反差別国際運動(IMADR)は2026年2月16日、「ヘイトにNO!全国キャンペーン」と題した署名活動を開始した。署名の宛先は内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長で、ヘイトスピーチへの反対と、よりよい多民族・多文化共生社会の実現を求める内容である。署名はChange.orgによるオンライン署名と紙の署名用紙の双方で受け付けており、締切は2026年5月31日とされている。
署名では、首相自らがヘイトスピーチに反対することを明言すること、差別を禁止する法律をつくること、日本が加盟する国際人権諸条約に基づき日本に暮らす外国人の人権が守られる制度にすること、外国人労働者に差別なく労働法を適用することを求めている。呼びかけ団体には、移住者支援団体、外国人技能実習生支援団体、労働組合関係団体、反貧困団体などが名を連ねており、外国人差別、労働、人権、貧困の課題を横断するキャンペーンとして位置づけられる。
背景には、外国人や民族的マイノリティに対する排斥的な言説が、街頭やインターネット、政治的言説の中で広がっているとの危機感がある。IMADRは、2025年7月の参議院選挙の前後にヘイト言動が大きくなり、その多くがうそやデマに基づくものだと指摘している。外国人住民や移住労働者を社会不安の原因であるかのように語る言説は、地域で暮らす人々の安全や尊厳を脅かし、差別的な扱いを正当化する空気を生みかねない。
日本では2016年にヘイトスピーチ解消法が施行され、国と地方公共団体に相談体制の整備や教育・啓発を求める枠組みが整えられた。しかし同法は、ヘイトスピーチを明確に禁止し罰則を科す法律ではなく、被害の防止や救済の実効性には課題が残る。川崎市のように条例で差別的言動への対応を進める自治体もある一方、全国的には対策に差があり、インターネット上の差別的投稿への対応も十分とはいえない。今回の署名は、現行制度の限界を踏まえ、包括的な差別禁止法制を求める市民社会の動きとして見ることができる。
人権の観点から重要なのは、ヘイトスピーチを単なる「過激な意見」や「言葉の問題」として扱わないことである。特定の民族、国籍、出身、在留資格などを理由に排除や敵意を向ける言動は、当事者の人格を傷つけるだけでなく、地域社会での生活、就労、教育、医療利用、子どもの安心にも影響する。自治体、学校、企業、地域団体には、外国人住民を一時的な労働力ではなく、地域を共に構成する住民として位置づけ、デマや差別的言動を見過ごさない環境づくりが求められる。今回のキャンペーンは、差別のない社会を求める声を可視化し、制度整備と地域の実践を結び付ける取組といえる。
反差別国際運動(IMADR)
URL:https://imadr.net/notohate2026/

