1.新潟県が新潟県社会保険労務士会と連携し、カスタマーハラスメントと求職者等へのセクシュアルハラスメント対策を解説する動画を公開した。
2.2026年10月1日から、事業主によるカスハラ防止措置と求職者等へのセクハラ防止措置が義務化された。
3.労働者を暴言などから守ることと、正当な苦情や障害特性に伴う意思疎通まで「カスハラ」として排除しないことを同時に考える必要がある。

義務化5日後に県が解説動画
新潟県は10月6日、新潟県社会保険労務士会と連携し、カスタマーハラスメントと求職者等へのセクシュアルハラスメントについて、企業が講じるべき対策を解説する動画を県公式YouTubeで公開した。2026年10月1日から事業主に対策が義務付けられたことを受け、社会保険労務士が企業の実務対応を説明する。
カスタマーハラスメントでは、顧客や取引先などから労働者が社会通念上許容される範囲を超えた言動を受け、就業環境が害される問題を扱う。一方、求職者等へのセクハラでは、採用する企業側と、採用されることを希望する学生・求職者との力の差が問題となる。厚生労働省は、2026年10月1日から両者について事業主の雇用管理上の措置を義務化している。
就活生は「社内相談窓口」を使えるとは限らない
従業員であれば社内研修やイントラネットを通じて相談窓口を知る機会があるが、採用面接やインターンシップに参加する学生は企業内部の制度を知らないことも多い。採用担当者や社員から不適切な性的言動を受けても、「抗議したら採用されないのではないか」と考え、申告をためらう可能性もある。
この力関係を考えると、企業が「社員向け相談窓口があります」とするだけでは十分ではない。採用サイトや説明資料などで、求職者も相談できる窓口、その相談が採用判断上の不利益につながらない取扱い、プライバシー保護などを明確にすることが、制度を実際に利用できる状態につながる。
正当な苦情や合理的配慮まで排除しない
カスハラ対策では別の権利調整が生じる。働く人を暴言、脅迫、過度な要求などから守る必要がある一方、商品やサービスへの合理的な苦情、行政・企業への正当な意見まで「迷惑客」として排除してはならない。厚生労働省の指針でも、消費者の権利との調和に加え、障害特性などへの理解を深めるための研修を行うことが示されている。
例えば意思疎通に時間がかかることや、同じ説明を繰り返し確認することが障害特性と関係している場合、表面的な「対応時間の長さ」だけでカスハラと判断すれば、合理的配慮を必要とする人がサービスから排除される可能性がある。逆に障害があることを理由に、暴力や脅迫まで許容するという意味でもない。言動の内容、方法、要求の妥当性、個別事情を区別して判断する仕組みが必要になる。
「方針を作った」で終わらない義務化
企業実務では、カスハラ禁止を掲示したり、研修動画を一度視聴したりするだけでは、現場で問題が起きたときに誰が判断するかは決まらない。相談窓口、記録方法、管理職へのエスカレーション、被害労働者を顧客から引き離す手順、求職者からの申告受付、相談者のプライバシー保護まで具体化する必要がある。
新潟県の動画は、10月1日の義務化を県内事業者へ伝える入口となる。2026年度以降は、企業がカスハラから労働者を守ることと、消費者や障害のある利用者の権利を不当に狭めないことを両立させた運用ができているかが、制度の定着を測る実務上のポイントとなる。
新潟県「カスタマーハラスメント等対策に係る解説動画を作成しました」
URL: https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/shigototeijyu/shigototeijyu-kasutamaharasumenntodouga.html
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策・求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策」
URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/
カスタマーハラスメント
URL: https://jinken-news.com/glossary/customer-harassment/
労働施策総合推進法
URL: https://jinken-news.com/glossary/roudou-shisaku-sogo-suishin-hou/
セクシュアルハラスメント
URL: https://jinken-news.com/glossary/sexual-harassment/

