1.仙台大学が2026年10月1日に公表した調査では、15~18歳の2,565人のうち、日本での16歳未満のSNS利用禁止に賛成した割合は34.5%にとどまった。
2.京都府の2026年度調査では、ネット依存傾向がみられる割合が高校生で38.3%。国も10月6日の検討会で、フィルタリングに加えた技術的保護手段を議論した。
3.オーストラリアでは2025年12月から16歳未満のSNSアカウント利用を制限。日本でも子どもの安全確保と、情報へのアクセス、表現の自由、プライバシーを両立させる制度設計が課題となっている。

日本でも進む子どものSNS利用規制の議論
仙台大学の齋藤長行教授が率いる研究室は2026年10月1日、15~18歳の青少年2,565人を対象とした調査報告書「SNSの一律禁止とサービス設計の問題:子ども・若者の声から考える」を公開した。調査では、オーストラリアが導入した16歳未満のSNS利用制限について67.1%が子どもの保護に必要だと回答したが、日本でも同様の禁止措置を設けることに賛成した割合は34.5%にとどまった。子どもを危険から守る必要性を認めることと、法律によって一律に利用を制限することは、必ずしも同じ判断ではないことが示された。
日本政府もSNSなどの利用に伴う青少年の保護について制度的な検討を進めている。こども家庭庁は2026年1月、青少年インターネット環境整備法の在り方等に関する検討ワーキンググループを設置し、7月31日に中間整理報告書を公表した。10月6日の第9回会合では「技術的保護手段の在り方」を議題とし、従来の有害情報の閲覧を制限するフィルタリングだけでなく、スマートフォンのOSなどが提供する利用時間管理やアプリ利用制限の仕組みを含めた検討を行った。
2026年10月23日時点で、日本ではオーストラリアと同様の全国一律のSNSアカウント年齢制限が導入されたわけではない。現行の青少年インターネット環境整備法は、携帯電話事業者などによるフィルタリングの提供や、保護者による適切な利用管理を基本としている。政府の検討では、SNS事業者やOS事業者などの役割をどこまで拡大するのかが論点となっている。
SNS禁止への賛成34.5%、家庭のルール重視は78.3%
仙台大学の調査は2026年3月2日から21日にかけて、民間調査会社に登録する15~18歳を対象に実施された。3,510件の回答から回答時間や内容の整合性などを確認し、2,565件を分析している。
日本で16歳未満のSNS利用を禁止することについて、賛成は34.5%、反対は65.5%だった。これに対して、子どもを守るためにSNSや動画アプリで年齢確認を行う必要があると答えた割合は75.1%に達した。法律よりも家庭で使用ルールを決めることが重要だとする回答は78.3%、自分自身もSNSの利用時間を控えるべきだとする回答は64.2%だった。
利用者が安全対策そのものを拒否しているわけではなく、その方法によって受け止め方が異なることが読み取れる。年齢確認を実施することと、一定年齢未満の利用を全面的に禁止することは異なる措置であり、調査結果も両者を区別して解釈する必要がある。
日本で禁止法が制定されても子どもたちは守らないと思う回答も83.7%に上った。ただし、これは実際の違反率を予測した統計ではない。回答者が想定する制度の実効性についての意識を示している。
調査結果の解釈には注意点もある。回答者は無作為に抽出された全国の青少年ではなく、民間調査会社の登録モニターであり、女性が76.7%を占めた。15歳の回答者は全体の3.8%で、多くは16~18歳だった。したがって、日本の15~18歳全体、まして規制の主な対象となる16歳未満全体の賛否を代表する数値ではない。それでも、制度について判断する際に、実際の利用者が安全と自由をどのように捉えているのかを示す資料となる。
問題は利用時間だけではない アプリの設計そのものに潜むリスク
仙台大学の調査で特徴的なのは、利用者本人の習慣だけでなく、SNSやアプリの設計に着目している点である。
調査では、無限スクロールや自動再生によってやめ時を失い、見続けてしまうことがあると答えた割合が60.8%、通知を受け取ると特に目的がなくてもアプリを開いてしまう経験があるとした割合が55.7%に達した。連続ログインの特典や称号によって利用を続けなければならないと感じる割合も53.1%だった。
これらの機能は、利用者の関心に合う情報を届けたり、サービスの利便性を高めたりする目的にも使われる。しかし、利用の中断を難しくする場合には、睡眠時間や学習時間、日常生活への影響を考慮する必要がある。
こうした機能の設計や初期設定は、主としてサービスを提供する事業者が決める。子どもが自分で通知を停止したり、利用時間を管理したりできる場合でも、その選択肢自体が分かりにくければ、利用者だけで適切に管理することは難しい。
調査では、位置情報が初期設定で有効になっていることに不安を感じる回答が62.0%、閲覧履歴や検索履歴に基づく広告の表示に不快感を持つ回答が48.6%だった。SNSにおけるリスクは、利用時間の長さだけでは説明できない。位置情報や行動履歴の取扱い、知らない相手との接触、誹謗中傷、情報の拡散など、複数の問題が存在する。
利用者を保護する制度には、子ども自身に適切な行動を教えるだけでなく、サービス事業者に対して、安全な初期設定、使いやすい通報機能、利用の中断を容易にする設計などを促す方法もある。こども家庭庁の検討ワーキンググループで事業者の役割が議論されていることは、こうした問題と直接関係する。
京都府調査、ネット依存傾向は高校生38.3%
子どものインターネット利用をめぐる実態は、自治体の調査からも確認できる。
京都府が2026年10月9日に公表した「青少年のインターネット利用状況に関するアンケート調査結果(令和8年度)」では、府内の小学4年生から高校3年生までの児童生徒と保護者、合計28,977人から回答を得た。内訳は小学生3,784人、中学生8,230人、高校生6,453人、保護者10,510人だった。
インターネットの利用に関する8項目の質問を用いた分析では、依存傾向がみられる割合が小学生18.2%、中学生31.2%、高校生38.3%となり、校種が上がるにつれて高くなっていた。ただし、この数字は臨床的にインターネット依存症と診断された児童生徒の割合を示すものではない。
家庭内のルールについては、子どもと話し合って決めている割合が小学生66.4%、中学生72.2%、高校生65.8%だった。ルールを守っている、またはおおむね守っているとする回答は、それぞれ90.8%、82.8%、83.4%となった。府の分析では、子どもと話し合ってルールを決めた家庭の方が、ルールを守れていると答える割合が高い傾向も示された。
もっとも、こうした結果だけで、話し合いがルールの遵守率を高めたと因果関係まで断定することはできない。家庭環境や親子関係、本人の利用目的などが影響している可能性もある。
子どもの参加によってルールへの理解を深める方法は、法律で一律に禁止する措置とは異なる特徴を持つ。ただし、家庭の話し合いだけでSNS上の有害なサービス設計や第三者による加害行為を防げるわけでもない。家庭による利用管理と事業者による安全対策を組み合わせることが、京都府の調査結果から考えられる方向性である。
保護者の56.2%が構造的な規制を要望
保護者の意見を調べた別の研究もある。
国立成育医療研究センターは2026年9月16日、10代の子ども・若者とその保護者を対象とするJAYコホート調査の結果を公表した。保護者による自由記述1,530件を分析したところ、有害コンテンツのフィルタリングやSNS利用制限など、構造的な規制を求める回答が860件(56.2%)あった。
リテラシー教育などの制度改善を求める回答は621件(40.6%)で、要望の内容には重複がある。構造的な規制を求めた回答を詳しくみると、内容に関する制限が625件、機能に関する制限が313件、デバイスの制限が142件だった。
この結果からは、保護者が家庭内の管理だけでなく、国や事業者、学校による対策を求めていることが分かる。ただし、56.2%という数字を、SNSの全面禁止に賛成する保護者の割合と解釈するのは適切ではない。フィルタリングや一部機能の制限も含めた要望だからである。
仙台大学の調査と国立成育医療研究センターの調査は、対象年齢や質問内容、調査方法が異なるため、子どもと保護者の賛否をそのまま比較することはできない。それでも、両調査は、利用者の安全確保を個人や家庭だけに委ねず、サービスの仕組みや制度を見直す必要性を検討する材料となっている。
オーストラリアで始まった16歳未満のSNS制限
海外では、日本より踏み込んだ規制を実施する国もある。
オーストラリアでは2025年12月10日、16歳未満の子どもが対象となるSNSサービスにアカウントを作成し、保有することを制限する制度が施行された。対象にはInstagram、Facebook、TikTok、Snapchat、X、YouTube、Redditなどが含まれる。
ただし、これは16歳未満のインターネット利用全般を禁止する制度ではない。公開コンテンツをアカウントなしで閲覧することは、サービスが認める範囲で引き続き可能である。メッセージサービスや教育に使われるサービスなどにも、対象外とされるものがある。
制度上の義務を負うのは、主としてSNS事業者である。事業者は16歳未満の利用者によるアカウントの作成や保有を防ぐため、合理的な措置を講じなければならない。違反した場合には事業者に高額の民事制裁金が科される可能性があるが、子ども本人や保護者に罰則を科す仕組みではない。
オーストラリアのオンライン安全規制当局eSafety Commissionerは、2026年1月、対象事業者によって16歳未満のアカウント約470万件へのアクセスが削除・停止されたと報告した。ただし、これは措置を受けたアカウント数であり、子どもの心身の健康への効果を証明する数値ではない。
同国では制度の実施状況を検証する調査も進めている。年齢制限によって有害情報への接触や過度な利用を減らせるかという問題に加え、別のサービスへの移動、年齢確認の精度、誤ってアカウントを停止された利用者への対応なども検討対象となる。
日本が制度を検討する際にも、年齢制限による保護の効果と、それによって失われる利用機会を区別して評価する必要がある。
子どもの権利条約は、保護と情報アクセスの双方を保障
SNS利用規制を人権の問題として考えるとき、中心となるのが「子どもの権利条約」である。
日本が批准する同条約は、第12条で子ども自身の意見が尊重される権利、第13条で表現の自由、第16条で私生活や通信に対する不当な干渉からの保護、第17条で多様な情報源へのアクセスについて規定している。
条約は、子どもを危険から守ることと、子どもの自由を認めることを対立する二者択一として扱っていない。有害な情報や暴力からの保護を図りながら、成長や社会参加に必要な情報を得る機会も保障する構造になっている。
国連の子どもの権利委員会が2021年に採択した一般的意見第25号は、デジタル環境における子どもの権利を扱っている。その中では、デジタル環境での表現の自由に対する制限について、合法性、必要性、比例性を満たすべきことなどを示している。
例えば、SNSでいじめや性的搾取に遭う危険性があることは、安全対策を強化する根拠となる。しかし、危険が存在するという事実だけで、あらゆる年齢の子どもに同じ範囲の利用制限が必要になるとは限らない。年齢、発達の程度、サービスの機能、危険の性質、利用を制限した場合の不利益を考慮する必要がある。
特にSNSは、友人同士の交流だけでなく、学校外の居場所、学習情報へのアクセス、趣味の交流、社会的な問題についての意見表明などにも利用される。障害のある子どもや、身近な地域に同じ経験を持つ人が少ない子どもにとっては、オンラインでつながる手段が特別な役割を果たす場合もある。
利用を制限する際には、こうした機会を失う影響も考慮しなければならない。
年齢確認の強化が新たなプライバシー問題を生む可能性
SNSの年齢制限を実効性のあるものにするには、サービス側が利用者の年齢を確認する仕組みが必要になる。しかし、年齢確認の方法によっては、新たな個人情報の収集が発生する。
例えば、身分証明書による確認、顔画像を利用した年齢推定、既存の利用情報に基づく判断などは、取得する情報の種類や精度、利用者に生じる負担が異なる。子どもの安全を確保するために導入した技術が、必要以上の個人情報を集める仕組みになれば、別の権利侵害を招く可能性がある。
仙台大学の調査で、年齢確認に賛成した割合が75.1%だったことは、特定の技術や個人情報の取得方法への賛成まで示すものではない。年齢確認が必要だと考えることと、どのような本人確認方法でも受け入れることは異なる。
このため、制度を設計する際には、年齢を判定するために必要な最小限の情報で対応できるか、取得した情報を他の目的に利用しないか、誤判定が生じたときに訂正や異議申立てができるかなどが具体的な検討事項となる。
国連の一般的意見第25号でも、子どもを保護する技術的な措置と、子どものプライバシーや情報アクセスとの調整が扱われている。安全確保を目的とした仕組みであっても、その運用によって子どもの権利が過度に制限されないようにする必要がある。
こども基本法が定める「子どもの意見の反映」
日本国内の制度では、2023年4月1日に施行された「こども基本法」が関係する。
同法第11条は、国と地方公共団体がこども施策を策定、実施、評価する際、対象となる子どもや養育者などの意見を反映させるために必要な措置を講じることを定めている。
SNSの利用制限は、子どもの日常生活やコミュニケーションの方法に直接影響する政策である。子ども自身の意見を収集し、その結果を制度設計に反映させることは、こども基本法の趣旨とも関係する。
ただし、子どもの意見を聴くことは、多数決によって制度の内容を決めることと同義ではない。安全に関する専門的な知見、保護者の責任、事業者の実務、被害に遭った当事者の経験などを総合的に検討する必要がある。
重要なのは、意見を聴く機会を設けるだけで終わらせず、どのような意見が出され、それを政策上どう扱ったのかを説明することである。
この点では、2026年10月に公表された仙台大学の調査は、青少年の声を制度論議に取り入れるための一つの資料となる。ただし、全国の子どもの意見を把握するためには、年齢や生活環境、利用状況の異なる当事者への調査も必要になる。
「禁止か自由か」を超えた制度設計へ
日本のSNS規制をめぐる議論では、利用者の年齢による制限を設けるかどうかに関心が集まりやすい。しかし、2026年に公表された国内調査と海外の制度を比較すると、年齢だけで線引きする方法のほかにも、安全対策を強化する複数の手段があることが分かる。
子どもが利用できる情報やコミュニケーションの範囲を一律に制限する方法、事業者に安全なサービス設計を促す方法、家庭で話し合ってルールを決める方法、学校で情報リテラシーを学ぶ方法は、それぞれ異なる問題に対応する。どれか一つによって、オンライン上の危険をすべて防止できるわけではない。
制度の実効性を確かめるためには、SNSの利用時間が減少したかだけでなく、有害な情報への接触、いじめや性的被害、睡眠や生活への影響、子ども自身が感じる安心感、情報へのアクセスの変化などを継続的に把握する必要がある。
2026年10月6日のこども家庭庁の検討ワーキンググループでは、技術的保護手段について、従来のフィルタリングに加えた幅広い保護機能や、OS事業者などの役割が論点となった。仙台大学の調査で示された利用者の意見、京都府が確認したインターネット利用の実態、国立成育医療研究センターが把握した保護者の要望は、いずれも制度を検討する際の異なる判断材料となる。
子どもが安全に利用できるデジタル環境を整えるため、こども家庭庁が進める青少年インターネット環境整備法の見直しでは、保護のための規制に加え、子どもの意見を取り入れる仕組みや事業者による安全設計の具体化が検討されている。
仙台大学「SNSの一律禁止とサービス設計の問題:子ども・若者の声から考える」報告書公開(2026年10月1日) URL:https://www.sendaidaigaku.jp/news.html?post=6117
仙台大学齋藤研究室「SNSの一律禁止とサービス設計の問題:子ども・若者の声から考える」調査報告書 URL:https://www.sendaidaigaku.jp/dnt2/_sendaidaigaku/access/nic_img/1/files/20261001-1.pdf
こども家庭庁「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会等」 URL:https://www.cfa.go.jp/councils/internet-kaigi
こども家庭庁「青少年インターネット環境整備法の在り方等に関する検討ワーキンググループ(第9回)」(2026年10月6日) URL:https://www.cfa.go.jp/councils/internet-kaigi/5468bf4a
京都府「青少年のインターネット利用状況に関するアンケート調査結果(令和8年度)」(2026年10月9日) URL:https://www.pref.kyoto.jp/seisho/survey2026.html
国立成育医療研究センター「こどものデジタル環境に関する調査報告」(2026年9月16日) URL:https://www.ncchd.go.jp/press/2026/0916.html
オーストラリアeSafety Commissioner「Social media age restrictions」 URL:https://www.esafety.gov.au/about-us/industry-regulation/social-media-age-restrictions
こども家庭庁「児童の権利に関する条約 全文」 URL:https://www.cfa.go.jp/policies/international/convention/text
国連子どもの権利委員会「General comment No.25(2021) on children’s rights in relation to the digital environment」 URL:https://www.unicef.org/child-rights-convention
e-Gov法令検索「こども基本法(令和4年法律第77号)」 URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/504AC1000000077

