
日本弁護士連合会は4月16日、「永住者資格取消制度に関するガイドラインの策定及び運用についての意見書」を公表した。副題は「永住者の生活基盤の保障、適正手続及び比例原則の厳格な遵守を求めて」。永住者の在留資格取消制度の運用に当たり、出入国在留管理庁が策定するガイドラインに、取消しを限定的に扱うための基準と手続保障を明記するよう求める内容である。
永住者資格取消制度は、永住者が入管法上の義務を遵守しない場合や、故意に公租公課を支払わない場合、一定の犯罪により拘禁刑に処せられた場合などに、永住者としての在留資格を取り消し得る仕組みである。永住者は、日本に長期にわたり生活基盤を築き、家族関係、就労、住居、地域社会との関係を形成している場合が多い。日弁連は、永住資格の取消しが、本人だけでなく配偶者、子、扶養家族の生活にも重大な影響を及ぼし得ると指摘している。
意見書が重視するのは、取消事由に該当する可能性がある場合でも、直ちに永住資格を取り消すのではなく、個別事情を厳格に考慮することである。具体的には、違反の内容、故意・過失の有無、違反の程度、再発防止の状況、日本での在留期間、家族関係、就労状況、生活基盤、母国との結び付き、取消しによって生じる不利益などを総合的に判断する必要があるとする。制度目的と処分の重さが釣り合っているかを問う比例原則の考え方が、意見書全体の中心にある。
公租公課の不払いについても、日弁連は、経済的困窮、制度理解の不足、納付相談の有無、分割納付の状況などを確認せず、形式的に「故意に支払わない」と扱うことを戒めている。税や社会保険料の未納は是正されるべき問題だが、日本人であれば通常、督促、差押え、行政罰、刑罰など既存の手続で対応される。永住者だけが生活基盤を失う可能性のある在留資格取消しに直面するのであれば、処分の必要性と相当性をより慎重に検討する必要がある。
適正手続の面では、取消しに先立つ本人への告知、弁明の機会、証拠資料の開示、代理人による援助、通訳・翻訳の確保などが論点となる。永住資格の取消しは、行政処分であっても生活への影響が極めて大きい。日弁連は、出入国在留管理庁がガイドラインを策定する際、処分基準を明確にし、恣意的な運用を防ぐ仕組みを整えるべきだとしている。
永住者をめぐる制度は、外国人を一時的な労働力として扱うか、地域社会の構成員として受け止めるかという政策姿勢にも関わる。日弁連の意見書は、制度の存在そのものを前提としつつも、永住者の生活基盤を奪う処分は最後の手段に限るべきだとする立場を明確にした。出入国在留管理庁が今後策定するガイドラインでは、永住者本人と家族の生活実態をどの範囲まで考慮するかが、運用上の焦点となる。

