長岡市内の学校に児童生徒を個別に転入させるのではなく、山古志の学校として授業を継続した。
仮設住宅の近くには、農作業を通じて生活習慣や地域のつながりを維持できるよう「生きがい健康農園」も設けられた。
これらは単なる生活上の便宜ではない。被災者にとって、慣れ親しんだ人間関係や日々の活動を維持することは、避難生活で生じる孤立や心理的な負担を軽減するための条件にもなる。
ただし、地域単位での避難が、すべての住民にとって最善とは限らない。家族構成、仕事、健康状態、子どもの教育などによって、希望する避難先や再建方法は異なる。
山古志村の復興では、世帯ごとの健康状態、帰還の意思、経済状況などを把握するための調査も行われた。地域の共同性を維持する取組と、個々の住民が希望する生活再建を尊重する取組の両方が行われた点は、長期避難における生活支援の事例として参考となる。
車中泊を選ばざるを得ない人々への支援
中越地震では、車中泊の危険性が広く知られるようになった。しかし、車の中で寝泊まりすることを、避難者本人の判断だけの問題として扱うことは適切ではない。
強い余震が続く状況では、建物の中に戻ることに不安を感じる人がいる。避難所が混雑していれば、乳幼児の泣き声が周囲に迷惑をかけることを心配する家族や、集団生活に困難を感じる人、プライバシーを確保したい人もいる。
高齢者や障害者、持病のある人にとっては、一般の避難所で必要な介助や医療的な支援を受けられない場合もある。ペットと同行していることなど、避難先を選ぶ理由もさまざまだ。
こうした事情から車中泊を選択した場合、単に車中泊をやめるよう呼びかけるだけでは、問題の原因を取り除けない。
内閣府は2024年6月、「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」を公表した。避難所に入らず、自宅や車内などで避難生活を送る人についても、所在や健康状態、必要な支援を把握し、適切な支援につなげるための方法を整理している。
避難所で暮らす人は、行政や支援団体が比較的状況を把握しやすい。それに対し、車中泊や在宅避難では、本人が支援を必要としていても、その情報が自治体に届かない場合がある。
必要な医薬品が不足している、食事を十分に取れていない、介護サービスが中断しているなどの問題があっても、避難者の所在を把握できなければ支援の開始が遅れる。
車中泊をめぐる政策は、健康上の危険を周知するだけでなく、避難所の外で暮らす人を支援対象から取り残さない仕組みを整備することへと広がっている。
2024年の能登半島地震でも災害関連死が発生
中越地震で明らかになった問題は、その後の大規模災害でも繰り返されている。
2024年1月1日の能登半島地震では、道路の寸断、上下水道や電力の停止、医療・介護施設の被災、避難の長期化などが発生した。半島という地理的条件に加え、地域の高齢化や冬季の寒さが災害対応に影響した。
内閣府は2026年1月、能登半島地震について、災害関連死と認定された事例と認定されなかった事例をまとめた「災害関連死事例集」を公表した。
事例集では、関係自治体から情報提供を受けた認定事例286件と、認定されなかった事例122件を整理している。認定286件のうち234件は死亡時の年齢が80歳以上で、270件について何らかの既往症などが確認されていた。死亡までの期間では、発災から3か月以内が188件だった。
これらは事例集に収録された案件の集計であり、能登半島地震による災害関連死の最終的な全国総数ではない。また、80歳以上の人や持病のある人が多かったという事実だけで、年齢や持病が災害関連死の原因だったと断定することもできない。
内閣府は、死亡に至る経緯について、地震による恐怖やストレス、断水、停電、避難場所の移動、転院、介護体制の変化、低温下での生活などを整理している。ただし、報告書は、これらの事情が死亡にどの程度影響したかを示す統計ではないと明記している。
ここから分かるのは、災害関連死の予防では、避難所の環境改善だけでなく、医療・介護サービスの継続、住民の健康状態の把握、転院や施設移動に伴う負担への対応などが必要になるということである。
2004年の中越地震と2024年の能登半島地震では、被害の規模、季節、地域の人口構成などが異なる。しかし、避難後の生活環境や医療・介護の中断が健康を脅かすという問題は共通している。
避難場所だけでは測れない災害関連死の危険
能登半島地震の事例集では、災害関連死と認定された286人について、死亡直前期の生活環境も整理されている。
病院が98人、介護施設等が84人、自宅等が38人、避難所が32人だった。この分類には、発災前から施設に入所していた場合や、被災後に入院した場合などが含まれる。
内閣府は、死亡直前期の滞在場所が、そのまま災害関連死に影響した場所を示すものではないと注意を促している。例えば病院で死亡した場合でも、避難所や自宅での生活環境の悪化を経て入院した可能性があるためだ。
この分類を「避難所より病院の方が危険だった」というように解釈することはできない。災害関連死に至る過程では、被災前の健康状態、ライフラインの停止、介護者の状況、転院の経緯、避難環境など、複数の事情を確認する必要がある。
重要なのは、支援が必要な人を避難場所によって機械的に分類しないことである。
自宅にとどまっている人が安全とは限らない。介護施設に入所している人でも、停電や断水によって必要なサービスを受けられなくなる可能性がある。逆に、避難所で生活していても、健康状態を把握し、医療や福祉につなぐ仕組みが整っていれば、健康被害を軽減できる場合がある。
避難生活の質を確保するためには、どこで避難しているかだけでなく、本人がどのような支援を必要としているかを把握することが基本となる。
2025年の法改正、災害救助法に「福祉サービスの提供」
中越地震から22年を経た日本の災害対策で、大きな制度上の変化となったのが2025年の法改正である。
2025年5月28日、災害対策基本法等の一部を改正する法律が成立した。同法は6月4日に公布され、7月1日に全面施行された。
改正は2024年の能登半島地震の教訓などを踏まえたもので、国による自治体支援の強化、被災者への福祉的支援、広域避難の円滑化、ボランティア団体との連携などを内容としている。
特に災害救助法では、法律上の救助の種類に「福祉サービスの提供」が追加された。災害対策基本法にも福祉サービスの提供が明記されている。
従来の災害救助法でも、避難所の設置、食料や飲料水の供給、医療、住宅の応急修理などが救助の対象となっていた。改正によって福祉的支援が初めて行われるようになったというわけではない。
今回の変更の意義は、被災者への福祉サービス提供を、法律上の救助として明確にしたことにある。
災害時には、高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児など、一般の避難所生活に特別な配慮を必要とする人がいる。福祉サービスを法律上明確にすることで、必要な支援を公的な救助の仕組みの中で扱いやすくすることが目的とされている。
改正法は在宅避難者や車中泊避難者を含む多様な支援ニーズへの対応も対象としており、避難所だけに支援を集中させない制度へと拡張されている。
もっとも、法律に規定されたことだけで、災害が発生した地域に十分な介護職員や相談支援専門員が直ちに確保されるわけではない。
実際に機能させるためには、自治体と福祉施設、医療機関、専門職団体などの間で、平常時から受け入れ先や支援体制を調整しておく必要がある。
避難生活を支える「福祉」は高齢者だけの問題ではない
災害時の福祉的支援というと、高齢者や障害者を対象とする介護が中心だと考えられやすい。しかし、避難生活で生じる困難は、それだけではない。
例えば乳幼児のいる家庭では、授乳やおむつ交換、子どもの睡眠を確保するための環境が必要になる。障害のある人では、移動や情報取得、意思疎通に関する支援が必要となる場合がある。持病のある人は、薬の確保や継続的な医療につながる手段を失うことがある。
女性や子どもにとっては、着替えやトイレの利用に関するプライバシー、避難所での防犯対策なども生活環境に関係する。
外国人住民については、日本語だけで提供される情報を十分に理解できない場合があり、災害情報や支援制度を利用するうえで言語面の障壁が生じ得る。
こうした困難は、被災者本人の事情だけでなく、避難所や支援制度がどのように設計されているかによっても変わる。
例えば、段差のある場所にしかトイレが設置されていなければ、車いすを利用する人にとっては使用が難しい。避難所の情報が音声でしか伝えられなければ、聴覚障害のある人に届かない可能性がある。
内閣府は2024年12月、避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針や、避難所運営のチェックリスト、トイレの確保・管理ガイドラインを改定した。
避難所の設備や物資の備蓄だけでなく、運営体制、衛生環境、利用者の多様な事情に応じた支援を整理している。
災害に遭った人が、生活のために必要な支援を受けられるかどうかは、単に物資の数量だけでは判断できない。利用者が必要な設備や支援に実際にアクセスできることが、人権保障と結びつく。
災害関連死の認定と遺族への救済制度
災害関連死は、予防の問題であると同時に、亡くなった人の遺族に対する救済制度とも関係する。
「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づく災害弔慰金は、一定の災害によって死亡した人の遺族を対象とする制度である。法律上の要件を満たす場合、生計維持者の死亡については500万円、その他の場合は250万円が支給される。
地震による建物の倒壊や土砂災害などで直接死亡した場合だけでなく、災害による負傷の悪化や避難生活の身体的負担などによって死亡した場合も、災害との因果関係が認められれば災害関連死として扱われる。
ただし、災害後に亡くなったという事実だけで、自動的に災害関連死と認定されるわけではない。死亡に至る経緯と災害との間に相当な因果関係があるかどうかを判断する必要がある。
市町村は必要に応じて審査会を設置し、医療記録や避難生活の状況などを基に審査する。
ここで問題となるのが、避難生活の影響をどのように立証するかという点である。
持病のある人が災害後に亡くなった場合、災害以前の健康状態と、災害後に受けた身体的・精神的な負担を区別して検討する必要がある。一方、もともと病気を抱えていたことだけを理由に、災害との因果関係を否定できるわけではない。
内閣府が2026年1月に公表した能登半島地震の事例集では、認定された事例だけでなく、認定されなかった事例も収録している。
同資料は、自治体が個別の事情を検討する際の参考資料として作成されたものであり、すべての案件に機械的に適用できる一律の認定基準ではない。
遺族が制度を利用する際には、死亡に至る経緯、避難場所の移動、健康状態の変化、医療機関への受診状況などの情報が判断材料となる。
被災者援護協力団体の登録制度、2026年も運用を整備
避難生活を支えるためには、自治体の職員や医療・福祉の専門職だけでなく、民間団体との協力も必要になる。
2025年の災害対策基本法改正では、被災者支援に協力するNPOやボランティア団体などを対象に、「被災者援護協力団体」の登録制度が創設された。
登録制度では、避難所の運営支援、炊き出し、被災家屋の片付けなどに取り組む団体について、活動内容、対応可能な地域、保有する機材などの情報を国が整理し、自治体と共有する。
これにより、災害発生後に支援団体を探し始めるのではなく、平常時から自治体と支援団体が協力関係を築き、必要な支援につなげることを目指している。
内閣府は2026年2月4日、登録制度に関する説明会を開催。同年4月30日には登録申請要領を改訂し、申請手続きを案内している。
被災地では、行政自身が被災することもある。職員や庁舎、通信設備が被害を受ければ、通常の行政サービスを維持しながら被災者の支援を行うことが難しくなる。
こうした状況で、医療、福祉、食事、生活相談などの専門性を持つ団体が事前に連携していれば、災害発生直後から支援活動を組み立てやすくなる。
もっとも、団体を登録すること自体が目的ではない。実際の災害時にどの団体がどの地域で活動できるか、自治体と必要な情報を共有できるか、被災者の個人情報を適切に扱えるかなどが、制度の実効性に関係する。
2026年11月、防災庁の発足へ
国の防災体制も、2026年に大きな転換を迎える。
2026年7月17日、「防災庁設置法」(令和8年法律第61号)が公布された。同年9月25日、細野豪志復興大臣・内閣府特命担当大臣は記者会見で、防災庁の発足日を11月2日とする政令を閣議決定したと説明した。
防災庁は、災害発生前の備えから発災時の対応、復旧・復興までを一貫して担う司令塔機能の強化を目的としている。
また、地方組織となる防災局については、防災庁設置法の公布から2年以内に設置する方針が示された。設置場所や組織体制などは、今後の検討事項となる。
中越地震の経験と結びつけて考えると、国の防災体制を強化することには、複数の意味がある。
一つは、地震や土砂災害によって交通網が寸断された地域に、必要な物資や人員を迅速に派遣することである。
もう一つは、避難生活が長期化した際に、医療や介護、生活環境に関する支援が途切れないよう調整することである。
災害関連死の予防は、地震が発生した直後だけで完結する仕事ではない。避難所での生活から応急仮設住宅への移行、さらに住宅再建や地域への帰還まで、継続して健康状態や生活上の困難を把握する必要がある。
防災庁の発足によって、こうした支援がどこまで改善するかは、組織を設置したという事実だけでは判断できない。自治体との連携、福祉専門職の確保、被災者情報の共有、災害後の健康被害を把握する仕組みなど、具体的な施策とその実施状況を検証する必要がある。
災害対策を人権の問題として考える理由
災害対策は、道路や堤防、建物などの防災施設を整備する政策として理解されることが多い。しかし、災害発生後の生活環境は、生命や健康、プライバシー、教育、社会参加など、人々の基本的な権利に直接影響する。
日本国憲法第25条は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を定めている。ただし、この規定から、特定の避難設備や福祉サービスをすべての被災者が無条件に請求できると直ちに解釈できるわけではない。具体的な支援内容や行政の責務は、災害救助法、災害対策基本法などの個別法令や制度によって定められる。
災害により住居や生活基盤を失った人々を保護し、生活を維持するための支援を提供することは、こうした法制度を通じて具体化されている。
ここでは、形式的に同じ支援を用意することと、個々の被災者が実際に利用できる支援を確保することを区別する必要がある。
例えば、すべての避難者に同じ食事を提供していても、嚥下機能に障害がある人や、食事について医学的な制限がある人には、適切な食事が届かない可能性がある。
全員に同じ場所で寝るよう求めれば、医療機器を必要とする人や、集団生活に困難を抱える人は避難所を利用できない場合がある。
支援を平等に利用できるようにするには、被災者の状況に応じて、必要な調整を行うことが欠かせない。
災害関連死の予防を考えるうえでも、避難者全員に同じ設備を用意したかという問題と、その設備が実際に健康や生活を支えたかという問題は異なる。
2004年の中越地震で避難生活による健康被害が発生したことは、防災対策を施設や物資の整備だけで評価することの限界を示している。
追悼から次世代への伝承、中越メモリアル回廊の取組
中越地震の被災地域では、災害の記憶を次世代へ伝える活動も継続している。
新潟県によると、被災地域には震災の記録や復興の歩みを伝える4施設と3公園が整備され、「中越メモリアル回廊」として結ばれている。
各施設では、災害に関する展示、防災学習、人材育成、地域交流などが行われている。
過去の災害を伝える際には、倒壊した建物や土砂崩れの写真を見せるだけでなく、その後に避難した人々がどのように生活し、何に困り、どのような支援を受けたのかを伝えることにも意味がある。
特に、災害関連死の問題は、地震による直接的な被害の映像や写真だけでは十分に理解できない。避難生活の中で身体に生じる負担や、医療・福祉の利用が難しくなる状況は、記録や証言、統計を組み合わせて説明する必要がある。
長岡市や小千谷市が2026年10月23日に行う追悼行事は、犠牲者を悼むとともに、被災経験を地域の記憶として受け継ぐ機会となる。
山古志の避難生活や車中泊で起きた健康被害など、中越地震から得られた具体的な経験を学ぶことは、次の災害でどのような避難生活支援が必要になるかを考えるための材料となる。
22年後の制度改革、検証すべきは命を守れたかどうか
2004年10月23日の新潟県中越地震では、68人が亡くなり、そのうち52人が災害関連死だった。多数の住民が車中泊を余儀なくされ、山古志村では2,000人を超える村民が全村避難を経験した。
その後の日本では、災害関連死の認定制度に関する情報の整理、避難所の生活環境改善、福祉避難所の整備、在宅避難者や車中泊避難者への支援などが進められてきた。
2025年の災害救助法改正によって福祉サービスの提供が法律上明確になり、2026年には能登半島地震の災害関連死事例集が公表された。11月2日には防災庁が発足する予定となっている。
これらの制度を評価する際には、避難所の数、備蓄した物資、派遣された職員の人数だけでなく、避難生活によって健康を悪化させた人をどれだけ早期に把握できたか、必要な医療・介護につなげられたか、支援を受けられなかった人がいなかったかといった点を検証する必要がある。
災害関連死として認定された人数の増減についても、実際の健康被害の状況だけでなく、認定制度の運用や申請状況が影響するため、単純に人数が減ったことだけで対策の成果を判断することはできない。
2026年10月23日、長岡市と小千谷市では中越地震から22年の追悼行事が行われる。新潟県が記録する68人の犠牲者と52人の災害関連死は、地震発生時の安全確保に加えて、その後の生活を維持することが生命の保護に直結するという事実を伝えている。内閣府が進める福祉的支援の充実と、11月に発足する防災庁の災害対応では、中越地震で明らかになった避難生活の課題を、実際に命を守る制度としてどこまで具体化できるかが検証対象となる。
新潟県「新潟県中越大震災」 URL:https://www.pref.niigata.lg.jp/site/saigai-archive/tyuuetudaishinzai.html
新潟県「10月23日、中越大震災から21年」(2025年10月23日) URL:https://www.pref.niigata.lg.jp/site/bosai/20251023tyuuetsudaishinsai.html
内閣府「特集① 新潟県中越地震から20年 ~被害と復興を振り返る~」 URL:https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/r06/111/special_01.html
新潟地方気象台「平成16年(2004年)新潟県中越地震」 URL:https://www.jma-net.go.jp/niigata/menu/2024project/chuetsu_main.html
長岡市「中越大震災から22年 中越大震災追悼行事を開催」(2026年9月25日更新) URL:https://www.city.nagaoka.niigata.jp/shisei/cate01/sinsai/1023.html
小千谷市「10.23『中越大震災の日』追悼のつどいを開催します」(2026年10月16日更新) URL:https://www.city.ojiya.niigata.jp/soshiki/bousai/tyuetudaisinsaituitounotudoi.html
内閣府「災害関連死事例集」(2026年1月公表分を含む) URL:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/kanrenshijirei.html
内閣府「令和6年能登半島地震において災害関連死として認定された事例及び認定されなかった事例」(2026年1月) URL:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/jirei_r8.pdf
内閣府「令和8年版防災白書 災害対策基本法、災害救助法等の改正」 URL:https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r08/honbun/1b_1s_02_01.html
内閣府「災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和7年法律第51号)」 URL:https://www.bousai.go.jp/taisaku/kihonhou/kihonhou_r7_01.html
内閣府「避難所の生活環境対策」 URL:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/index.html
内閣府「被災者援護協力団体の登録制度」 URL:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/dantai-touroku.html
内閣府「細野復興大臣・内閣府特命担当大臣記者会見要旨」(2026年9月25日) URL:https://www.cao.go.jp/minister/2609_g_hosono/kaiken/20260925kaiken.html
参議院「防災庁設置法案等を議決」(2026年7月13日) URL:https://www.sangiin.go.jp/japanese/ugoki/r8/260713-2.html

