1.2027年4月に始まる育成就労制度では、本人の希望による転籍が一定の条件で認められる。
2.介護、建設、外食など8分野では、転籍制限期間が原則2年とされ、他の対象分野より長い。
3.転籍時には技能試験と日本語能力A2.1相当以上なども必要で、制度開始後は実際に職場を移れる仕組みになったかの検証が必要となる。

2027年4月1日、技能実習制度に代わる「育成就労制度」が始まる。政府は2029年3月末までの育成就労外国人の受入れ見込数を42万6,200人に設定した。厚生労働省によると、2025年10月末時点で技能実習の在留資格で働く外国人は49万9,394人に上る。新制度は技能移転による国際貢献ではなく、人材育成と人材確保を目的として掲げ、原則3年間の就労を通じて特定技能1号への移行を目指す。
8分野では原則2年間、本人希望でも移れない期間
技能実習からの大きな変更が「転籍」である。育成就労では、職場側に問題があるなどの「やむを得ない事情」とは別に、外国人本人の意向による転籍を認める。ただし自由に転職できる制度ではない。2026年1月に決定された分野別運用方針では、介護、建設、造船・舶用工業、自動車整備、外食、工業製品製造、飲食料品製造、資源循環の8分野について転籍制限期間を2年とした。その他の育成就労対象分野では1年が基本となる。2年とされた分野でも、受入れ事業者が1年を選択することはできる。
期間を過ぎても試験要件
制限期間を過ぎれば無条件で職場を変えられるわけでもない。本人意向による転籍では、転籍元と同じ業務区分で働くことに加え、原則として育成就労評価試験の初級に合格し、日本語能力も「日本語教育の参照枠」のA2.1相当以上に達していることなどが必要になる。制度開始から1年時点で求められる日本語水準はA1相当以上であり、転籍にはそれより高い水準が設定された。暴力や賃金不払いなどを含む「やむを得ない事情」による転籍とは別の仕組みであり、本人意向による転籍では、人材育成を理由とした条件が残る。
転籍制限は、人権上の問題とも直接関係する。厚生労働省と出入国在留管理庁は法改正時の規制評価で、技能実習制度の転籍制限について「人権侵害を発生・深刻化させる背景・原因」との指摘があることを認めた。育成就労で本人意向の転籍を導入したことは、この構造を改める制度変更である。ただし、最長2年間の制限や技能・日本語要件がある以上、「一般の労働者と同じように転職できる制度になった」とまではいえない。2年制限を採用する分野では、1年経過後に昇給など待遇を向上させる措置も求められる。
制度開始後に確認すべきなのは、法律上「転籍できる」と書かれているかだけではない。本人意向による転籍の申出件数、成立件数、転籍までの期間、試験要件を満たせず移れなかった事例、受入れ機関による妨害の有無を継続して把握する必要がある。新制度では外国人育成就労機構に相談、情報提供、助言、職業紹介などの転籍支援を行う役割が定められ、ハローワークとの連携も制度化される。出入国在留管理庁と厚生労働省が2027年4月以降、この支援の利用状況まで公表できるかが、技能実習制度からの転換を測る具体的な材料となる。
厚生労働省「外国人育成就労制度について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/index_00029.html
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
URL:https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html
厚生労働省「外国人労働者に関する制度概要」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001659204.pdf
厚生労働省・出入国在留管理庁「規制の事前評価書」
URL:https://www.mhlw.go.jp/wp/seisaku/ria/2023/dl/ria2024_3_25.pdf
厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68794.html

