大阪市は、国の事業を活用し、「大阪市障がい児通所支援事業所等における性被害防止対策に係る設備等支援事業」を実施している。対象は、市内に所在する障がい児入所施設、障がい児通所支援事業所、障がい児相談支援事業所を運営する法人で、児童の性被害防止を目的とした設備の購入・更新に係る経費を補助する。補助基準額は1事業所当たり10万円、補助率は4分の3。対象経費には、パーテーション、簡易扉、簡易更衣室、カメラ、人感センサーライトなどが含まれる。
障がい児が利用する支援施設では、発達特性や障害の状況により、被害を言葉で説明しにくい子どもや、周囲に助けを求めにくい子どもがいる。性被害防止対策は、単に防犯設備を導入する問題ではなく、子どもの尊厳、身体の安全、安心して支援を受ける権利を守るための基盤整備である。こども家庭庁の取組を背景に、放課後等デイサービスや児童発達支援などの現場で、設備面と運用面の双方から安全管理を見直す動きが広がっている。
今回の補助制度では、施設整備を目的とする経費や、老朽化・破損に伴う通常の修繕、設備のリース費用などは対象外とされている。また、交付決定後に発注・契約を行い、令和8年3月31日までに支払いを完了した経費が対象となる。複数の事業所を運営する法人は、法人単位で申請書類をまとめて提出する必要があり、同一敷地内の事業所を1事業所として扱うかどうかも、実際に支援を行うスペースの状況によって判断される。
一方で、カメラの設置には慎重な運用も求められる。大阪市は、カメラ設置の要否について、保護者や児童の状況、事業所の事情を踏まえて各事業所で判断するよう求めている。映像により個人を識別できる場合は個人情報に該当するため、保管・管理体制の整備、設置目的の説明、撮影中であることの掲示などが必要となる。性被害防止を目的とする設備が、子どもや保護者に新たな不安を与えないよう、透明性のある運用が欠かせない。
障がい児支援の現場では、安全確保とプライバシー保護を対立的に捉えるのではなく、子どもの権利保障という同じ目的の中で両立させる必要がある。設備の導入は有効な手段だが、それだけで被害を防げるわけではない。職員研修、複数人対応の徹底、相談しやすい環境づくり、保護者への説明、事案発生時の報告体制などを組み合わせてこそ、制度の実効性は高まる。今回の補助は、障がい児施設における性被害防止を「個々の事業所の努力」に委ねず、行政が費用面から後押しする取組として位置づけられる。

