アイスランド「女性の休日」から51年 男女平等世界1位と2026年の賃金制度改革

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この記事のポイント

1.1975年10月24日、アイスランドで女性の約90%が仕事や家事を休む「女性の休日」を実施。女性の労働が社会を支えていることを示した歴史的な行動から51年を迎える。
2.2026年のジェンダー・ギャップ指数でアイスランドは17年連続の世界1位、男女格差の解消率は93.0%。日本は145か国中117位となり、両国の政治参加や雇用における格差が改めて示された。
3.アイスランドは2026年9月、従来の男女同一賃金認証制度を廃止し、企業の賃金格差報告制度に転換。歴史的な女性運動と、その後の法制度の発展を検証する。

フィヨルドの街に響く連帯の歓声
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女性の90%が仕事と家事を休んだ日

1975年10月24日、北大西洋の島国アイスランドで、女性たちが職場や家庭での仕事を一斉に休む「女性の休日(Kvennafrídagurinn)」を実施した。主催者の推計では国内の女性の約90%が参加し、首都レイキャビクの中心部にあるライキャルトルグ広場には約2万5,000人が集まった。学校や保育施設、商店、魚加工工場などでは通常の業務が困難になり、男性たちが子どもを職場へ連れて行く光景も生まれた。この行動は、賃金を伴う職場の労働だけでなく、家庭内で行われる家事や育児にも社会を支える役割があることを、仕事を休むという方法で示した。

2026年10月24日、この歴史的な行動から51年を迎えた。アイスランドは現在、世界経済フォーラム(WEF)のジェンダー・ギャップ指数で17年連続の世界1位となっている。しかし、同国の男女平等は、1975年の運動だけで実現したものではない。翌1976年には包括的な男女平等法が施行され、その後も女性の政治参加、育児休業制度、企業の賃金管理などを対象に法制度が整えられてきた。2026年5月18日には男女平等法制の施行50周年を迎え、9月1日には企業の賃金格差を把握する制度が大きく変更された。歴史的な女性運動から法制度の整備へ、さらに制度の実効性を検証する段階へと進んできた経緯は、男女平等政策を考えるうえで具体的な比較材料となる。

1975年、国際婦人年が女性運動を結びつけた

1975年は、国際連合が定めた「国際婦人年」だった。国連は同年6月、メキシコシティで第1回世界女性会議を開催し、女性の平等、開発、平和を国際的な課題として取り上げた。アイスランドでも女性団体などが集まり、女性の社会的地位について議論する機会が設けられた。

同年6月20~21日にレイキャビクで開催された女性会議では、女性たちが10月24日に仕事を休み、自らの労働が社会に果たす役割を示す構想が提案された。10月24日は国連憲章が発効した「国連の日」でもある。アイスランドの女性たちは、国際婦人年という国際的な機会を利用し、国内の男女格差を可視化しようとした。

この構想には、1970年に結成された女性解放運動の団体「レッド・ストッキング運動(Redstockings)」も関わっていた。同団体は、それ以前から女性による労働停止を提案していたが、1975年には異なる政治的立場の女性団体、労働組合、職業団体などが参加する幅広い運動へと発展した。

アイスランド女性史資料館(Kvennasögusafn)に保存されている当時の記録によると、6月の女性会議には200人を超える代表が出席した。9月11日には50以上の団体や関係組織の代表が集まり、実施に向けた委員会を設置している。職場への呼びかけ、広報、資金調達、地方との連絡、当日の集会運営などを分担し、全国規模の参加につなげた。

興味深いのは、主催者が行動を「ストライキ」ではなく「休日」と呼んだことである。当時の記録では、ストライキという表現に抵抗を感じる女性がいることや、労働停止に伴う法的・社会的な問題が考慮されたと説明されている。

女性の中には労働組合に所属する雇用労働者だけでなく、専業主婦、自営業者、農業従事者などもいた。すべての女性が共通して参加できる形式を選んだことが、運動の広がりに結びついた。

家庭内の仕事を休むことで、見えない労働を可視化

1975年の「女性の休日」が、通常の労働争議と異なっていたのは、職場での労働だけでなく、家事や育児などの無償労働も対象とした点である。

家事、育児、家族の介護など、直接の賃金や報酬が支払われない働きは「アンペイドワーク(無償労働)」と呼ばれる。日常生活を維持するために欠かせないにもかかわらず、賃金統計や企業の生産活動では、その価値が十分に表れにくい。

1975年のアイスランドでは、女性が家庭内で行う仕事を当然の役割とする考え方が根強く、女性の就業が増加する中でも、その賃金を家計の補助的な収入として扱う意識が残っていた。

在アイスランド日本国大使館の鈴木亮太郎大使が2023年12月に寄稿した文章でも、当時の女性の賃金は男性より低く、家事、育児、農場での家畜の世話などの経済的価値が十分に評価されていなかったと説明されている。

10月24日の一斉休業では、女性の多い職場で業務が停止したほか、家庭でも男性が子どもの世話や食事の準備を担うことになった。当時の参加者による回想記録には、子どもを職場へ連れてきた男性たちの姿や、女性がいないことで通常の生活が維持できなくなった様子が残されている。

この行動で示されたのは、女性が職場で果たしていた経済的役割だけではない。家庭内で女性が担っていた仕事が、男性の就労や社会生活を支える基盤でもあったという事実である。

家事や育児を家庭内の私的な問題としてのみ扱う場合、その負担が特定の性別に集中することによって、就労時間、所得、昇進、学習、政治参加などに差が生じることを把握しにくい。

1975年の女性たちは、一斉に仕事を休むことで、普段は外から見えにくい労働の存在を示した。女性が社会に参加する権利だけでなく、社会を支えるための負担が誰に集中しているのかを問う運動でもあった。

1976年の男女平等法から女性大統領誕生へ

「女性の休日」の翌年、1976年5月18日、アイスランドで初の包括的な男女平等法が施行された。法律では男女が平等な権利を持つことを明確にし、男女平等を推進するための制度的な枠組みが整えられた。

2026年5月18日、アイスランドの平等局(Directorate of Equality)は、男女平等法制の施行50周年に当たって声明を公表した。マルタ・リリャ・オルセン局長は、女性が権利の平等を法律に明記するよう求めてきた長年の運動に言及し、男女平等を実現するための法制度が歴史的な取組の上に築かれてきたことを説明している。

政治参加でも大きな変化が生じた。

1975年当時、アイスランドの国会議員60人のうち女性は3人で、割合は5%にすぎなかった。1980年にはヴィグディス・フィンボガドッティル氏が大統領に選出され、民主的な選挙によって選ばれた世界初の女性大統領となった。

1982年には女性の政治参加を推進する「女性同盟」が地方選挙に参加し、翌1983年には国政選挙にも進出した。その後、女性の政治的代表性は拡大していった。

ただし、1975年の行動だけが女性大統領の誕生や制度改革を直接もたらしたと断定することはできない。女性の選挙権は1915年に認められており、それ以前から女性団体による社会運動や政治参加の活動が続いていた。1975年の「女性の休日」は、そうした長年の運動の中で、異なる立場の女性たちが共通の要求を掲げた出来事として理解できる。

1995年には男女の権利の平等が憲法に明記され、2000年には父親に独立した3か月の有給育児休業を認める制度が導入された。2010年には一定の企業の取締役会について性別構成に関する法的な基準が設けられている。

このように、アイスランドの制度整備は、女性に対する差別の禁止だけでなく、男性の育児参加や企業の意思決定における女性の参画を含む形へと発展した。

2026年の男女格差指数、アイスランド93%で世界1位

世界経済フォーラム(WEF)が2026年9月16日に公表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2026」では、アイスランドが145か国・地域中1位となった。総合指数は0.930で、男女格差の解消率は93.0%だった。

アイスランドの首位は17年連続で、男女格差の90%以上を解消した唯一の国となっている。2位はフィンランドの0.872、3位はノルウェーの0.857だった。

これに対し、日本は0.670で117位となった。両国の総合指数の差は0.260ポイントある。

ジェンダー・ギャップ指数は、経済参加と機会、教育達成、健康と生存、政治的エンパワーメントの4分野から構成されている。各国の経済的な豊かさや女性の生活満足度をそのまま比較するものではなく、男女の間に存在する格差の大きさを示す指標である。

2026年のアイスランドは、経済参加と機会の分野で81.6%、政治的エンパワーメントの分野で95.4%の男女格差を解消したと評価された。政治分野の数値は、世界でも突出している。

現在のアイスランドでは、2024年8月に就任したハトラ・トーマスドッティル氏が大統領を務め、同年12月に発足した連立政権ではクリストルン・フロスタドッティル氏が首相となっている。日本の外務省によると、2024年12月発足時の11人の閣僚のうち6人が女性だった。

しかし、女性が大統領や首相を務めていることと、あらゆる職場や家庭で男女平等が実現していることは別の問題である。ジェンダー・ギャップ指数で首位の国にも、賃金、就労、家事・育児の負担などに格差が残っている。

世界1位でも賃金格差は10.4%、職業間の偏りも残る

アイスランド統計局が2025年9月11日に公表した統計によると、2024年の男女間賃金格差は、調整前の平均時間当たり賃金で10.4%だった。前年2023年の9.3%から拡大している。

年齢別では24歳以下が0.7%だったのに対し、35~44歳は9.4%、55~64歳では16.7%に達した。

産業別では金融・保険業の格差が26.1%となっており、職種や産業によって差が大きいことも示された。

この数値は、同一企業で同じ仕事内容を担当する男女の賃金に、必ず10.4%の差があるという意味ではない。調整前の男女間賃金格差は、職業、勤続年数、教育、役職などの違いを補正せず、男女の平均賃金を比較したものである。

アイスランド統計局は、男女が異なる産業や職種に集中する労働市場の構造が、賃金格差を説明する主要な要因の一つだと指摘している。2024年の調査では、民間部門の賃金格差が15.2%だったのに対し、中央政府部門は7.7%、地方政府部門は4.0%だった。

男女が同じ条件で働いているにもかかわらず賃金が異なる問題と、女性が低賃金の職種に集中している問題は、異なる政策対応を必要とする。

前者には公正な賃金制度や評価基準が関係し、後者には教育、採用、昇進、職業選択、ケア責任の分担などが関係する。

女性の労働参加が進んだ国でも、女性が管理職に就く機会や高賃金職種へのアクセスが限られていれば、男女間賃金格差は残り得る。

アイスランドの統計は、男女平等を実現するためには、差別的な賃金設定を防ぐだけでなく、職業生活の選択肢やキャリア形成の機会を広げることが必要であると示している。

2026年9月、男女同一賃金認証制度から報告制度へ転換

2026年にアイスランドで実施された制度改正の中でも、企業の賃金管理に関する見直しは特徴的である。

同国では、男女間の不合理な賃金差別を防止するため、企業などに対して男女同一賃金の認証を取得させる制度を導入していた。2017年の法制化を経て、2018年から段階的に運用された制度で、企業が公正な賃金管理の仕組みを整備しているかを第三者が確認する方法だった。

しかし、2026年9月1日、改正法の施行によって、従来の男女同一賃金認証制度と確認制度は廃止された。

新制度では、企業が定期的に賃金格差の状況を分析し、行政機関へ報告する仕組みに切り替えられた。

対象となるのは、年間平均で従業員50人以上の企業や公的機関である。対象事業者には、3年ごとに男女間の賃金格差に関するデータを平等局へ提出する義務が課される。

報告には、客観的な基準に基づく職務の分類、男女別の賃金分析、合理的な理由を説明できない格差が見つかった場合の是正計画などが含まれる。

従業員25人以上の企業や公的機関については、引き続き男女平等に関する計画を策定・提出する義務がある。ただし、賃金格差報告の対象となる50人以上の事業者とは、適用範囲が異なる。

平等局は2026年9月2日、新制度に対応したデータ管理システムの運用を開始したと公表した。企業は同システムを通じて報告資料を提出し、提出状況の確認や制度に関する案内を受けることができる。

新制度では、賃金分析の結果を従業員に示すことも義務づけられている。個人情報保護上の配慮を前提として、賃金決定に使われる基準や男女間の格差を、職場の中で確認できるようにする仕組みである。

この改正は、男女同一賃金の原則そのものを廃止したものではない。第三者による認証を中心とする制度から、企業が実際の賃金データを分析し、格差の有無と是正状況を報告する制度へ変更したものである。

認証制度は、一定の管理手続きが整っているかを確認する方法だった。これに対して新制度は、賃金格差の実態と是正措置を継続的に把握することに重点を移している。

もっとも、制度の変更によって男女間賃金格差が縮小するかどうかは、施行直後の段階では判断できない。報告内容の質、行政による監督、企業が実施する是正措置、実際の賃金統計の変化などを検証する必要がある。

男女平等を制度の形式だけで評価するのではなく、格差の実態と改善結果を確認する方向への転換が、2026年の制度改正の特徴といえる。

2025年にも「女性の休日」、首相参加の2023年に続く行動

アイスランドの女性たちは、1975年の運動を歴史的な記念行事として保存するだけでなく、その後も同様の行動を繰り返してきた。

女性史資料館によると、「女性の休日」は1985年、2005年、2010年、2016年、2018年、2023年、2025年にも実施されている。

2023年10月24日には、男女間賃金格差とジェンダーに基づく暴力への抗議を目的とする全国的な行動が行われた。当時の首相カトリン・ヤコブスドッティル氏も参加し、賃金を伴う仕事と無償労働の双方を休むよう呼びかけられた。

この運動では、女性だけでなく、ノンバイナリーの人々にも参加が呼びかけられた。学校や図書館などで業務が制限され、医療機関では緊急対応を中心とする体制が取られた。

2025年10月24日には、最初の「女性の休日」から50周年を記念する全国的な行動が実施された。

同年10月23日、アイスランド政府の公式ポータルサイトは、女性団体、労働組合、LGBTQ+関係団体などが翌日の行動を呼びかけていることを公表した。北アイスランドの医療機関では、女性やノンバイナリーの従業員が職員の大きな割合を占めるため、通常業務を縮小すると説明した。

ただし、利用者の健康と安全に関わる業務は維持する方針とし、緊急性のない業務を延期する方法が採用された。

こうした対応からは、女性の労働が社会を支えていることを可視化する運動と、医療や福祉など生命・健康に関わるサービスを確保する必要性との調整も読み取れる。

1975年の運動は主に賃金格差と女性の社会的地位を問題としていたが、2023年の行動では性暴力やジェンダーに基づく暴力が明確なテーマとなった。

世界1位という国際指標上の評価を受けているアイスランドでも、当事者たちが現在の制度では十分に解決されていない問題を掲げ、政策や職場の改善を働きかけている。

育児休業と保育の間に残る「ケアの空白」

1975年の「女性の休日」が示した家事・育児の負担は、51年後のアイスランドでも政策課題となっている。

2025年12月5日、アイスランド平等局は、育児休業の終了から子どもが保育施設へ入るまでの期間に生じる「ケア・ギャップ(care gap)」について、自治体の制度を調査した報告書を公表した。

この調査では、2025年6月に自治体を対象として、家庭での保育に対する手当、保育施設の利用制度、保育料などを確認した。

平等局は、育児休業と保育制度の間に空白が生じると、家族の就労や所得に影響し、従来の性別役割分担が強化されるおそれがあると指摘している。

例えば、育児休業が終了しても保育施設を利用できない場合、家族の誰かが就業時間を減らしたり、職場を離れたりしなければならない可能性がある。その負担が女性に偏れば、就業継続や昇進、将来の所得にも差が生じ得る。

育児休業を男女双方が利用できる制度とするだけでは、家庭内のケア責任の偏りを完全に解消できない。保育サービスの利用可能性、自治体による支援、職場の働き方なども関係する。

アイスランド平等局は、自治体が施策を決定する際には、性別によって影響が異ならないかを分析することや、保育分野の人材を確保することなどを報告書で取り上げている。

ここでも、1975年の「女性の休日」と現在の政策課題が結びつく。

家事や育児を女性が担うことを当然とする状況では、女性の就労が増えても無償労働の負担は減らない可能性がある。家庭内の役割分担だけでなく、保育や介護を利用できる制度、男性の育児参加、働き方を変更できる職場環境を組み合わせることで、男女双方の選択肢を広げることができる。

女子差別撤廃条約が定める実質的な男女平等

アイスランドの歴史と制度改革を国際人権法から考える際には、1979年12月18日に国連総会で採択された「女子差別撤廃条約」が参考となる。

同条約は、女性に対する差別を法律上禁止するだけでなく、差別を生む社会的な慣行や性別役割分担の見直しも締約国に促している。

第5条では、男女の固定的な役割分担や、性別による優劣を前提とした偏見・慣行の撤廃が扱われる。第7条は政治的・公的生活への参加、第11条は雇用に関する男女平等を定めている。

第11条には、同一価値の労働についての平等な報酬や、職業訓練、雇用の機会、社会保障などに関する規定も含まれる。

1975年のアイスランドでは、女性の雇用機会と家庭内の無償労働が主な問題として示された。2026年の賃金格差報告制度は、企業による賃金決定の透明性を高め、同一価値労働同一賃金の原則を実効的に確保しようとするものである。

両者は異なる時代の取組だが、性別を理由とする不利益をなくし、実際の生活や職業上の機会を平等にするという目的では共通している。

男女平等には、法律上の権利を等しく定める「形式的な平等」と、制度や慣行によって生じている不利益を是正する「実質的な平等」という二つの側面がある。

法律で男女に同じ権利が与えられていても、育児や介護の負担、賃金制度、昇進の条件などに格差が残れば、実際に行使できる機会には違いが生じる。

アイスランドの女性運動と法制度の歴史は、法律による権利保障を出発点としながら、その後も制度の実効性を検証し、見直していく過程として理解できる。

日本117位との比較、雇用拡大だけでは解消しない格差

日本では、2026年版男女共同参画白書において、2025年の15~64歳女性の就業率が75.3%となったことが示された。20年前の2005年と比べると17.2ポイント上昇している。

女性の年齢階級別労働力率にみられた、出産・育児期に低下する「M字カーブ」は、ほぼ解消されたと説明されている。

しかし、正規雇用比率は25~29歳の62.8%をピークとして低下する「L字カーブ」が残っている。

賃金格差も続いている。2025年の男性一般労働者の所定内給与水準を100とした場合、女性は76.6だった。正社員・正職員に限っても78.7となっている。

これらの数値は、アイスランドの平均時間当たり賃金格差10.4%と直接比較できない。日本の所定内給与とアイスランドの調整前時間当たり賃金では、対象となる労働者や集計方法が異なるためである。

それでも、両国に共通しているのは、女性の就業が拡大しても、賃金やキャリア形成における男女格差が自動的に解消されるわけではないという点である。

日本では、男女雇用機会均等法による差別禁止、女性活躍推進法による企業の情報公表、育児・介護休業法による仕事と家庭の両立支援など、複数の制度が整備されている。

アイスランドとの比較で参考になるのは、これらの制度を導入すること自体ではなく、企業の賃金制度や従業員の働き方について、どのような情報を把握し、その結果を是正措置につなげるかという仕組みである。

2026年9月にアイスランドが導入した賃金格差報告制度は、企業に対して、職務の分類と賃金分析を行い、説明できない格差が見つかった場合には是正計画を示すことを課している。

日本でも男女間賃金差異の公表制度などが導入されているが、対象事業者、報告項目、職務評価の方法、行政による監督には違いがある。

両国の制度を比較する場合には、単に公表義務の有無を見るだけでなく、企業が格差の原因を分析し、改善につなげられる仕組みになっているかを確認することができる。

51年間の歴史が示す制度改革と社会参加の関係

1975年10月24日の「女性の休日」は、女性の約90%が仕事や家事を休むことで、普段の社会生活が女性の有償・無償の労働に支えられていることを示した。

その後、アイスランドでは男女平等法、女性の政治参加を支える取組、育児休業制度、企業の賃金管理制度などが整備された。2026年には男女平等法制の施行50周年を迎え、9月から新たな賃金格差報告制度が実施されている。

この歴史を「1975年のストライキによって男女平等が完成した」と理解することは適切ではない。

女性の政治参加や雇用機会の拡大には、長年の社会運動、法制度、労働市場の変化、教育、家庭内の役割分担など、複数の要因が関係している。世界経済フォーラムの2026年版報告書でも、アイスランドの男女格差解消率は93.0%であり、完全な平等に到達したわけではない。

2025年に実施された50周年の「女性の休日」でも、賃金格差やジェンダーに基づく暴力への対応が引き続き問題とされた。アイスランド平等局は同年12月、育児休業と保育制度の間に生じるケアの空白について報告書を公表し、2026年には賃金格差報告制度への移行を進めた。

一連の経緯から確認できるのは、市民による社会運動、法律による権利保障、統計による格差の把握、制度の見直しが、それぞれ異なる役割を担ってきたことである。

2026年10月24日に「女性の休日」から51年を迎えるアイスランドでは、平等局が新しい賃金格差報告制度を運用し、従業員50人以上の企業や公的機関による報告を受け付ける。1975年に女性たちが示した労働の価値を、現在の賃金制度や職場の実態にどのように反映するのか。制度変更後の賃金格差の推移と企業の是正措置は、今後の施策を検証する具体的な材料となる。

出典

アイスランド女性史資料館「The Women’s Day Off 1975」 URL:https://kvennasogusafn.is/index.php?page=womens-day-off

アイスランド女性史資料館「Women’s Day Off 1975(当時の資料・参加者の回想記録)」 URL:https://kvennasogusafn.is/index.php?page=191

アイスランド女性史資料館「Kvennafrídagurinn(女性の休日の歴史)」 URL:https://50ar.kvennasogusafn.is/kvennafri/

在アイスランド日本国大使館「From Ambassador (The Women’s Strike in Iceland)」(2023年12月8日) URL:https://www.is.emb-japan.go.jp/itpr_en/amb.suzuki2023128.html

アイスランド平等局「50 years of Gender Equality Legislation」(2026年5月18日) URL:https://island.is/en/o/directorate-of-equality/news/50-years-of-gender-equality-legislation

アイスランド平等局「New Requirements for Reporting on the Gender Pay Gap」(2026年6月24日) URL:https://island.is/en/o/directorate-of-equality/news/new-requirements-for-reporting-on-the-gender-pay-gap

アイスランド平等局「New Legislation on Gender Pay Gap Reporting」(2026年9月2日) URL:https://island.is/en/o/directorate-of-equality/news/new-legislation-on-gender-pay-gap-reporting

アイスランド統計局「Unadjusted gender pay gap 2024」(2025年9月11日) URL:https://www.statice.is/publications/news-archive/social-affairs/unadjusted-gender-pay-gap-2024/

アイスランド政府「Limited services due to the Women’s Strike on October 24th」(2025年10月23日) URL:https://island.is/en/news/limited-services-due-to-the-womens-strike-on-october-24th

アイスランド平等局「Directorate of Equality publishes report on the care gap and municipal services」(2025年12月5日) URL:https://island.is/en/news/jafnrettisstofa-birtir-skyrslu-um-umonnunarbil-og-thjonustu-sveitarfelaga

世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2026」(2026年9月16日) URL:https://www.weforum.org/publications/global-gender-gap-report-2026

内閣府男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数」 URL:https://www.gender.go.jp/international/int_syogaikoku/int_shihyo/

内閣府男女共同参画局「令和8年版男女共同参画白書・第2章第1節 就業」 URL:https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r08/zentai/html/honpen/b1_s02_01.html

外務省「アイスランド基礎データ」 URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iceland/data.html

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