愛知県のハンセン病療養所入所者3人が郷土訪問 隔離政策の歴史と故郷との交流

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この記事のポイント

1.愛知県出身のハンセン病療養所入所者3人が11月9日から11日まで故郷を訪問し、県知事らとの面談も予定されている。
2.郷土訪問事業は1966年度に始まり、2002年度から愛知県が実施している。
3.隔離政策の歴史とハンセン病問題解決促進法を踏まえ、療養所入所者の自己決定、名誉回復、故郷とのつながりを考える。

愛知県のロゴ

2療養所の入所者3人が愛知県へ

愛知県は2026年11月9日から11日まで、県出身のハンセン病療養所入所者3人を迎える郷土訪問事業を実施する。参加するのは、東京都の多磨全生園から2人、静岡県の駿河療養所から1人。11月10日午後1時からは、県議事堂1階の議会ラウンジで、大村秀章知事、県議会副議長、愛知県地域婦人団体連絡協議会の山田久子会長との面談が予定されている。

愛知県によると、2026年10月1日現在、県出身の入所者は4療養所に計21人おり、そのうち訪問を希望した3人が参加する。長島愛生園と邑久光明園(いずれも岡山県)からの参加はない。

滞在中は、名古屋城、名城公園、名古屋港水族館、徳川園、徳川美術館などへの集団観光や個別行動が予定されている。集団観光には愛知県地域婦人団体連絡協議会の役員が付き添う。体調などにより参加者や日程が変更される場合もある。

1966年度に始まった郷土訪問事業

愛知県の郷土訪問事業は、1966年度に藤楓協会愛知県支部が開始した。2001年度までは同支部が実施し、2002年度から愛知県が引き継いでいる。

この事業の背景には、ハンセン病患者や元患者が長期にわたって故郷や家族、地域社会との関係を制限されてきた歴史がある。

ハンセン病は、らい菌によって起こる感染症であり、現在では薬による治療法が確立している。感染力は弱く、日常生活で感染することは極めてまれである。

しかし、日本では1907年に始まった隔離政策が長く続き、1931年の「癩予防法」、1953年の「らい予防法」などによって患者の隔離が制度化された。治療法が確立した後も政策は継続され、1996年に「らい予防法」が廃止されるまで続いた。

隔離政策は、患者本人だけでなく、家族関係、就職、結婚、地域との交流などにも影響を及ぼした。病気への偏見と制度による社会的排除が重なったことが、ハンセン病問題の特徴である。

2001年の熊本地裁判決と名誉回復

2001年5月11日、熊本地方裁判所はハンセン病国家賠償請求訴訟で原告勝訴の判決を言い渡した。国の隔離政策に関する責任が司法判断によって示され、政府は控訴しなかった。

その後、補償や名誉回復、療養所入所者の生活支援などが進められた。2009年には「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」が施行された。

同法は、患者であった人などの福祉の増進、名誉回復、社会復帰の支援、療養所での生活保障などを定めている。法律の趣旨は、すべての入所者が療養所を離れることを目標にするものではない。

長年生活してきた療養所で暮らし続ける意思も、地域社会との交流を希望する意思も尊重されるべきものである。本人にとっての生活の場や人間関係を、一律に外部が決めることは適切ではない。

故郷に帰ることと、故郷との関係を持ち続けること

郷土訪問事業は、療養所入所者が故郷との関係を維持するための具体的な機会となる。

ただし、故郷を訪れることと、故郷で再び生活することは同じではない。長い年月の間に家族関係や地域の生活環境が変化し、帰郷後の生活基盤を築くことが困難な場合もある。

それでも、出身地の風景に触れ、地域の人と交流し、自分の意思で訪問先を選べることは、隔離政策によって制約されてきた生活上の選択を取り戻すことにつながる。

国連人権理事会では、ハンセン病に関する差別撤廃の原則とガイドラインが採択されている。その基本にあるのは、病歴を理由として移動、居住、家族生活、社会参加などの権利が制限されないという考え方である。

こうした国際的な原則と照らしても、入所者本人の意思を尊重しながら交流の機会を設けることには、人権保障との具体的な接点がある。

取材時の本人同意とプライバシー

愛知県は今回の郷土訪問について、報道機関が取材を希望する場合、参加者本人の事前了解が必要であると明記している。取材場所、時間、インタビューや撮影の有無などを、11月5日正午までに県健康対策課へ連絡するよう案内している。

病歴や療養所での生活に関する情報は、本人のプライバシーと密接に関係する。ハンセン病問題では、過去に患者や元患者、その家族が差別や偏見を受けてきた経緯があり、個人情報を公表するかどうかを本人が判断できることも大切な権利である。

愛知県は今回も参加希望者の意思を確認したうえで、県幹部との面談や集団観光などを計画している。1966年度から続く郷土訪問事業は、歴史的な隔離政策の問題を踏まえながら、入所者が故郷との関係を自らの希望に沿って維持するための機会となっている。

出典

愛知県「愛知県出身のハンセン病療養所入所者が郷土を訪問されます」
URL:https://www.pref.aichi.jp/press-release/kenkotaisaku-kyodohoumon2026.html

厚生労働省「ハンセン病に関する情報ページ」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hansen/index.html

厚生労働省「ハンセン病に関する主な出来事」
URL:https://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/01/h0131-5/dekigoto.html

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人権ニュース編集部

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