
文部科学省は令和8年4月24日、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針を改訂した。今回の改訂は、令和4年4月に施行された「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」の施行後3年見直しを踏まえたもの。同法は、教員等による児童生徒への性暴力等を、子どもの尊厳と権利利益を著しく侵害する行為と位置づけ、防止、早期発見、対処、再発防止を制度的に進めるために整備された。文部科学省は、法の施行状況に関するヒアリングや調査で明らかになった課題を踏まえ、基本指針を改訂したとしている。
今回の改訂で最も重い意味を持つのは、児童生徒性暴力等を行った教育職員等への処分の明確化である。通知では、教育職員等による児童生徒性暴力等があった場合には懲戒免職にすべきという趣旨をより明確にするため、従来の「原則として懲戒免職とする」から「原則として」という文言を削除したと説明している。これにより、懲戒免職を基本とする姿勢が一段と明確になった。あわせて、公立学校以外の学校設置者にも、就業規則等において、児童生徒性暴力等をした教育職員等に対する懲戒解雇を含む懲戒処分基準を整備する必要があるとされた。さらに、学校法人等や所轄庁には、児童生徒性暴力等による懲戒処分であることを明記した上で報告・通知することも求められている。
この改訂は、学校で起きる性暴力事案を、単なる「教員個人の不祥事」として処理しない姿勢を明確にしたものといえる。従来、教育現場では、被害児童生徒の保護、保護者への説明、警察等との連携、加害教員への処分、免許状失効後の情報管理などが、事案ごとに分断される危険があった。だが、児童生徒性暴力等は、教員と児童生徒との権力関係、評価や進学への不安、羞恥心、周囲に知られることへの恐れなどから、被害が表面化しにくい性質を持つ。文部科学省の基本指針も、被害児童生徒等からの聴き取りに当たっては負担軽減に留意し、弁護士、医師、学識経験者など外部専門家の協力を得て丁寧な事実確認を行うことの有効性に触れている。
人権の観点から見ると、今回の改訂は、子どもを「守られるべき対象」として扱うだけでなく、安心して学ぶ権利を有する主体として位置づけ直す意味を持つ。学校は、学力形成の場であると同時に、子どもが日常的に長時間を過ごす生活空間でもある。そこで信頼関係を利用した性暴力が起きれば、被害児童生徒の心身に深い影響を与えるだけでなく、学校教育そのものへの信頼が損なわれる。今後は、処分の厳格化だけでなく、教員養成段階での倫理教育、採用時の経歴確認、現職教員への研修、児童生徒や保護者への相談窓口の周知を一体的に進める必要がある。教育委員会や学校法人にとっては、規程を整えるだけでなく、被害を隠さず、被害児童生徒を中心に据えた対応を実際に機能させられるかが問われる。
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