1.相模原障害者殺傷事件から10年となる追悼集会が開かれ、全国から約300人が参加した。
2.集会アピールは、事件の風化を防ぎ、入所施設や精神科病院から地域生活へ移る「脱施設」を進めると宣言した。
3.障害のある子どもを通常の教育から分離する仕組みの見直しと、インクルーシブ教育の実現も訴えた。

DPI日本会議など障害者団体4団体は2026年7月22日、東京都千代田区の参議院議員会館講堂で、相模原障害者殺傷事件から10年となる追悼集会を開いた。全国から約300人が参加し、犠牲者を悼むとともに、優生思想を許さず、障害者の脱施設とインクルーシブ教育を進めるとする集会アピールを採択した。集会後には日比谷公園からアピール行進も行われた。
事件は2016年7月26日、神奈川県相模原市の障害者入所施設「津久井やまゆり園」で発生し、入所者19人が死亡、27人が負傷した。採択されたアピールは、事件を元職員個人による特異な犯罪としてのみ扱えば、障害のある人の生命を劣位に置く優生思想や、地域から切り離して生活させる制度の問題が見えなくなると指摘した。事件当時、同園には約160人が暮らしていたとして、家族介護を前提とせず、本人が地域で生活できる支援への転換を訴えている。
アピールが掲げた「脱施設」は、単に施設の定員を減らすことではない。本人が住む場所と共に暮らす相手を選び、住宅、介助、医療、意思決定支援などを地域で利用できる状態へ移行することを指す。国連障害者権利委員会は2022年の日本への総括所見で、津久井やまゆり園事件への包括的対応が不十分だと懸念を示し、優生的・能力主義的な態度に対処するための事件検証を勧告した。入所施設や精神科病院から地域生活へ移行する期限付きの国家戦略も日本政府に促している。
教育について、アピールは、障害の有無によって子どもを分ける仕組みが、成人後も相互に接点を持ちにくい社会を再生産すると捉えた。国連委員会も同じ総括所見で、障害のある子どもが通常の学校で学ぶ権利を政策・法制度に明記し、通常校が受入れを拒まない仕組み、合理的配慮、個別支援を整えるよう勧告した。日本の特別支援教育そのものを一律に否定するのではなく、本人と保護者が実質的に選べる環境があるか、通常学級側に受入れの条件が整っているかが論点となる。
優生思想を制度が支えた歴史も、集会の問題提起と直結する。最高裁大法廷は2024年7月3日、旧優生保護法の不妊手術に関する規定を憲法13条と14条1項に違反すると判断し、国会議員の立法行為も国家賠償法上違法とした。障害を理由に生殖や生活の選択を制限した国の政策と、障害者の生命を選別する発想は同一ではないが、人の価値を能力や障害の有無で序列化する点で接続している。
DPI日本会議、全国自立生活センター協議会、ピープルファーストジャパン、DPI女性障害者ネットワークは、追悼を年中行事で終わらせず、地域生活支援と学校教育の制度変更へ結び付ける方針を示した。津久井やまゆり園の19人の犠牲をどう記憶し、国連勧告を住宅・介助・就学の具体策に変えるかが、事件10年後の集会アピールが政府と自治体に突き付けた課題である。
DPI日本会議「相模原障害者殺傷事件から10年 津久井やまゆり園の犠牲者を追悼し、インクルーシブ社会を目指す会」
URL:https://www.dpi-japan.org/blog/demand/20260722-appeal/
外務省「日本の第1回政府報告に関する障害者権利委員会の総括所見」
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100448721.pdf
最高裁判所「令和5年(受)第1323号国家賠償請求事件 令和6年7月3日大法廷判決」
URL:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93164.pdf

