1.アムネスティは、米ネバダ州のリチウム採掘計画をめぐり、トヨタへの書簡と回答を公表した。
2.対象は「ライオライトリッジ・リチウム・ホウ素プロジェクト」で、先住民族のFPICが論点となっている。
3.トヨタは、当該鉱山からリチウムを調達していないと回答した。

アムネスティ・インターナショナル日本は5月29日、米国ネバダ州で計画されている「Rhyolite Ridge Lithium-Boron Project(ライオライトリッジ・リチウム・ホウ素プロジェクト)」をめぐり、アムネスティ・インターナショナルがトヨタ自動車株式会社に送った書簡と、同社の回答内容を公表した。リチウムは電気自動車や蓄電池に使われる重要鉱物であり、脱炭素化を支える資源とされる一方、採掘地域では先住民族の権利、土地、文化的つながりへの影響が争点になっている。
公表資料によると、アムネスティは2026年2月、ライオライトリッジのリチウム鉱山計画に関し、トヨタに書簡を送った。同鉱山はまだ運用を開始していない。アムネスティは、トヨタがジョイントベンチャー「プライムプラネット&エナジーソリューションズ」を通じたオフテイク契約により、このプロジェクトに関与していると説明している。同社の株主構成は、トヨタ自動車が51%、パナソニックホールディングスが49%とされる。
アムネスティは、ライオライトリッジ・リチウム・プロジェクトについて、先住民族の「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」と自己決定権を侵害していると主張している。鉱山開発に関する同意が求められておらず、得られてもいないというのが同団体の見解だ。FPICは、先住民族の土地、領域、資源に影響する開発を進める際、代表機関を通じて誠実に協議し、事前に十分な情報を提供した上で同意を得るという考え方を指す。
この問題は、単に米国内の鉱山開発をめぐる地域紛争にとどまらない。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」は、企業に対し、事業活動や取引関係から生じる人権への悪影響を特定、防止、軽減し、説明する責任を求めている。アムネスティは、トヨタの人権方針やサプライヤー向けの持続可能性に関するガイドラインが国際規範に言及している一方、先住民族やFPICについては明確に触れていないと指摘した。
アムネスティがトヨタに示した質問は、リチウム調達やオフテイク契約の条件としてFPICの取得を義務付けているか、同鉱山でFPICが求められ取得されているかをどのように評価・検証しているか、人権・環境リスクに関するデューデリジェンスを実施したか、影響を受けるコミュニティ向けの苦情処理メカニズムを設けているか、という内容だった。企業の調達責任を、一次サプライヤーだけでなく、原材料の採掘段階までさかのぼって問う構成である。
トヨタは回答で、「人への敬意」は同社のコア・バリューであり、原材料調達を含む事業活動で人権を深く尊重すると述べた。その上で、プライムプラネット&エナジーソリューションズが調達活動を調査した結果、ネバダ州の当該鉱山からリチウムを受け取っていないことを報告したと説明した。トヨタ自身のデューデリジェンスでも、同社がこの鉱山からリチウムを受け取っていないことを確認したとしている。
人権上の論点は、企業が「直接調達していない」と説明した場合に、どこまでサプライチェーン上の関与を調査し、公開するのかという点にある。脱炭素化に必要な資源であっても、採掘地の先住民族の権利や文化的結びつきを軽く扱えば、環境対策と人権保護が衝突する。アムネスティの公表は、ライオライトリッジ計画そのものに加え、トヨタ自動車、プライムプラネット&エナジーソリューションズ、パナソニックホールディングスを含む電池供給網が、FPICをどのように確認するのかを問うものとなっている。

