愛知県、カスハラ対策を業界別へ 卸売・小売で10月ワークショップ

この記事のポイント

1.愛知県が業界団体向けセミナーを9月18日と11月13日、小売業・卸売業向けワークショップを10月28日に開催する。
2.県条例は2025年10月から施行済みで、2026年10月1日には改正労働施策総合推進法による事業主のカスハラ防止措置も義務化される。
3.業種別対策では従業員保護だけでなく、正当な苦情や障害者からの合理的配慮の申出をカスハラと混同しない判断基準も課題となる。

愛知県のカスタマーハラスメント防止対策セミナー

愛知県は8月13日、カスタマーハラスメント防止対策を業界ごとに具体化するため、業界団体向けの「カスハラ防止対策推進セミナー」と、小売業・卸売業の事業者を対象とするワークショップ形式セミナーの参加者募集を始めた。業界団体向けは9月18日に名古屋市のウインクあいち、11月13日に安城市のKAGAYAKI SQUAREで開催し、各回50人。苦情対応、組織体制、難クレームの類型、ケーススタディなどを扱う。小売・卸売向けは10月28日にウインクあいちで50人を対象に行い、自社マニュアル作成の留意点を学んだ上で、参加企業が業界特有の課題を持ち寄る。

開催時期を見ると、今回の事業は二つの制度の接点にある。愛知県は2025年10月1日に「愛知県カスタマーハラスメント防止条例」を施行し、県、事業者、就業者、顧客等の責務を定めた。相談窓口やアドバイザー派遣に加え、業界団体や企業が利用できる共通マニュアル、事例集、自社マニュアルのひな型も整備している。これに加えて2026年10月1日からは、改正労働施策総合推進法により、全国の事業主にカスハラ防止のための雇用管理上の措置が義務付けられる。9月18日の業界団体向けセミナーは国の義務化直前、10月28日の小売・卸売向けワークショップは義務化後に開かれることになる。

国の制度が事業主単位で方針の明確化、相談体制、事実確認、被害者への配慮、再発防止などを課すのに対し、愛知県が今回「業界団体」にも働きかける点は実務上の特徴といえる。顧客との接点は、店舗販売、卸取引、医療、交通、行政窓口などで大きく異なる。特に小規模事業者では、自社だけで判断基準や対応マニュアルを作る人的余力が限られる場合があり、業界団体が典型事例や対応手順を整理すれば、加盟企業が共通基準を持ちやすくなる。愛知県も共通マニュアルを出発点として、それぞれの業界・事業者の実態に応じた内容へ編集する仕組みを用意している。

ただし、対策の強化を「顧客からの強い要求を断りやすくする仕組み」だけにすると別の問題が生じる。厚生労働省の指針では、カスハラは顧客等の言動のうち、社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するものとされ、三つの要素をすべて満たす必要がある。対策を講じる際には消費者の権利に加え、障害者差別解消法に基づく合理的配慮にも留意するよう明記された。商品の不具合への説明要求や、障害のある利用者からの必要な調整の申出まで「カスハラ」と処理しないため、現場担当者だけでなく管理職が判断できる基準を整える必要がある。

愛知県のセミナーは、条例の周知段階から、業界別の運用を作る段階へ対策を進めるものとみることができる。特に10月28日の小売業・卸売業向けワークショップでは、参加者同士が業界固有の課題を共有するとしており、そこで得られた論点が個社のマニュアルだけにとどまらず、業界内で利用できる判断基準や対応手順へつながるかが、県の取組を検証する材料となる。

出典

愛知県「カスタマーハラスメント防止対策セミナーの参加者を募集します」
URL:https://www.pref.aichi.jp/press-release/kasuhara-seminar2026.html

愛知県「あいちカスハラ防止対策ナビ 県の取組」
URL:https://no-customerharassment.pref.aichi.jp/action/

厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662576.pdf

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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