1.国立ハンセン病資料館は6月7日まで、ギャラリー展「絵と編物でみる 加藤博子の作品世界」を開いている。
2.2025年12月2日に逝去したハンセン病回復者・加藤博子さんの絵と編物、計18点を展示する。
3.隔離政策の歴史を、制度説明だけでなく、一人の女性の創作活動と生活の軌跡から考える機会となる。

国立ハンセン病資料館は6月7日まで、ギャラリー展「絵と編物でみる 加藤博子の作品世界」を東京都東村山市青葉町4-1-13の同館企画展示室で開いている。会期は5月2日から6月7日までで、入場は無料。笹川保健財団は、2020年から国立ハンセン病資料館等の運営業務を厚生労働省から受託している。
展示では、2025年12月2日に逝去したハンセン病回復者の加藤博子さんが制作した絵と編物、計18点を紹介する。笹川保健財団によると、国立ハンセン病資料館で、ひとりの女性の画家の活動に焦点を当てた展示は初めて。資料館の案内では、加藤さんは1943年生まれ、12歳で駿河療養所に入所し、その後、岡山県の長島愛生園にあった邑久高等学校新良田教室に進学したとされる。
加藤さんは、療養所での生活の中で絵画制作に取り組み、美術展などへの入選を重ねた。駿河療養所で結婚した後、夫との社会復帰と駿河療養所への再入所を経験している。社会復帰にあたっては絵画制作を中断し、編物の技術を習得した。展示では、「自画像」「労働者の夜」「道」といった絵画のほか、「黄ロングニット」「青いスカート」「靴下」などの編物も取り上げる。
ハンセン病問題は、医学的な病気の説明だけでは捉えきれない。国の隔離政策の下で、患者・回復者は療養所での生活を強いられ、家族関係、教育、職業、結婚、地域生活に大きな制約を受けた。加藤さんの作品を展示することは、隔離の歴史を制度や年表として示すだけでなく、療養所の中で表現し、生活を立て直そうとした一人の女性の経験を通じて伝える方法でもある。
人権上の論点は、ハンセン病回復者を「被害の語り手」としてだけ扱わず、創作し、学び、働き、生活を選び取ろうとした主体として記録する点にある。絵画や編物は、病歴や療養所生活を説明する補助資料ではない。加藤博子さんが隔離下の苦難に向き合いながら、自らの時間、感情、技術を形にした表現である。国立ハンセン病資料館の企画展示室で6月7日まで開かれる同展は、ハンセン病問題を、差別と隔離の歴史、女性の表現、回復者の尊厳という複数の面から考える場となる。
公益財団法人笹川保健財団
URL:https://www.shf.or.jp/information/28138
出典 国立ハンセン病資料館
URL:https://www.nhdm.jp/events/list/10182/

