1.インドネシア・ジャカルタで7月8日から10日まで全国ハンセン病会議が開かれ、中央政府、38州政府、当事者団体など延べ875人以上が参加した
2.38州政府が早期発見、地域行動計画、予算確保、差別のない地域づくりを進める方針を確認した
3.政府横断のハンセン病制圧タスクフォース発足に向けた取組も始まり、医療、教育、雇用、社会保障を含む対策へ広がる

インドネシア・ジャカルタで2026年7月8日から10日まで、「2026年全国ハンセン病会議」が開かれた。保健省などの中央省庁、全国38州の地方政府、研究機関、医療関係者、ハンセン病の当事者団体など延べ875人以上が参加した。会議では、早期発見と治療、医薬品の供給、障害の予防に加え、教育、雇用、社会保障、偏見・差別の解消までを含む政策が協議された。38州政府は最終日、地域行動計画の策定、保健政策と予算への反映、人材や設備の確保、当事者と家族が地域で暮らせる環境づくりを進める方針を確認した。
初日のテクニカルセッションには、保健省と38州の保健局担当者ら161人が参加した。多剤併用療法(MDT)と、治療中に生じる炎症反応に用いる薬剤の調達・供給、無料健康診断プログラム、各州の対策状況などを検討した。ハンセン病は、らい菌による慢性感染症で、主に皮膚と末梢神経に影響する。WHOによると、治療は可能であり、早期に診断してMDTを開始すれば、障害が残る危険を抑えられる。日常的な握手、食事の共有、隣に座るといった接触で感染する病気ではなく、治療を始めた患者は感染源ではなくなる。
最終日のハイレベルセッションでは、ブディ・グナディ・サディキン保健大臣が、新規患者を多く発見した地域保健センターを表彰する制度を導入する方針を示した。患者数の増加を評価するようにも見えるが、目的は、患者を見つけないことで数字を小さくするのではなく、積極的な検診によって治療が必要な人を早期に把握することにある。発見が遅れれば、末梢神経の障害などが残る危険が高まり、本人が地域や職場で偏見を受ける期間も長くなる。表彰制度を運用する際には、患者個人の氏名や病歴が地域で知られないよう、医療情報の保護と差別防止を伴わせる必要がある。
インドネシアは、WHOが示す国単位の「公衆衛生上の問題としてのハンセン病制圧」を2000年に達成している。この基準は人口1万人当たりの登録患者数が1人未満になることであり、「国内で新たな患者が発生しない」こととは異なる。WHOは2026年4月、インドネシアでは年間約1万7,000人から2万人の新規患者が報告され、世界でも患者数が多い国の一つだと説明した。遠隔地で医療機関に到達しにくいこと、報告体制の弱さ、偏見を恐れて受診を避けることなどが、発見と治療の遅れにつながっている。子どもの患者が確認されることは、地域内で感染が続いていることを示す指標にもなる。
2日目のパネルディスカッションでは、社会保障庁が病院や地域保健センターでの医療費負担制度を説明し、国家研究・イノベーション庁やハビビ・センターが早期発見、スクリーニング、偏見の解消に関する研究を報告した。学校教員や若者、著名人による啓発の役割も取り上げられた。患者が診断を避ける背景には、病気そのものへの不安だけでなく、家族関係、就学、就職、地域生活への影響を恐れる事情がある。医療機関で薬を提供するだけでは、差別によって受診できない人や、治療後も排除される回復者の問題には対応できない。
プラティクノ人材育成・文化担当調整大臣は会議で、ハンセン病制圧タスクフォースの発足に向けた取組を開始すると表明した。保健省だけでなく、地方自治体、教育、社会保障、雇用などの部門を結ぶ政府横断体制を整える方針である。WHOの世界ハンセン病戦略も、感染と発病、障害、偏見・差別をともにゼロへ近づけることを掲げ、当事者の人権尊重を政策の柱としている。インドネシア政府は今後、全国38州が表明した方針を地域行動計画と予算に反映し、地域保健センターを通じた患者発見、治療、障害予防と、当事者・家族への差別解消を並行して進める。
笹川保健財団「インドネシア、国を挙げたハンセン病問題解決への取り組みを強化―2026年全国ハンセン病会議開催―」
URL:https://www.shf.or.jp/information/28825
世界保健機関「Turning national commitment into real progress against leprosy」
URL:https://www.who.int/indonesia/news/detail/20-04-2026-turning-national-commitment-into-real-progress-against-leprosy
世界保健機関「Leprosy」
URL:https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/leprosy
インドネシア保健省「Indonesia Percepat Eliminasi Kusta dan Filariasis, Target Bebas NTDs pada 2030」
URL:https://kemkes.go.id/id/indonesia-percepat-eliminasi-kusta-dan-filariasis-target-bebas-ntds-pada-2030
ハンセン病差別撤廃原則・ガイドライン
URL:https://jinken-news.com/glossary/hansenbyo-sabetsu-teppai-gensoku-guideline/

