新潟県、拉致問題の授業づくり研修 曽我ひとみさんと対談

この記事のポイント

1.新潟県が8月7日、県内の教職員を対象に拉致問題の授業づくりを学ぶセミナーを開催する。
2.曽我ひとみさんと上越教育大学の清水雅之教授による対談、小学校での授業実践紹介を組み合わせる。
3.拉致被害を重大な人権侵害として伝える一方、北朝鮮の一般市民や在日朝鮮人への差別を生まない授業設計も課題となる。

新潟県の「教員向け拉致問題啓発セミナー」

新潟県は2026年8月7日、県内の教育機関の教職員を対象とする「教員向け拉致問題啓発セミナー」を、上越教育大学学校教員養成・研修高度化センター(上越市西城町)とオンラインで開催する。時間は午後1時30分から3時までの90分で、参加は無料。県・市町村教育委員会の職員も対象に含み、7月27日から8月5日まで追加募集を行う。大学事務局がある山屋敷町のメインキャンパスとは会場が異なる。

セミナーでは、新潟県知事政策局国際課拉致問題調整室が拉致問題の概要を説明した後、帰国拉致被害者の曽我ひとみさんと上越教育大学の清水雅之教授が対談する。後半は、清水教授が授業づくりのポイントを解説し、糸魚川市立西海小学校の吉田丈教諭が実践事例を紹介する。当事者の経験を聴くだけで終えず、児童・生徒に何を、どの順序で伝えるかまで扱う構成である。

清水教授は小学校教諭を16年間務めた後、大学教員となった。曽我さんとの交流を重ね、国や新潟県の事業で、曽我さん母娘の拉致現場視察を盛り込んだ啓発セミナーにも携わってきた。現在は上越教育大学の「新潟次世代教員養成プログラム」で、教育現場から拉致問題を考え、記憶の風化を防ぐ取組を進めている。

新潟県は2025年3月28日、「新潟県拉致問題等の啓発の推進に関する条例」を公布、施行した。条例第4条は、学校その他の教育機関に対し、児童・生徒等の発達段階に応じて、拉致問題等への関心と理解を深める啓発に努めることを定める。県、市町村、教育機関の連携体制や、11月1日から30日までの「新潟県拉致問題等啓発月間」も規定しており、今回の研修は教員が条例上の役割を授業へ移すための実務的な機会となる。

政府も2018年度から小中学校、高校などの教員を対象とする研修を実施し、学習指導案集や講義映像を学校向けに提供している。新潟県の研修は、全国共通の教材に加え、曽我さんの証言、上越教育大学の教員養成、糸魚川市立西海小学校の授業実践を一つのプログラムに組み込む点に地域性がある。

拉致は、本人の自由と安全を奪い、家族との生活を長期にわたって断つ重大な人権侵害である。同時に、授業では北朝鮮当局の行為と、北朝鮮の一般市民や在日朝鮮人を混同しない整理が欠かせない。政府の学習指導案にも、市民や在日朝鮮人に責任はないことを押さえ、差別を生み出さないよう配慮する記述がある。新潟県知事政策局国際課と上越教育大学には、被害の事実、当事者の尊厳、児童・生徒の発達段階、差別防止を同じ授業設計の中で扱うための具体例を、8月7日の研修で示す役割がある。

出典

新潟県「『教員向け拉致問題啓発セミナー』を開催します」
URL:https://www.pref.niigata.lg.jp/site/rachi/r8-seminorforteacher.html

参考資料 新潟県「新潟県拉致問題等の啓発の推進に関する条例について」
URL:https://www.pref.niigata.lg.jp/site/rachi/rachi-jourei.html

参考資料 政府拉致問題対策本部「学習指導案集・通知」
URL:https://www.rachi.go.jp/jp/shisei/gakushusidou.html

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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