日弁連、立川市の障害福祉不支給に要望 家事援助の個別審査促す

この記事のポイント

1 日弁連が、立川市による居宅介護(家事援助)の不支給決定をめぐり、2026年6月16日に要望を公表した。
2 国の通知は、同居家族がいる場合も、障害、疾病、就労などにより家事を担えるかを自治体が具体的に確認するよう示している。
3 家族構成だけで支援の要否を決めず、本人の状態、介護者の状況、サービスの利用意向を個別に調査する行政運用が問われる。

障害を理由とする偏見や差別をなくそう

日本弁護士連合会は2026年6月16日、東京都立川市が申立人の妻に対し、障害福祉サービスの居宅介護(家事援助)を不支給とした事案について、「障害福祉サービス不支給決定に関する人権救済申立事件(要望)」を公表した。居宅介護の家事援助は、障害のある人の自宅をヘルパーが訪問し、調理、洗濯、掃除、買い物などを支えるサービスである。家庭内に支援を担える人がいるかどうかを、行政がどのように調査し、支給の要否へ反映したのかが制度上の論点となる。

立川市の「障害福祉サービスガイドライン(支給決定基準)」は、障害者総合支援法に基づく申請について、障害支援区分や心身の状態だけでなく、介護を行う者の状況、既存サービスの利用状況、本人の利用意向、生活環境、地域の提供体制など9項目を勘案すると定める。同ガイドラインは、支給量を算出する「基準」であり、「上限」ではないとも明記している。市の利用手続では、80項目の聞き取り調査や審査会を経た後、介護者、居住、就労、地域生活の状況と本人の意向を確認して支給を決める。

同居家族の扱いについて、厚生労働省は2016年3月10日付の通知「居宅介護(家事援助)の適切な実施について」で考え方を示している。家族と同居していても、その家族に障害、疾病、就労などの事情があり、本人または家族が家事を行うことが難しい場合は利用対象となる。市町村には、同居人の有無だけでなく、家事を担える状態かを調査し、支給決定後も状況の変化を確認するよう促した。同居しているという事実だけで審査を終える仕組みではない。

家事援助を家族が代替できるものとして一律に扱えば、障害のある本人の地域生活は、配偶者の健康状態、就労時間、家事能力に左右される。配偶者にも継続的な無償ケアを負わせ、就労や休息を制約する結果を生み得る。公的支援の要否を判断する際には、「家族がいるか」ではなく、「誰が、どの家事を、どの時間帯に、どこまで担えるか」を具体的に調べる必要がある。本人がどのような生活を望んでいるかも、家族側の事情とは別の勘案事項として記録されなければならない。

障害福祉サービスの個別審査をめぐっては、東京弁護士会が2009年2月17日、東京都北区による重度訪問介護の支給量を月505時間に限定した決定について、見直しを勧告した例がある。今回とはサービス内容や処分が異なるが、自治体内部の基準だけで支給を制限せず、本人ごとの障害状況、介護者、生活実態を調査するという論点は共通する。立川市には、申立人の妻の心身状態、介護を行う者の就労・健康状況、本人の利用意向をどの資料で確認し、不支給理由へ反映したのかを点検し、今回の日弁連要望への対応を具体的に示す必要がある。

出典

日本弁護士連合会「障害福祉サービス不支給決定に関する人権救済申立事件(要望)」

URL:https://www.nichibenren.or.jp/document/complaint/year/2026/260616.html

立川市「立川市障害福祉サービスガイドライン(支給決定基準)」

URL:https://www.city.tachikawa.lg.jp/kenko/shogai/1003567/1003677.html

厚生労働省「居宅介護(家事援助)の適切な実施について」

URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1863&dataType=1&pageNo=1

東京弁護士会「北区障がい福祉サービス支給量限定に対する勧告」

URL:https://www.toben.or.jp/message/file/relief/20090217.pdf

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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