厚労省、労災6月速報を公表 死傷者数は4.5%増

この記事のポイント

1.厚生労働省は2026年6月30日、令和8年6月速報値の労働災害発生状況を公表した。
2.死亡者数は199人で前年同期比17.4%減となった一方、休業4日以上の死傷者数は43,848人で4.5%増えた。
3.安全配慮義務の面では、転倒、腰痛等、墜落・転落などの反復的に発生する災害を、職場ごとの予見可能なリスクとして扱えるかが問われる。

厚生労働省

厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課は2026年6月30日、令和8年における労働災害発生状況の6月速報値を公表した。集計対象は、2026年1月1日から5月31日までに発生し、6月8日までに報告があった労働災害で、新型コロナウイルス感染症へのり患による労働災害は除かれている。死亡者数は199人で、前年同期より42人、17.4%減少した。

死亡災害を業種別にみると、建設業が63人、第三次産業が48人、製造業が38人、陸上貨物運送事業が26人だった。事故の型別では、交通事故(道路)が47人、墜落・転落が44人、はさまれ・巻き込まれが34人となっている。建設業や製造業のように危険源が比較的見えやすい業種だけでなく、商業、清掃・と畜、警備業などを含む第三次産業でも死亡災害が発生している点は、安全管理を現場作業だけの問題に限定できないことを示す。

休業4日以上の死傷者数は43,848人で、前年同期より1,886人、4.5%増えた。業種別では、第三次産業が22,870人、製造業が8,778人、陸上貨物運送事業が5,505人、建設業が4,062人だった。事故の型別では、転倒が13,679人、墜落・転落が6,870人、腰痛等の「動作の反動・無理な動作」が6,766人で、特に「動作の反動・無理な動作」は前年同期比15.7%増となった。

安全配慮義務の観点では、この速報値は「事故が起きた後の件数表」にとどまらない。労働契約法5条は、使用者が労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮をする義務を定めている。厚生労働省の解説資料でも、同条の「生命、身体等の安全」には心身の健康が含まれると説明されている。したがって、企業側の実務では、法令上の最低基準を満たすだけでなく、職場の実態に応じて、転倒、腰痛、墜落・転落、機械への巻き込まれなどを予見可能な危険として点検する必要がある。

今回の数字で目立つのは、死亡者数が減少している一方で、休業4日以上の死傷者数が増えている点である。この差は、重大事故対策だけでは職場の安全を十分に説明できないことを示している。例えば、転倒や腰痛等は、床面の段差、動線、荷物の配置、作業姿勢、人員配置、休憩時間、教育訓練といった日常の管理に左右される。これらは「労働者の不注意」として処理されやすいが、同種の災害が同じ職場や同じ作業で繰り返される場合、使用者が危険を把握し、作業方法や職場環境を修正できたかが問題になる。

人権上の論点は、労働者の生命・身体の安全を、労働条件の中心に置けるかにある。労災保険は被災後の補償制度であり、事故そのものを防ぐ制度ではない。安全配慮義務は、損害賠償リスクへの備えというだけでなく、働く人が健康を損なわずに就労を継続するための前提条件である。特に第三次産業では、非正規雇用、高齢労働者、外国人労働者、短時間勤務者など、雇用形態や就労経験の異なる人が同じ現場に入ることがある。安全教育や作業手順が一部の熟練者の経験に依存している場合、危険情報が十分に共有されない。

厚生労働省は、令和5年度から令和9年度までを対象とする第14次労働災害防止計画で、建設業・林業の死亡災害、製造業の機械によるはさまれ・巻き込まれ、陸上貨物運送事業の死傷災害などについて減少目標を掲げている。企業が今回の6月速報値を実務に引き付けるなら、全社一律の注意喚起では足りない。厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課が示した業種別・事故型別の数字をもとに、自社の作業実態と照合し、転倒、腰痛等、墜落・転落、交通事故、はさまれ・巻き込まれについて、危険源、教育記録、改善履歴を確認する作業が出発点になる。

出典

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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