ビジネスと人権報告書を再改訂へ 法務省委託で入札

この記事のポイント

1.人権教育啓発推進センターは、令和8年度法務省委託「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書改訂業務の入札を実施する。
2.対象となるのは、企業研修で使うことを想定した「ビジネスと人権」に関する既存報告書の改訂業務とみられる。
3.2025年12月の政府行動計画改定を受け、企業向け啓発教材を最新の制度・国際基準に合わせる狙いがある。

入札のイメージ図

公益財団法人人権教育啓発推進センターは、令和8年度法務省委託「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書改訂に関する入札を実施する。入札件名は、既存の報告書を新たな制度状況に合わせて改訂する業務を示しており、入札は2026年7月13日午前11時に行うと案内されている。参加希望者には、7月10日までの事前手続が求められている。

ここでいう「調査研究」は、単発のアンケート調査だけを指すものではない。既存の「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書は、企業が人権尊重責任を理解し、社内研修や従業員向け啓発に使うための教材として作られてきた。人権ライブラリーは、令和2年度に法務省委託で同報告書を制作し、企業が従業員に対して「ビジネスと人権」をテーマとする研修を実施する際に活用できる資料だと説明している。

既存教材は、令和5年度に改訂版として公開されている。人権ライブラリーの掲載資料では、「報告書(詳細版)」「報告書(概要版)」「『ビジネスと人権』への対応_手引PDF」「企業研修用の投影資料PPT」が並び、いずれも法務省人権擁護局の企画、人権教育啓発推進センターの制作資料として示されている。今回の入札は、この教材群の中心にある報告書を、令和8年度版として改訂する調達と読むのが自然である。

報告書の内容は、企業活動と人権を結び付ける基礎資料である。概要版の目次には、人権とは何か、企業による人権対応への注目、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」、国別行動計画、企業が尊重すべき人権の主体であるライツホルダー、人権リスク、企業による取組の在り方、企業事例などが並ぶ。つまり、企業の法務・総務・人事・調達部門だけでなく、現場管理職や研修担当者にも使わせる前提の啓発教材である。

改訂の背景には、政府の「ビジネスと人権」に関する行動計画の更新がある。内閣官房の関係府省庁施策推進・連絡会議は、2025年12月24日の第14回会議資料として「行動計画の改定版の概要」と「行動計画(改定版)」を掲載している。旧教材が2020年策定の行動計画を前提にしている以上、2025年12月の改定後は、国内行動計画、責任あるサプライチェーン、人権デュー・ディリジェンス、救済へのアクセスに関する記述を見直す必要が生じる。

人権上の論点は、教材改訂を単なる行政資料の更新として扱わない点にある。企業活動は、正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、取引先従業員、顧客、地域住民、海外サプライチェーン上の労働者にも影響を及ぼす。報告書が最新の制度、国際基準、企業事例を反映すれば、企業研修で扱う人権リスクの範囲も更新される。人権教育啓発推進センターの入札は、法務省委託の啓発教材を、次期行動計画の下で使える形に整える作業となる。

出典

公益財団法人人権教育啓発推進センター「令和8年度法務省委託『ビジネスと人権に関する調査研究』報告書改訂に関する入札」
URL:http://www.jinken.or.jp/archives/30855
人権ライブラリー「委託人権啓発教材(法務省委託)」
URL:https://www.jinken-library.jp/database/materials.php
人権ライブラリー「『ビジネスと人権に関する調査研究』報告書〔概要版〕を活用した実践セミナー」
URL:https://www.jinken-library.jp/news/detail/96819/
内閣官房「ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議」
URL:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/business_jinken/index.html

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

人権ニュース編集部をフォローする
ビジネス
シェアする
タイトルとURLをコピーしました