中野区がDV防止講座 精神的暴力と支配の構造、被害者が離れられない理由

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この記事のポイント

1.中野区は11月16日、DVの背景にある「パワーとコントロール」をテーマにした暴力防止講座を開催する。 2.2024年施行の改正配偶者暴力防止法では、保護命令制度の対象や発令要件が拡大された。 3.DV被害者の支援では、暴力の認識だけでなく、住居、経済的自立、子どもの安全など生活全体への対応が課題となる。

中野区の暴力防止に関する講座「これってDV?身近な人間関係から考える暴力と支援」

支配関係からDVを理解する講座

東京都中野区は2026年11月16日、中野区役所6階会議室で暴力防止講座「これってDV?身近な人間関係から考える暴力と支援」を開催する。時間は午後6時30分から8時30分まで。会場30人、オンライン50人の計80人を募集し、参加費は無料。申し込みは10月21日から11月13日まで受け付ける。

講師は公認心理師・精神保健福祉士の千野洋見氏。2004年からNPO法人女性ネットSaya-Sayaの活動に関わり、DV被害を受けた母親と子どもを対象とする心理教育プログラム「びーらぶ」や、若年層向け暴力防止プログラム「チェンジ」の開発・実践などに携わってきた。

講座では、DVのさまざまな形態、DVと夫婦げんかの違い、被害者の心理、身近な人への声のかけ方などを扱う。中心となる概念は、相手の行動や判断を支配する「パワーとコントロール」である。

暴力は身体への攻撃だけではない

DVは殴る、蹴るといった身体的暴力だけを指すものではない。怒鳴る、侮辱する、交友関係を制限する、生活費を渡さない、性的な行為を強要するなど、精神的、経済的、性的な暴力も含まれる。

こうした行為が重なると、被害者は自分で生活を選択する自由を失いやすくなる。

例えば、交友関係を制限されれば相談相手を失い、経済的に支配されれば転居や別居のための費用を確保しにくくなる。スマートフォンや行動を監視されている場合には、専門機関へ相談すること自体が危険を伴う。

DVを個別の暴力行為だけでなく、被害者の自由を奪う支配関係として捉える理由はここにある。

夫婦げんかとDVは何が違うのか

夫婦や交際相手の間では、生活上の問題や価値観の違いから意見が対立する場合がある。意見の衝突自体が直ちにDVになるわけではない。

しかし、一方が脅迫や威圧を繰り返し、相手が反論や拒否をすることを難しくしている場合には、対等な意見の衝突とは異なる問題が生じている。

重要なのは、誰が大きな声を出したかだけではなく、継続的な支配関係があるか、相手に恐怖を与えているか、行動の自由が制限されているかという点である。

ただし、継続的な支配関係が認められない場合でも、個別の暴行や脅迫が違法行為となることはある。DVの関係性を理解することと、個々の行為の違法性を判断することは区別する必要がある。

改正配偶者暴力防止法が保護命令を拡充

2024年4月1日に施行された改正配偶者暴力防止法では、接近禁止命令などの対象となる脅迫に、従来の生命・身体に対する脅迫に加えて、自由、名誉、財産に対する脅迫が追加された。

発令要件も、生命または身体への重大な危害のおそれから、生命または心身への重大な危害のおそれへと拡大された。接近禁止命令の期間は6か月から1年に延長され、SNSを利用した一定の迷惑行為も電話等禁止命令の対象に加えられた。

この改正は、身体的な暴力を受けていない場合でも、脅迫や支配によって深刻な精神的被害が生じ得ることに対応するものである。

もっとも、精神的苦痛があればすべて保護命令を受けられるわけではない。発令には法律上の要件を満たす必要があり、制度の対象となる当事者の関係にも条件がある。

DV家庭で暮らす子どもへの影響

DVのある家庭では、暴力を直接受けた人だけでなく、子どもへの影響も考えなければならない。

児童虐待防止法では、子どもの前で配偶者に暴力を振るう行為などが心理的虐待に含まれる。いわゆる面前DVである。

子ども自身が殴られていなくても、家庭内で暴力を目撃することによって恐怖や不安を抱き、家庭を安心できる場所として感じられなくなる場合がある。

そのため、DV被害者への支援と子どもの安全確保を切り離して考えることはできない。避難後の保育や就学、心理的支援、生活環境の安定などを含めて対応する必要がある。

「なぜ逃げなかったのか」という問いの限界

DV被害者に対し、「早く離れればよかった」「なぜ相談しなかったのか」と問いかけることがある。しかし、その問いには、被害者が自由に行動できる状態にあるという前提が含まれている。

実際には、収入の不足、住居の問題、子どもの養育、加害者による報復への恐れなど、離れることを難しくする事情が重なっている場合がある。

また、長期間にわたる支配や威圧により、自分の判断に自信を持ちにくくなる人もいる。

安全確保のために避難を提案することは必要であっても、本人の事情を十分に把握せず、直ちに別れることを唯一の選択肢として押し付けるべきではない。

支援では、本人の意思を尊重しながら、利用できる制度や安全な方法を説明することが基本となる。

周囲の人にできること

身近な人からDVについて相談された場合、被害者の説明を否定せず、まず安全を確認することが重要となる。

一方、加害者を直接説得したり、本人の了承なく相談内容を第三者に伝えたりすると、状況を悪化させる可能性がある。

専門的な支援として、DV相談ナビ「#8008」やDV相談プラスなどが設けられている。相談の方法は本人の安全な連絡環境を踏まえて選ぶ必要があり、差し迫った危険がある場合には警察への通報も考えられる。

中野区の講座は、DVを家庭内の個人的な問題として扱うのではなく、被害者の自由と安全がどのように制限されるかを理解し、支援する側の対応を考える機会となる。

出典

中野区「暴力防止に関する講座『これってDV?身近な人間関係から考える暴力と支援』を開催します」
URL:https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/danjyo/danjyo/event/20261116jbb.html

内閣府男女共同参画局「配偶者暴力防止法の令和5年一部改正法情報」 URL:https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/32.html

内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査(令和5年度調査)」 URL:https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/r05_boryoku_cyousa.html

こども家庭庁「児童虐待防止対策」
URL:https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai

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人権ニュース編集部

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