1.栃木県教育委員会が2023年3月、教職員向け不祥事防止資料を全面的に見直している。
2.性暴力、盗撮、ハラスメント、体罰、暴言、個人情報管理などを具体的な研修事例で扱う。
3.処分や学校への影響だけでなく、被害を受けた児童生徒の尊厳と相談体制を明記している。

栃木県教育委員会は2023年3月、教職員向け資料「服務規律の徹底と不祥事の撲滅を目指して」を作成した。今回、その内容を紹介する。2017年4月にまとめた従来資料を全面的に見直し、服務義務、不祥事の発生状況、研修用ワークシート、懲戒処分基準、相談窓口などを全103ページで整理した。県教委は、2022年度に教職員による不祥事が続発したことを受け、過去5年間の処分事案と県内外の具体例を校内研修へ取り入れる構成とした。
資料が分析した2017年度から2021年度までの県内処分状況では、懲戒処分を受けた人数は2018年度の13人が最多だった。懲戒処分には至らない指導措置は2021年度の32人が最も多い。年齢別では25~29歳が30件、月別では4月が22件となり、県教委は若手教員や学年・学校運営の中核を担う層を含め、職位や経験年数を問わない研修を想定している。これらは2021年度までの集計であり、現在の発生状況を示す統計ではなく、資料作成時の分析結果として読む必要がある。
研修事例は、わいせつ行為、盗撮、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、体罰、暴言、飲酒運転、交通事故・速度違反、個人情報の不適切な管理、公金処理、営利企業への従事を扱う。改訂では、クラウド上での個人情報管理、パワーハラスメント、盗撮などを追加し、栃木県や他県で起きた事案を基にワークシートを作成した。教職員が事例の問題点、被害、法的責任、発生を防ぐ行動を校内で検討する方式で、通知や処分基準の読み合わせにとどめない内容となっている。
わいせつ行為等の分析では、処分を受けた教職員の勤務先は中学校が46%を占め、小学校と中学校の合計は73%だった。被害者は自校の児童生徒が40%、自校以外の18歳未満が34%。県教委は、相談を契機に電話やメールで私的な関係を持つ事例や、指導を装った接触が段階的に深刻化する事例を挙げ、児童生徒とのSNSによる私的なやり取り、密室での1対1の指導、不必要な身体接触を避けるよう示している。
資料には、2022年4月施行の教育職員等による児童生徒性暴力等防止法も収録した。同法は、児童生徒の同意や暴行・脅迫の有無にかかわらず、教育職員による児童生徒性暴力等を禁止する。学校設置者には、早期発見、初期段階からの対応、中立・公正な調査、被害児童生徒の迅速な保護が課される。教職員不祥事を学校や教職員の信用問題だけで捉えれば、被害を受けた子どもの身体、尊厳、安心して学ぶ権利が後景に退く。資料が「声にならない悲痛な叫び」に触れた点は、被害児童生徒を中心に対応するという法の考え方に沿う。
相談体制として、校内の管理職、市町村教育委員会、栃木県教育委員会義務教育課・高校教育課、公立学校共済組合の健康相談窓口を掲載した。ただし、教職員本人の悩みを聞く窓口と、児童生徒や保護者が被害を申告する窓口は役割が異なる。各学校がこの資料を使う際には、相談を受けた後の報告経路、被害児童生徒と当該教職員を接触させない措置、記録の管理、教育委員会への連絡手順まで校内で確認する必要がある。栃木県教育委員会の103ページの資料は、こうした手順を学校ごとの研修と日常的な点検へ落とし込むための基礎資料となる。
栃木県教育委員会「服務規律の徹底と不祥事の撲滅を目指して」
URL:https://www.pref.tochigi.lg.jp/m03/fusyoujibokumetsu.html
