【連載 2026年施行・カスハラ防止義務を読む】第3回 相談窓口と二次被害防止

カスタマーハラスメントのイメージ画像

カスタマーハラスメント防止義務の中心は、相談窓口を置くことそのものではなく、労働者が実際に相談でき、組織が適切に対応できる体制を整えることにある。厚生労働省通知は、相談窓口を「あらかじめ定め、労働者に周知する」ことについて、形式的に設けるだけでは足りず、実質的な対応が可能な窓口が必要だとする。職場におけるカスハラは、その場で発生し、現場判断を迫られることが多いため、上司や管理監督者を相談担当者とすることも想定されている。

相談対応では、一律の処理ではなく、言動の性格や態様に応じた柔軟な対応が求められる。状況を注意深く見守る場合、上司等が労働者に代わって対応する場合、事案が発生したその場で労働者と行為者を引き離す場合など、現場の実情に応じた選択が必要となる。人事部門、カスタマーサービス部門、法務部門などの関係部門が連携し、必要に応じて録音・録画や記録化を行うことも実効性を高める。ただし、録音・録画には個人情報保護法等への配慮が前提となる。

通知は、相談者の心身の状況や受け止めに配慮することも求めている。ここには、相談窓口の担当者の言動によって相談者がさらに傷つく、いわゆる二次被害を防ぐ観点が含まれる。相談者がその場で迎合的な言動をしていたとしても、そのことだけでカスハラ被害を否定する理由にはならないとされている点も重要である。被害を受けた労働者は、恐怖、混乱、雇用上の不安から、直ちに明確な拒否や抗議ができない場合があるためである。

また、相談対象は、明確にカスハラと判断できる事案に限られない。通知は、カスハラに該当するか微妙な場合や、将来的に継続的・執拗な言動へ発展するおそれがある場合も幅広く相談対象に含めるとしている。制度を機能させるには、「まだ重大ではない」と現場で抱え込ませないことが重要である。企業は、相談窓口、初動対応、事実確認、記録、再発防止、研修を一体の仕組みとして設計し、非正規雇用労働者や派遣労働者も含めた全ての労働者が利用できる体制にする必要がある。

出典

厚生労働省「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第10章の規定等の運用について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001695607.pdf

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