1.カンコー学生工学研究所と感覚過敏研究所が、学校向けカームダウンボックス「カンコー ポピールーム」の販売を開始した。
2.強化ダンボール製で、幅106センチ、奥行95センチ、高さ165センチ。価格は税別20万円で、光や人の視線などの刺激を和らげる。
3.障害者差別解消法では事前的な「環境の整備」と個別の「合理的配慮」は別に整理され、設備を設置しただけで個々の児童・生徒への対応が完了するわけではない。

菅公学生服株式会社の研究機関「カンコー学生工学研究所」と、株式会社クリスタルロードの「感覚過敏研究所」は、学校向けカームダウンボックス「カンコー ポピールーム」の販売を開始した。強化ダンボールを用い、幅106センチ、奥行95センチ、高さ165センチ。価格は20万円(税別・送料込み、北海道・沖縄・離島は別途)で、小中高校、特別支援学校、保健室、相談室、学習支援室、放課後児童クラブ、フリースクールなどへの設置を想定する。
カームダウンスペースは、光、音、人の視線などの刺激から一時的に離れ、心身を落ち着かせるための空間である。今回の商品は入口のカーテンや天井の布によって視線や明るさを調整する構造で、光を完全に遮断するものではない。同社は感覚過敏研究所所長の加藤路瑛氏の助言や、当事者・利用者の意見を取り入れて改良したとしている。品川区内の小学校での試行では、授業への参加を続けることが難しかった児童が約10分利用した後に授業へ戻った事例などを教員のコメントとして紹介している。これは一校での活用事例であり、製品の効果を一般化するデータとは分けて扱う必要がある。
制度上のポイントは、「環境の整備」と「合理的配慮」を同一視しないことである。障害者差別解消法では、不特定多数の障害者を主な対象として施設・設備を改善し、情報アクセシビリティや職員研修などをあらかじめ整える措置を「環境の整備」としている。これに対して合理的配慮は、個々の障害者が実際に直面する社会的障壁について、本人との建設的対話を通じ、過重な負担とならない範囲で必要な変更・調整を行うものだ。2024年4月1日からは民間事業者についても合理的配慮の提供が法的義務となり、政府は環境の整備と合理的配慮を「両輪」として進める考え方を示している。
この整理に従えば、学校にカームダウンスペースを常設することは、刺激に困難を抱える児童・生徒が利用しやすい環境を事前に整える措置として理解できる。ただし、感覚過敏の内容は人によって異なり、必要なのが照明の調整なのか、座席変更なのか、イヤーマフの使用なのか、別室での休息なのかは個別に判断する必要がある。「ボックスを設置したので合理的配慮は済んだ」という運用では、本人の意思や具体的な困難が置き去りになる。
運用方法にも注意が要る。本人が自ら利用を選べる休息場所として使うのか、教員が授業から離す場所として使うのかでは意味が異なる。利用時間、安全確認、授業へ戻る方法、周囲の児童への説明、本人や保護者の意向をどう確認するかまで設計して初めて、設備が教育参加を支える環境になる。カンコー学生工学研究所と感覚過敏研究所は8月20日に全国の教員向け展示体験会と講演会を予定しており、製品そのものに加えて学校での具体的な運用方法をどう示すかが、導入後の実効性を左右する。
菅公学生服株式会社「学校での『合理的配慮』と『環境調整』を具体化する一手、学校向けカームダウンボックスを販売開始」
URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000262.000085588.html
内閣府「令和6年版障害者白書 改正障害者差別解消法の施行」
URL:https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r06hakusho/gaiyou/h01.html

