1.笹川保健財団が、ハンセン病の歴史を伝える国際ウェブサイト「History of Leprosy」を約10年ぶりに全面刷新した。
2.各国の文書資料、療養所、関係者、芸術作品、証言、写真、映像を地域別・時代別に検索できる。
3.財団は1974年の設立以来、疾病対策だけでなく、14カ国での歴史保存や差別解消、資料館運営にも取り組んできた。

公益財団法人笹川保健財団は2026年7月14日、ハンセン病の歴史を国際的に伝えるウェブサイト「International Leprosy Association-History of Leprosy」を約10年ぶりに全面刷新した。新しいサイトでは、国や地域、年代を指定して資料を検索できるほか、医師、医学研究者、活動家などの人物情報、絵画、写真、陶芸、彫刻、書道などの芸術作品、当事者や関係者の証言、ドキュメンタリー映像を体系的に閲覧できる。財団は、各地に残る記憶と記録を結び付ける国際的なオンラインネットワークへ発展させる方針を示した。
サイトの基礎となったのは、国際ハンセン病学会が2001年から2007年にかけて進めた「ハンセン病歴史グローバルプロジェクト」である。世界各地の公文書、医療機関、研究所、療養所、博物館、図書館、個人所蔵資料の所在を記録し、研究者が資料へたどり着くためのデータベースを構築した。笹川保健財団は日本財団とともに事業を支え、2016年には資料検索に加えて当事者の証言や文化・芸術作品を紹介するサイトへ改編した。今回の刷新は、その2016年版から約10年を経て、検索性と資料の体系性を改めたものとなる。
笹川保健財団は、世界からハンセン病をなくすことを目標に、笹川良一を会長、ハンセン病化学療法の研究に携わった石館守三を理事長として1974年に設立された。現地の保健機関や医療関係者との協力を通じて疾病対策を続ける一方、治療法の普及だけでは解消できない社会的烙印や差別にも活動領域を広げた。2006年からは、世界の各界の関係者が差別撤廃を訴える「グローバル・アピール」を毎年実施している。日本財団と同財団は2008年、ハンセン病問題の解決に対する貢献により、国際的な顕彰であるダミアン・ダットン賞を受賞した。
歴史保存も財団の主要事業の一つである。治療の進展や患者数の減少に伴い、世界各地でハンセン病病院、療養所、隔離施設の縮小や閉鎖が進むと、建物だけでなく、入所者の生活記録、家族との関係、医療や看護の資料も失われる。財団は、ユネスコ「世界の記憶」アジア太平洋地域版に登録されたフィリピンのクリオン資料館を含む14カ国で歴史保存を支援し、2012年から2017年には日本で「ハンセン病人類遺産国際ワークショップ/シンポジウム」を5回開催した。関係者の人材育成と国境を越えた資料保存ネットワークの形成も進めてきた。
国内では2020年から、国立ハンセン病資料館などの運営を厚生労働省から受託している。療養所への強制隔離や家族との分断を含む歴史を、展示、証言、資料収集、教育活動を通じて伝える役割を担う。ハンセン病は治療可能な感染症であるにもかかわらず、過去の隔離政策や誤った認識に基づく偏見は、回復者や家族の生活に長期的な影響を残してきた。資料の保存と公開は、疾病史の研究にとどまらず、行政施策が個人の尊厳や家族関係をどのように損なったのかを検証する基盤となる。
新しい「History of Leprosy」は、療養所や医療者の記録だけでなく、当事者が残した証言や芸術作品も検索対象に置いた。公的制度の記録だけでは把握しにくい隔離生活、抵抗、文化活動、地域との関係を、複数の資料から検討できる構成である。笹川保健財団が今後、各国の資料所蔵機関や当事者団体との連携を広げ、消失の危険がある記録をどこまで収集・公開できるかが、「記憶」と「記録」を結ぶ国際ネットワークの具体的な成果を左右する。
公益財団法人笹川保健財団、International Leprosy Association
URL:https://www.shf.or.jp/information/28680
URL:https://leprosyhistory.org/
URL:https://leprosyhistory.org/about-this-site/
URL:https://www.shf.or.jp/leprosy/history/
URL:https://www.shf.or.jp/about_us/history/

