1.兵庫県が10月3日、養父市で第30回但馬認知症研修会を開催し、MCI(軽度認知障害)を取り上げる。
2.2022年推計では高齢者のMCIは558.5万人で、1年間に認知症へ移行する割合は約5~15%とされる。
3.早期対応を考える際には、認知機能だけで本人の生活や意思決定を制限しないという認知症基本法の考え方も欠かせない。

兵庫県豊岡健康福祉事務所は10月3日、養父市の兵庫県立但馬長寿の郷・郷ホールで「第30回但馬認知症研修会」を開く。テーマは「MCIって何だろう」。兵庫県立リハビリテーション西播磨病院認知症疾患医療センター長の高橋竜一氏が、MCI診療の現状を解説する。定員は300人で参加無料。テーマに関心があれば誰でも参加できる。
MCI(軽度認知障害)は、もの忘れなどの認知機能の低下が認められるものの、日常生活はおおむね自立しており、認知症とは診断されない状態を指す。厚生労働省が2022年の地域調査を基に示した推計では、MCIの高齢者は558.5万人、有病率は15.5%だった。認知症の高齢者443.2万人、有病率12.3%を上回る規模であり、認知症施策を考えるうえでMCIは無視できない段階となっている。
ただし、MCIを「そのまま認知症へ進む状態」と理解するのは正確ではない。国立長寿医療研究センターによると、MCIから1年間で認知症へ移行する人は約5~15%である一方、約16~41%は認知機能が正常な状態に戻るとされる。状態を維持する人もいる。県の案内は認知症への進行可能性を強調しているが、参加者にはこうした幅のある経過を含めて情報が伝えられることが望ましい。
MCIや認知症を早く把握する目的は、単に診断名を付けることではない。共生社会の実現を推進するための認知症基本法は、認知症の人を基本的人権を持つ個人として捉え、本人の意思、社会参加、地域生活を施策の基礎に据えている。認知機能の低下が確認されたことだけを理由に、金銭管理、外出、仕事、地域活動などから本人を一律に遠ざければ、早期把握がかえって生活の選択肢を狭める可能性がある。医療情報と本人の意思の尊重を切り離さないことが、認知症をめぐる啓発では一つの論点となる。
研修会は午後2時30分から4時30分まで。豊岡健康福祉事務所は9月25日まで申し込みを受け付ける。MCIの医学的知識だけでなく、その後も本人が地域で生活を続けるために何が必要かを考える内容となるかが、30回目を迎える但馬認知症研修会を読む際のポイントになる。
兵庫県「第30回但馬認知症研修会~MCIって何だろう~」
URL:https://web.pref.hyogo.lg.jp/tjk06/press/20260828.html
厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001611239.pdf
国立長寿医療研究センター「認知症とMCI」
URL:https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/camd/j-depp/mci/
