1.アムネスティは、湾岸協力会議加盟国で戦争関連の表現に対する大規模弾圧が起きていると指摘した。
2.5月末時点で1,000人以上が逮捕され、クウェートとバーレーンでは国籍はく奪の事例も報告された。
3.戦時下の誤情報対策であっても、表現の自由への制限は明確性、必要性、比例性を満たす必要がある。

アムネスティ・インターナショナルは2026年6月9日、湾岸諸国で戦争関連のオンライン表現に対する大規模な弾圧が行われ、5月末時点で1,000人以上が逮捕されたとする国際事務局発表を公表した。対象となったのは、米国・イスラエルとイランの戦争や、イランによる湾岸地域への攻撃に関連する意見表明、投稿の共有、映像の拡散などである。クウェートとバーレーンでは、表現活動への報復や抑止を目的として国籍がはく奪された事例もあるという。
アムネスティによると、クウェート、バーレーン、アラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビア、オマーンの湾岸協力会議加盟国は、戦争開始後、国家安全保障上の懸念を理由に、戦争に関する「噂」「虚偽の情報」「出所不明の情報」をオンラインで共有・拡散しないよう一律に警告した。その後、複数国で大量逮捕が発表され、ミサイル迎撃の映像、飛来物による被害の映像、敵対国側への共感や連帯を示す投稿などが捜査や処罰の対象になった。
クウェートとバーレーンでは、戦争関連情報を投稿・共有したとして、急きょ開かれた裁判で数十人に3年から10年の禁錮刑が言い渡されたとされる。アムネスティは、湾岸諸国がサイバー犯罪対策、テロ対策、国家安全保障関連法のあいまいで広すぎる規定を使い、情報統制を進めていると批判した。調査では、ジャーナリスト、地域活動家、GCC加盟国の市民や居住者、拘束者の家族など16人への聞き取りも行っている。
人権上の論点は、戦時下の安全保障と表現の自由の線引きにある。国際人権規約の自由権規約19条は、表現の自由を保障しつつ、他者の権利や名誉、国家安全保障、公の秩序、公衆衛生または道徳の保護のため、法律に基づく一定の制限を認めている。ただし、その制限は明確で、正当な目的に向けられ、必要最小限でなければならない。戦争に関する情報共有を広く犯罪化する措置は、この要件との緊張関係を生む。
誤情報やAI生成画像が紛争下で混乱を広げる危険は否定できない。各国政府には、住民の安全を守るため、虚偽情報への対応や避難情報の整理を行う責務がある。しかし、被害映像の投稿、攻撃の記録、政府発表と異なる情報の共有まで包括的に処罰すれば、住民が危険を把握する手段や、後日の検証に必要な記録まで失われる。表現規制が広がるほど、実際に何が起きたのかを確認する公共的な情報空間は狭まる。
アムネスティは、湾岸諸国が安全で安定した拠点というイメージを維持しようとして、従来型の強権的な情報統制を用いているとみる。オマーンでは3月3日に「噂や未確認情報」を公表した者は法的責任を問われると警告したものの、その後の表現活動関連の逮捕発表は確認されていない。GCC加盟国で公表情報が限られるなか、アムネスティの発表は、戦争報道、住民の記録、オンライン上の意見表明をどこまで保護するかという国際人権法上の問題を示している。
アムネスティ・インターナショナル日本
URL:https://www.amnesty.or.jp/news/2026/0609_11003.html
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