1.奈良県教育委員会が12月14日、「ハンセン病問題を終わったことにしないために」をテーマに人権教育啓発講座を開催する。
2.ハンセン病回復者や支援関係者が登壇し、隔離政策の歴史だけでなく現在につながる人権課題として扱う。
3.2026年は「らい予防法」廃止から30年。法律の廃止と、長期間の隔離政策による被害の回復は別の時間軸で進んでいる。

らい予防法廃止30年の奈良で開催
奈良県教育委員会は12月14日午後1時30分から4時30分まで、奈良県立教育研究所で2026年度「人権教育啓発講座」を開催する。テーマは「ハンセン病問題を終わったことにしないために~今も続く人権課題として考える~」。県は、ハンセン病問題を過去の出来事として完結させず、現在につながる問題として考える内容を掲げている。
講師には「架け橋 長島・奈良を結ぶ会」の中森幹也氏、ハンセン病関西退所者原告団「いちょうの会」共同代表の岡山育夫氏(仮名)、社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会ハンセン病回復者支援センターのコーディネーター加藤めぐみ氏が登壇する。行政や研究者だけではなく、回復者本人と支援現場の経験を含む構成となっている。
法律がなくなっても被害は同時には消えない
日本の「らい予防法」は1996年に廃止された。2026年は廃止から30年に当たる。長期間続いた隔離政策によって、患者・回復者は家族や地域から切り離され、就学、就労、結婚など生活のさまざまな場面で偏見や差別の影響を受けた。法律を廃止することは制度上の差別的な取扱いを終わらせるために不可欠だったが、それによって長年形成された社会的偏見や失われた家族関係まで同じ日に回復したわけではない。
そのことは、現在も国がハンセン病元患者の家族を対象とする補償制度を運用していることにも表れている。厚生労働省は、国の隔離政策により元患者本人だけでなく家族も社会から厳しい偏見や差別を受けたとして補償制度を設けており、現在の請求期限は2029年11月21日となっている。2026年時点でも救済手続が続いていることは、制度廃止と被害回復の時間軸が異なることを具体的に示す。
「昔の誤った政策」と覚えるだけでは足りない
ハンセン病は治療可能な感染症であり、かつて行われた強制的な隔離を必要とする疾病ではない。それでも、人に感染歴や家族歴のラベルを付け、社会生活から遠ざける偏見が再び起きないためには、医学知識だけでなく、なぜ行政制度と社会の偏見が長期間にわたり結び付いたのかを検証する必要がある。
奈良県が講座名に「終わったことにしないために」と掲げた意味は、過去の制度を記憶することだけではなく、その制度が回復者や家族の人生に残した影響まで含めて理解する点にある。らい予防法廃止30年となる2026年、奈良県教育委員会は回復者と支援者の声から、法制度の廃止後にも続く被害回復を人権教育の主題として扱う。
奈良県「令和8年度 人権教育啓発講座」
URL: https://www.pref.nara.lg.jp/n169/p117007.html
厚生労働省「ハンセン病に関する情報ページ」
URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hansen/
厚生労働省「ハンセン病元患者家族に対する補償金について」
URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hansen/kazokuhoshou_hoshoukinn.html
ハンセン病問題
URL: https://jinken-news.com/glossary/hansen-disease-issue/
らい予防法
URL: https://jinken-news.com/glossary/leprosy-prevention-law/
ハンセン病問題の解決の促進に関する法律
URL: https://jinken-news.com/glossary/hansen-disease-resolution-promotion-law/
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