1.全国被害者支援ネットワークは5月20日と27日、中央大学法科大学院で犯罪被害者支援を学ぶ講座を開いた。
2.対象は大学生・大学院生で、犯罪被害者等が受ける心身への影響、経済的困難、支援活動への理解を深める内容とされた。
3.犯罪被害者支援は、刑事手続だけでなく、生活再建、二次被害防止、専門職育成に関わる人権課題である。

公益社団法人全国被害者支援ネットワークは5月20日と27日、中央大学法科大学院で「犯罪被害者支援を考える・学ぶ講座」を開催した。担当は小木曽綾教授。講座は、日本の未来を担う大学生・大学院生を対象に、犯罪被害者等が被害によって受ける心身への影響や経済的困難、犯罪被害者等支援活動への理解を深める目的で開かれた。開催費用は無料で、日本財団預保納付金支援事業として実施された。
犯罪被害者支援を法科大学院で扱う意味は、刑事事件を「加害者を処罰する手続」としてだけでなく、被害を受けた人と家族・遺族の生活再建を含む問題として学ぶ点にある。犯罪被害に遭った人は、身体的被害や精神的苦痛に加え、医療費、転居、休職・離職、裁判対応、報道対応など、複数の負担を同時に抱えることがある。法律家を目指す学生にとって、手続の知識とあわせて、被害者の置かれる状況を理解することは、将来の実務に直結する。
国の制度面では、犯罪被害者等基本法が、犯罪被害者等のための施策について基本理念を定め、国、地方公共団体、国民の責務を明らかにしている。同法に基づき、政府は犯罪被害者等施策を総合的・計画的に進めるため、犯罪被害者等基本計画を策定している。第5次犯罪被害者等基本計画は、令和8年4月1日から令和13年3月31日までを計画期間として、2026年3月17日に閣議決定された。
第5次基本計画では、犯罪被害者等給付金の引上げ、犯罪被害者等支援弁護士制度の創設、捜査段階から判決後までの個人特定事項の保護を可能とする刑事訴訟法改正など、第4次計画期間中に進んだ施策が整理されている。2023年10月からは、国家公安委員会と警察庁が犯罪被害者等施策の総合調整を担う体制となり、地方における途切れない支援やワンストップサービスの実現に向けた取組も始まっている。
人権上の論点は、犯罪被害者を刑事手続の周辺に置かず、権利利益を保護される主体として扱えるかにある。被害直後の安全確保、医療・心理支援、法的支援、経済的支援、学校・職場との調整、報道やインターネット上の二次被害防止は、それぞれ異なる専門性を要する。支援者側に被害の影響や接し方への理解が乏しければ、相談そのものが被害者をさらに傷つける場になり得る。
全国被害者支援ネットワークが中央大学法科大学院で実施した今回の講座は、支援制度の存在を伝えるだけでなく、将来の法律実務や支援活動に関わる学生に、犯罪被害者等の現実を早い段階で学ばせる取組である。5月20日と27日の講座は、専門職教育の場で被害者支援を扱う事例として、刑事司法と生活再建支援を結び付ける機会となった。
公益社団法人全国被害者支援ネットワーク「中央大学法科大学院で犯罪被害者支援を考える・学ぶ講座を開催しました」
URL: https://www.nnvs.org/news/post-16296/
参考:警察庁「犯罪被害者等基本計画」
URL: https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/shiryou/keikaku/index.html
参考:e-Gov法令検索「犯罪被害者等基本法」
URL: https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC1000000161

