
2019年5月24日、アイヌ施策推進法が施行された。同法は、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活でき、その誇りが尊重される社会の実現を目的としている。法律上、アイヌであることを理由とした差別の禁止が明記された点に、人権政策上の重要な意味がある。
アイヌの人々をめぐっては、歴史的な同化政策、言語や文化の継承、生活環境、教育における理解不足、偏見や差別が課題とされてきた。近年は文化振興や地域振興の取組が進む一方で、民族としての尊厳を尊重する視点が欠かせない。制度の目的は、文化を保存することだけでなく、差別のない共生社会を実現することにある。
人権の観点では、アイヌ文化を「過去の伝統」としてのみ扱わないことが重要である。現在を生きる人々の権利、誇り、生活に関わる課題として理解する必要がある。地方公共団体、教育関係者、観光事業者には、啓発や情報発信の際、固定的なイメージを再生産しない配慮が求められる。アイヌ施策推進法の節目は、多民族共生を制度と日常の両面から考える機会となる。
