1.DPI日本会議が「DPIビジョン2030」策定5年時点の成果と未達項目を整理
2.合理的配慮の義務化や建築物バリアフリー基準は前進、脱施設や教育制度改革は未達
3.国連障害者権利委員会の2022年対日勧告と照合すると、地域生活とインクルーシブ教育が主要課題として残る

DPI日本会議は2026年8月27日、「DPIビジョン2030」の策定から5年を迎え、2025年までの行動計画の成果と未達課題を整理した中間振り返りを公表した。対象は地域生活、バリアフリー、権利擁護、教育、雇用労働、所得保障、障害女性、国際など幅広い。特徴は、政策提言の成果だけを並べるのではなく、法改正や制度化に至らなかった項目も明記し、2030年までの行動計画を更新している点にある。
地域生活では、重度訪問介護について、1年未満の海外滞在中も継続利用できるとする国の事務連絡につながったことを成果として挙げた。その一方、通勤・通学、就労・就学中の利用拡大や、抜本的な脱施設の制度化は実現していないと評価する。2022年の国連障害者権利委員会の対日総括所見は、日本に対し、施設から地域生活への移行に向けた法的枠組みと期限付きの国家戦略を整備し、本人がどこで誰と暮らすかを選択できるようにすることを勧告した。DPIの中間評価は、この国際基準との距離を測る資料にもなる。
権利擁護では、2021年改正の障害者差別解消法により、2024年4月から民間事業者の合理的配慮の提供が努力義務から法的義務へ変わったことが大きな制度変化となった。ただしDPIは、障害者基本法と障害者虐待防止法の改正は実現していないと整理している。2026年度には、改正障害者差別解消法施行後の差別事例を収集し、意見書として政府へ提出する計画を示した。法律の成立だけでなく、店舗、職場、サービス提供の現場で合理的配慮が機能したかを検証する段階に入っている。
バリアフリー分野では、2025年6月から劇場等の車いす使用者用客席を総席数の0.5%以上とする基準などが導入された一方、学校施設の整備には遅れが残る。DPIが示した2025年度末見込みでは、バリアフリートイレは校舎77.2%、屋内運動場51.3%、エレベーターは校舎32.9%だった。教育分野でも障害者基本法や学校教育法・施行令の改正には至っていない。国連障害者権利委員会は2022年、日本の分離された特別教育について懸念を示し、インクルーシブ教育の国家行動計画や合理的配慮の保障などを勧告している。
中間振り返りを読む際には、DPI日本会議が掲げる政策目標と、政府が決定した制度を区別することが不可欠だ。例えば、2026年の学習指導要領改訂時に「社会モデル」「子どもの意見表明権」「優生保護法の猛省とインクルーシブ教育の必要性」などを盛り込むとの記述は、DPI側が掲げる目標であって政府決定ではない。2030年までの後半5年間では、合理的配慮の義務化や建築物基準の強化が実際の利用改善につながったか、脱施設やインクルーシブ教育など未達の課題が政策としてどこまで具体化するかが、DPIビジョン2030を検証する軸となる。
DPI日本会議「DPIビジョン2030 中間振り返り―これまでの成果と2030年に向けた今後の行動計画」
URL: https://dpi-japan.org/blog/workinggroup/community/dpivision2/
国連障害者権利委員会「日本の初回報告に関する総括所見(CRPD/C/JPN/CO/1)」(外務省・和文仮訳)
URL: https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100448721.pdf
内閣府「令和6年版障害者白書―改正障害者差別解消法の施行」
URL: https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r06hakusho/zenbun/h2_01_01_02.html
