1.ヒューマンライツ・ナウは、インドネシア人移住漁業労働者の募集・送り出し過程に人権リスクがあるとする調査報告書を公表した。
2.台湾、韓国、日本へ向かう労働者について、募集費用や保証金などが債務を生み、労働者の選択を制約する可能性を指摘した。
3.ILOは原則として労働者に募集費用を負担させないことを示しており、日本の水産企業にも募集段階まで遡る人権デュー・ディリジェンスが問われる。

認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は2026年8月31日、「不透明な就職斡旋プロセス:日本市場につながる水産サプライチェーンにおけるインドネシア人移住漁業労働者の募集・送り出しに伴う人権リスク」と題する調査報告書を公表した。漁船上での長時間労働や賃金問題だけではなく、労働者がインドネシアを出国する前の募集、職業訓練、送り出しの仕組みに焦点を当てた。
HRNは、インドネシア政府機関、地方労働当局、送り出し機関、職業訓練機関、水産関係者、移住労働者などへの聞き取りを行い、台湾、韓国、日本へ向かう複数の就労経路を調査した。報告書では、渡航先や送り出しの経路によって労働者が負担する募集関連費用の構造が異なることや、一部で保証金などの負担が生じることを指摘している。来日前に多額の債務を抱えれば、就労後に問題があっても帰国や転職を選びにくくなり、労働者の自由を事実上制約する要因になり得る。
国際労働機関(ILO)の「公正な募集に関する一般原則及び実務指針」は、労働者や求職者に募集手数料や関連費用を直接または間接に負担させるべきではないとの原則を示している。公正な募集には、労働条件を理解できる言語で示すことや、差別を受けないこと、労働者が苦情や救済の仕組みへアクセスできることも関わる。採用時の借金や保証金は、船に乗ってから発生する問題とは別に、強制労働につながる危険を高める要素として確認する必要がある。
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」は、企業自身が直接引き起こした人権侵害だけでなく、取引関係を通じて企業の事業・製品・サービスと直接結び付いた人権への悪影響にも対応することを企業へ求めている。水産会社が漁業労働者を直接採用していない場合でも、原料や商品につながるサプライチェーンで誰が労働者を募集し、どの程度の費用を負担させ、どのような契約を結んでいるのかは、人権デュー・ディリジェンスで確認すべき対象になり得る。HRNの報告書は、水産物の調達管理を漁船や加工工場だけで終わらせず、労働者の募集段階まで遡って確認する必要性を提起している。
ヒューマンライツ・ナウ「インドネシア人移住漁業労働者の募集・送り出しに伴う人権リスク」
URL:https://hrn.or.jp/news/29465/
ILO「General principles and operational guidelines for fair recruitment」
URL:https://www.ilo.org/publications/general-principles-and-operational-guidelines-fair-recruitment-and-0
ILO「Definition of recruitment fees and related costs」
URL:https://www.ilo.org/resource/definition-recruitment-fees-and-related-costs
国連人権高等弁務官事務所「Guiding Principles on Business and Human Rights」
URL:https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/Publications/GuidingPrinciplesBusinessHR_EN.pdf

