高槻市で「35年目のラブレター」上映 識字と学ぶ権利描く

この記事のポイント

1.高槻市が9月5日、人権教育映画会で実話を基にした「35年目のラブレター」を上映する。
2.読み書きができないまま65歳を迎えた男性が、妻への手紙を書くため夜間中学で文字を学ぶ物語。
3.識字を個人の能力だけで捉えず、戦争や貧困によって教育機会を奪われた人の尊厳と学び直しを描く。

高槻市の人権教育映画会「35年目のラブレター」
©2025「35年目のラブレター」製作委員会

高槻市は2026年9月5日、人権教育映画会「35年目のラブレター」を高槻市生涯学習センター2階多目的ホールで開く。上映時間は午前9時30分から11時30分までで、日本語字幕を付ける。対象は高槻市民と市内への通勤・通学者、定員は申込順の300人。参加費は無料となる。高槻市は作品について、さまざまな事情から文字を書けない人が取り残される社会のあり方を伝える映画だと説明している。

「35年目のラブレター」は、読み書きができないまま大人になった西畑保さんと、妻の皎子さんという実在の夫婦を基にした作品で、2025年3月7日に公開された。塚本連平さんが監督と脚本を担当し、現在の保を笑福亭鶴瓶さん、皎子を原田知世さんが演じる。若い時代の夫妻は重岡大毅さんと上白石萌音さんが演じ、夜間中学校の教師役で安田顕さんも出演する。

主人公の保は貧しい家庭に生まれ、ほとんど学校へ通えないまま成長した。文字を読んだり書いたりできないことを周囲に知られないようにしながら働き、皎子との結婚後も、その事実を打ち明けられずにいた。結婚から半年後に秘密を知った皎子は、保を責めるのではなく、生活の中で読み書きを支える道を選ぶ。定年退職を迎えた保は、長年寄り添ってきた皎子へ感謝の手紙を書くため、60歳を超えて夜間中学に通い始める。年齢や国籍の異なる同級生と学び、5年以上かけて一文字ずつ手紙を書き進める過程が物語の軸となる。

作品が扱うのは、夫婦愛だけではない。保が文字を習得できなかった背景には、本人の努力では埋められない幼少期の貧困と教育機会の喪失がある。読み書きができなければ、書類への記入や情報の確認、他者への意思表示を自分だけで行うことが難しくなり、その事実を隠すこと自体が生活上の負担となる。映画は、識字を「できる人とできない人」の能力差としてではなく、教育を受ける機会を保障されなかった人が社会生活で直面する不利益として描く。

同時に、夜間中学は保に文字だけを教える場所ではない。担任の谷山恵と同級生との関わりを通じ、学ぶ時期を過ぎたと見なされがちな高齢者にも、学び直す機会と他者に思いを伝える手段があることを示す。高槻市が人権教育映画会として上映する意味は、読み書きの困難を本人や家族だけに背負わせず、教育から取り残された経緯と、学びを支える場の役割を考える点にある。

申し込みは8月4日から31日まで、電話、ファクス、高槻市人権まちづくり協会のウェブサイトまたは窓口で受け付ける。3歳以上の就学前児童を対象とする保育枠も5人分設け、希望者は映画会と同時に申し込む。高槻市と一般社団法人高槻市人権まちづくり協会は、西畑保さんが妻への一通の手紙を完成させるまでの歩みを通じ、文字を学ぶ機会と人に思いを伝える権利を考える場とする。

出典

高槻市「人権教育映画会『35年目のラブレター』」
URL:https://www.city.takatsuki.osaka.jp/soshiki/63/145505.html

映画「35年目のラブレター」公式サイト
URL:https://35th-loveletter.com/

一般社団法人高槻市人権まちづくり協会
URL:https://www.takatsuki-jinmati.org/

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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