1.出入国在留管理庁は9月30日、特定技能外国人に日本語能力「B1相当以上」を求める新基準について、2027年4月1日からの適用範囲を公表した。
2.特定技能2号のほか、バス・タクシー運送業や鉄道分野の一部の特定技能1号が対象となる。在留資格の変更・更新申請への適用時期は未定。
3.日本語能力の確保が労働者の安全や職業生活に関わる一方、学習機会の格差が在留資格や家族生活の選択肢を狭めない制度運用も課題となる。

2027年4月から新たな日本語能力要件
出入国在留管理庁は2026年9月30日、在留資格「特定技能」における日本語能力水準「B1相当以上」の確認開始時期を公表した。2027年4月1日以降の在留資格認定証明書交付申請から、新たな基準を適用する。対象は熟練した技能を持つ外国人が取得する「特定技能2号」と、「特定技能1号」のうち自動車運送業分野のバス・タクシー運送業区分、鉄道分野の運輸係員区分。すべての特定技能1号外国人に一律に適用する変更ではない。
従来の日本語試験とは異なる「B1」
特定技能2号では、従来、日本語能力の試験等による確認は原則不要だった。今回の変更は、2025年3月11日に閣議決定された基本方針に基づくもの。特定技能1号の対象3業務区分については、2026年1月23日の分野別運用方針により、日本語能力試験「N3以上」から「B1相当以上」への変更が決まった。
文化庁の「日本語教育の参照枠」でB1は、仕事や学校など身近な話題について、共通語による説明の主要点を理解し、自分の経験や考えをある程度説明できる段階を指す。従来の日本語能力試験と評価の体系が異なるため、N3とB1を単純に同じ水準として扱うことはできない。
長期就労と家族生活にも関わる制度変更
特定技能1号は通算在留期間が原則5年以内で、家族帯同も原則認められない。これに対し、特定技能2号には通算在留期間の上限がなく、一定の条件で配偶者や子どもの帯同も可能となる。
つまり、2号への移行は、外国人労働者にとって職業上の昇格にとどまらず、日本で家族と生活を築くための選択肢にも関係する。日本語能力を新たな要件とすることには、職場や地域での意思疎通を支える側面がある。ただし、技能や実務経験を備えていても、語学学習の機会を十分に得られなければ、長期的な就労への移行に支障が生じる可能性がある。
企業にも日本語教育を支える責任
日本語能力の向上を外国人本人だけの責任として扱うことには問題がある。2019年施行の「日本語教育の推進に関する法律」第6条は、外国人等を雇用する事業主に対し、本人と家族への日本語学習機会の提供などに努めることを定めている。
特定技能1号では、受入れ機関が日本語学習の機会提供や生活相談などを盛り込んだ支援計画を実施する仕組みもある。新基準の導入に際しては、勤務時間と両立できる学習環境、受講費用、試験情報へのアクセスが実務上の検討事項となる。日本語能力を向上させる施策と、外国人が理解できる言語で労働条件や権利を説明する取組は、区別して進める必要がある。
在留資格の変更・更新時の扱いは未定
出入国在留管理庁が今回明確にしたのは、2027年4月1日以降の在留資格認定証明書交付申請への適用である。日本国内で働く外国人が行う在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請については、10月8日時点で検討中とされている。既に日本で働いている人に、同日から一律に新基準が適用されると解釈するのは正確ではない。
2027年4月1日には、技能実習制度に代わる育成就労制度も施行される。出入国在留管理庁には、新旧制度をまたぐ外国人本人や受入れ企業が進路を判断できるよう、変更・更新申請の取扱いを明確にする作業が残る。日本語能力の確認だけでなく、学習機会を確保できる環境が整っているかも、新基準の運用を検証する際の論点となる。
出入国在留管理庁「日本語能力水準『B1相当以上』の確認開始時期について」
URL:https://www.moj.go.jp/isa/03_00198.html
出入国在留管理庁「特定技能制度」
URL:https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html
出入国在留管理庁「特定技能1号外国人支援・登録支援機関について」
URL:https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/supportssw.html
出入国在留管理庁「特定技能総合支援サイト・在留資格『特定技能』とは」
URL:https://www.ssw.go.jp/about/visa/
文化庁「日本語能力自己評価ツール『にほんご チェック!』」
URL:https://www.nihongo-check.bunka.go.jp/befChk
文化庁「日本語教育の推進に関する法律の施行について」
URL:https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/shokan_horei/other/suishin_houritsu/1418260.html

