【連載 教員性暴力防止指針の改訂】最終回 採用時データベース活用を徹底、日本版DBSとの関係も焦点に

教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針

文部科学省の改訂指針は、教育職員等の任命・雇用時における確認手続きについても、運用の徹底を求めている。教育職員等による児童生徒性暴力等防止法では、過去に児童生徒性暴力等を行ったことにより教員免許状が失効または取上げとなった者が再び教壇に立つことを防ぐため、特定免許状失効者等に関するデータベースを国が整備し、教育職員等を任命または雇用する際に活用することが義務付けられている。この特定免許状失効者管理システムは、令和5年4月1日から稼働しており、文部科学省の公表によれば、令和8年4月1日現在、特定免許状失効者等の登録件数は2,918件、システム利用者登録件数は10,420件となっている。

今回の改訂では、データベースの活用対象がより明確化された。基本指針では、教育職員等を任命または雇用する際のデータベース活用は、国公私立の別、常勤・非常勤、任期付任用、臨時的任用、会計年度任用職員、フルタイム・パートタイムといった採用形態に左右されないことが整理されている。さらに、人事交流や行政職から教育職員等への採用、臨時的任用職員や会計年度任用職員の任用期間更新の際にも活用義務があるとされている。学校現場では、正規教員だけでなく、多様な職種・雇用形態の人材が児童生徒と接するようになっており、採用時確認の対象を狭く解釈しないことが重要となる。

幼保連携型認定こども園や幼稚園型認定こども園に関する整理も実務上重要である。改訂指針では、教育職員等を任命または雇用しようとするときは教育職員等による児童生徒性暴力等防止法に基づくデータベースを、保育士を任命または雇用しようとするときは児童福祉法に基づくデータベースを、それぞれ活用する必要があるとされた。制度が複数並立する中で、学校種や職種によって参照すべきデータベースが異なるため、採用担当者には確認漏れを防ぐ実務設計が求められる。特に、認定こども園のように教育と保育の機能が重なる施設では、職名だけで機械的に判断するのではなく、児童生徒等と接する業務の実態を踏まえた確認が必要になる。

今回の改訂は、いわゆる日本版DBSとの関係でも注目される。通知では、こども性暴力防止法に基づき、同法が施行される令和8年12月25日以降、従事者が対象業務への従事を開始するまでに特定性犯罪事実該当者であるか否かの確認を行うことになる一方、内定等の後に実施する犯罪事実確認とは別に、引き続き内定前にデータベースを活用する必要があるとされた。つまり、教員性暴力等防止法上のデータベースと、こども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認は、片方がもう片方を単純に代替する関係ではない。文部科学省とこども家庭庁は、両制度の補完・連携のあり方について、制度上の整理を含めて検討を進めるとしている。

人権の観点からは、子どもの安全確保と個人情報保護の双方を慎重に扱う必要がある。データベースには、懲戒処分、免許状失効、児童生徒性暴力等に関する極めて機微な情報が含まれるため、閲覧権限、端末管理、記録の保存・廃棄、安全管理措置を厳格にすることが欠かせない。一方で、確認を怠った結果、過去に児童生徒性暴力等を行った者が再び子どもと接する業務に就けば、学校設置者や任命権者の責任は重い。改訂指針は、改名や免許状偽造により過去の免許状失効歴を隠して採用選考に臨む可能性にも触れ、経歴確認や免許状の有効性確認の必要性を示している。採用実務の核心は、形式的な検索作業ではなく、子どもと接する職務に就く者の適格性を、制度と組織の責任で確認する点にある。

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