行政オンライン化で残る申請格差 紙・対面の代替経路

この記事のポイント

1.マイナポータルの次期オンライン申請サービスは、2026年9月以降の本格運用を予定している。
2.デジタル手続法はオンライン申請を可能にする法律であり、紙申請を一律に廃止するものではない。
3.端末を使えない人への操作支援と、紙・郵送・対面による代替経路は分けて検証する必要がある。

行政手続のオンライン化が生む排除

デジタル庁は2026年9月以降、マイナポータルの次期オンライン申請サービスを本格運用する予定だ。先行実証には横須賀市、裾野市、熊本市、菊池市、日出町、都城市が参加し、出生届、児童手当、国民健康保険の加入・脱退などを対象としている。国は子育て・介護関係の26手続を含む行政手続のオンライン化を各自治体に促しており、自宅から申請できる仕組みは、移動や窓口待ちの負担を減らす。

ただし、「デジタルファースト」は「デジタル以外を認めない」という意味ではない。デジタル手続法は、書面によることが定められた申請も、所要の規則を整備すればオンラインで行える仕組みを設けた法律であり、紙申請を一律に廃止する法律ではない。紙、窓口、郵送を残すかは、個別法令や自治体の運用によって異なる。デジタル社会形成基本法第8条も、地理的制約、年齢、障害の状態、経済的状況などによる利用機会・能力の格差を是正する施策を国に課している。

行政サービスを利用する人の環境は同じではない。手続によっては、対応するスマートフォン、通信回線、マイナンバーカード、暗証番号、メールアドレスが事実上の利用条件となる。端末を持たない人、家族から端末を管理されているDV被害者、安定した住居や通信契約のない人、日本語の入力が難しい人には、オンライン化が別の障壁になり得る。視覚・聴覚・知的障害などにより画面操作や説明の理解に支援が必要な場合、本人から意思の表明があり、過重な負担とならない範囲で、行政機関には障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供義務がある。入力補助、読み上げに対応した様式、筆談や手話、別の申請方法の提示などが、個別事情に応じた対応の候補となる。

2026年7月21日閣議決定の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」は、デジタル化への不安を感じる人が約45%に上るとの調査を示し、2026年3月時点で約5万9千人のデジタル推進委員が利用支援に当たるとした。全国約2万4千の郵便局を、オンライン行政相談や手続支援の拠点として活用する方針も盛り込まれている。しかし、操作方法を教える支援だけでは、端末を持てない人や第三者に申請内容を見られたくない人の問題は解消しない。支援付きのデジタル経路と、デジタルを使わない経路は分けて設計する必要がある。

オンライン化率だけを成果指標にすると、申請を途中で断念した人や、窓口へ戻った人は把握されにくい。自治体が各手続について、紙、郵送、代理申請、窓口での入力補助の可否を明示し、利用失敗、補正、相談の件数を検証すれば、制度からこぼれる場面を特定できる。デジタル庁が2026年9月以降に始める次期オンライン申請サービスでは、画面の使いやすさだけでなく、横須賀市などの実証自治体が残す対面・書面経路と、その利用実績も検証対象となる。

出典

デジタル庁「行政手続のオンライン化」
URL:https://www.digital.go.jp/policies/administrative_procedures_online

デジタル庁「自治体での子育て・介護関係の26手続のオンライン化取組状況に関するダッシュボード」
URL:https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/administrative_procedures_online

デジタル庁「令和8年 デジタル社会の実現に向けた重点計画」
URL:https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/5ecac8cc-50f1-4168-b989-2bcaabffe870/208168e8/20260721_policies_priority_outline_03.pdf

e-Gov法令検索「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000151

e-Gov法令検索「デジタル社会形成基本法」
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000035

e-Gov法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000065

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URL:https://jinken-news.com/glossary/goriteki-hairyo/

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人権ニュース編集部

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