日弁連「不法滞在者ゼロ」強化策に反対 難民審査・家族分離を問題視

この記事のポイント

1.日本弁護士連合会が8月17日、「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」に反対する会長声明を公表
2.政府は約6万8,000人の不法残留者の減少を掲げる一方、日弁連は難民審査や家族分離と国際人権法との整合性を問題視
3.不法残留者と難民申請者を同一視せず、在留管理の迅速化と個別の保護審査を分けて検証する必要がある

日弁連

日本弁護士連合会は8月17日、「国際人権法に反する『不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~』に反対する会長声明」を公表した。出入国在留管理庁が2026年5月にまとめた強化策に対し、難民認定手続、送還、収容、家族の分離などに国際人権法上の問題があると主張している。

政府側の資料は、2026年1月1日時点で約6万8,000人としている不法残留者を着実に減少させることを政策目標の一つに掲げ、退去強制手続や送還などを強化する方針を示す。出入国管理は国家が行う行政作用であり、在留期限を超えた滞在への対応自体は制度上予定されている。争点になるのは、その執行過程で難民申請、家族関係、送還先での危険など、個人ごとに異なる事情をどのように審査するかである。

日弁連は、家族を分離する形で退去強制が実施された事例を取り上げ、家族生活を保障する自由権規約第17条、第23条や、子どもと父母の分離を扱う子どもの権利条約第9条との関係を指摘している。ここは、「在留資格がない」という一つの事実だけで結論を出すのではなく、日本にいる配偶者や子ども、生活基盤、送還先での事情をどこまで個別に考慮するのかという問題になる。

難民支援協会は5月26日の意見書で、難民申請者の約94%は申請時点で正規の在留資格を持っていたとし、2025年には難民認定、補完的保護、人道上の在留許可を合わせて1,186人が保護されたと説明する。さらに、迅速処理の対象となる「B案件」は、従来申請者の1%前後だったものが2025年に14.3%、1,615人へ増えたとして、振り分けの適正性を問題視している。これらは同協会による評価を含む数値・主張であり、政府の「不法残留者数」とは母集団が異なる。両者を混同しないことが制度を考える前提となる。

したがって論点は、「在留管理をするか、しないか」という二択ではない。退去強制を迅速化する行政目的と、難民に該当する可能性がある人の審査、家族生活、子どもの利益などを個別に保障する手続をどう両立させるかである。とりわけ難民認定では、誤って保護対象者を送還した場合に結果を後から回復できないことがあるため、処理件数の迅速化と審査の正確性を同一の指標で評価することはできない。

政府の強力推進パッケージと日弁連の8月17日声明は、同じ出入国管理政策を、行政執行と国際人権保障という異なる側面から評価している。今後の制度検証では、不法残留者数の増減だけでなく、難民審査の判断過程、送還対象者の家族事情、異議申立てや司法審査へのアクセスも併せて確認する必要がある。

出典

日本弁護士連合会「国際人権法に反する『不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~』に反対する会長声明」
URL:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2026/260817.html

出入国在留管理庁「『不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~』について」
URL:https://www.moj.go.jp/isa/09_00048.html

難民支援協会「難民の送還につながる入管庁『ゼロプラン』の『強力推進』に反対する意見」
URL:https://www.refugee.or.jp/wp-content/uploads/2026/05/JARcomment260526.pdf

出入国在留管理庁「難民・補完的保護対象者認定制度」
URL:https://www.moj.go.jp/isa/refugee/index.html

人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、企業、公益団体、国際機関等が公表する一次情報をもとに、差別、労働、教育、福祉、司法・制度、外国人共生、ビジネスと人権などに関するニュースと解説を発信しています。掲載内容は、出典確認を行ったうえで、制度的背景や人権上の論点を補足して構成しています。

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