1.名古屋市は6月2日、生活保護申請中の人に対する不同意わいせつ罪で起訴された東区主事を免職にした。
2.事案は、ケースワーカーとして被害者宅を訪問中にわいせつな行為をしたとされるもの。
3.生活保護行政における訪問支援の必要性と、相談者の安全・尊厳をどう守るかが問われる。

名古屋市は6月2日、生活保護を申請中の人の自宅を訪問中、わいせつな行為をしたとして不同意わいせつの罪で起訴された東区主事の男性職員を、同日付で免職にしたと発表した。対象職員は40代。市は同日、市政記者クラブ向けに「職員の懲戒処分について」とする資料を公表した。
市の発表によると、事案は令和7年8月29日に発生した。当該職員はケースワーカーとして、生活保護を申請中だった当時20代の被害者の自宅を訪問していた。その際、被害者に対してわいせつな行為をしたとして、令和8年3月30日、名古屋地方検察庁により不同意わいせつの罪で起訴されたという。刑事手続は有罪・無罪の判断を待つ段階だが、名古屋市は職員の非違行為として免職処分を行った。
管理監督責任も問われた。東区長は市長文書訓戒、東区部長は所属長文書訓戒となった。令和7年度当時に東区課長だった東区課長補佐と、別の東区課長補佐はいずれも戒告とされた。懲戒処分は当該職員本人にとどまらず、区役所内の管理監督体制にも及んでいる。
生活保護のケースワークでは、申請者や受給者の生活状況を確認し、必要な支援につなげるために家庭訪問が行われる。訪問は制度上必要な支援手段である一方、相談者にとっては、自宅という私的空間に行政職員を迎え入れる場面でもある。とくに生活保護申請中の人は、生活費、住居、医療、家族関係などの不安を抱え、行政職員との関係で弱い立場に置かれやすい。
人権上の論点は、性暴力そのものに加え、福祉行政に対する信頼の問題にある。生活に困窮した人が相談や申請をためらえば、必要な支援から遠ざかる。相談者が「断れば不利益を受けるのではないか」「申請に影響するのではないか」と感じる関係性の中で、職員側の不適切行為が起きれば、被害は個人の尊厳だけでなく、制度利用の安全性にも及ぶ。
自治体には、訪問時の複数対応、記録管理、相談者からの苦情申出ルート、職員研修、管理職による確認などを通じ、相談者の安全を守る体制が求められる。名古屋市の今回の処分は、個別職員の懲戒に加え、東区の管理監督責任も対象にした。生活保護行政の現場では、支援を受ける人が安心して相談できる環境を、東区と総務局職員部人事課がどのように再点検するかが問われる。

